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アントラーズとともにキャッシュレス浸透を図るメルカリ。鹿島をメルペイ化

カシマスタジアム

サッカー・J1の鹿島アントラーズを買収したメルカリは、11月1日の冠試合「Antlers Family Day with Mercari」に合わせて、本拠地の「カシマスタジアム」内の飲食売店でコード決済「メルペイ」の導入を行なった。鹿島アントラーズのスポンサーであるNTTドコモの「d払い」と同時導入だが、メルカリでは今後、茨城県鹿嶋市周辺でのキャッシュレス決済の拡大にも注力していく考えだ。

カシマスタジアムはこれまで、一部店舗でクレジットカードなどの対応をしていたが、11月1日からは全店舗でメルペイを導入。キャッシュレス化を進めた。メルペイ導入に合わせた会見で、鹿島アントラーズの小泉文明社長は、当面は現金との併用を継続するが、試合開始前後やインターバルでの売店の行列解消や店員の手間軽減などを考えてキャッシュレス化100%を目指す方針を示す。

スタジアム内の全店舗でキャッシュレス決済に対応

11月1日は、メルペイでの支払いに20%還元するキャンペーンも実施したほか、選手のグッズが当たるガチャをメルペイでのみ支払いができるようにして、スタジアムでの利用促進を図っていた。ガチャは行列ができるほど人気だった。いくつかの店舗で聞いたところ、店員の感覚的なものながら、おおむね3~4割程度はキャッシュレス決済が利用されていたという。キャンペーンも奏功したようで、店員としても予想以上という声が多かった。

ガチャコーナー。ハーフタイムには長蛇の列だった

スタジアム周辺自治体の鹿嶋市、潮来市、神栖市、行方市、鉾田市でも、11月1日の20%還元キャンペーンは実施されていた。今回、そのうちの2店舗でも話を聞くことができた。

実際にメルペイでの支払いを試す鹿島アントラーズ・小泉文明社長

民泊の「MARBLE B&B」は、鹿島アントラーズファンのオーナーが運営し、アントラーズファンが多く宿泊する宿だが、メルカリのアントラーズ買収に合わせてメルペイを導入。これまでもクレジットカードなどの主要な決済手段は導入していたが、導入以降は宿泊客にもメルペイを勧めているそうだ。

鹿嶋市内の民泊「MARBLE B&B」
部屋番号が選手の背番号だったり、選手のサインがあったりと、アントラーズサポーターには嬉しい施設

オーナーの鈴木綾子さんによれば、宿泊客へのメルカリの知名度や浸透率は高いものの、メルペイ自体の利用者は少なく、その場で設定してもらい、近所のコンビニエンスストアのATMから入金して宿泊費をメルペイで支払ってもらう、といったこともしているという。アントラーズファンとして、親会社の決済手段に貢献するといった意識に加え、メルカリの売上を決済に使えるという点は、やはり利用者にとってはポイントとなっているようだ。

各種決済に対応するMARBLE B&B。メルペイは導入したばかりだが、宿泊客にも勧めているそうだ

もともと、「現金支払いをなくしたい」というオーナー本人の意向もあって、キャッシュレス決済比率が9割に達しているというMARBLE B&Bで、すでにメルペイの利用は3割に達しているそうだ。このあたりは、アントラーズ買収効果の一環と言えそうだ。

もう1店は、予約制の飲食店「ダイニングおおさき」。こちらも地元のアントラーズファンを中心とした客が集まる店。当初からクレジットカードなどの決済手段は導入していたが、こちらもアントラーズ買収に合わせてメルペイを導入した。

ダイニングおおさき。地元のアントラーズサポーターが集まる

同店ではキャッシュレス比率は高くはなく、15%程度だという。そのため、メルペイの利用もまだ多くはないが、やはりメルカリの知名度は高く、アントラーズ買収に合わせて今後拡大していくことを期待している。

基本的には店舗用のQRコードを使うMPM(店舗提示型)のコード決済。周辺地域向けに、特別に鹿島アントラーズの台紙を配布していた(左)。右は通常配布される台紙

両店で話を聞いて共通していたのが、この地域のキャッシュレス決済比率の低さだ。基本的に現金で十分という声が根強いということで、キャッシュレス対応した店舗も、特にチェーン店を除くと多くはない。周辺を探してみても、多少PayPayの加盟店は見受けられるが、現金のみの店が多いようだ。

ダイニングおおさきのオーナーである大崎直寿さんは、自分が客だったらキャッシュレスの方が利便性が高くていい、という考えから、今年4月のオープン時点でAirレジを導入したという。決済手数料や入金サイクルといった、キャッシュレス決済における課題はあるが、そうした点を踏まえても客への利便性提供から導入に踏み切った。

メルペイ支払いの様子

宿泊施設のMARBLE B&Bと飲食店のダイニングおおさきという2店でキャッシュレス決済比率が大きく異なったのは、業態の違いに加えて、地域外からの客がメインとなるMARBLE B&Bと地元客中心のダイニングおおさきという違いも影響していそうだ。オーナー2人に共通するのは、地域のキャッシュレスに対する意識が高くない、という認識だ。

メルペイ側でもそうした課題は感じていて、鹿島アントラーズの本拠地 カシマスタジアムのキャッシュレス対応を強化することで、特に地域のサポーターにキャッシュレス決済を体験してもらい、それを広めていきたい考え。その一環として、11月1日にはスタジアム内だけでなく、周辺地域のメルペイ加盟店でも20%還元を実施し、スタジアム内ではメルペイで支払えるガチャを設けて、まずは利用してもらうことを目指した。

鹿島アントラーズの小泉社長は、周辺自治体との協議も行なって地域のニーズを洗い出し、メルカリのサービスや繋がりのある企業との橋渡しによって地域活性化に繋げることを狙う。キャッシュレス決済もその一環で、スタジアムから地域へと繋がる経済圏を構築していきたい考えだ。