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“チャージレス”を目指すメルペイ。属性ではなく利用実績で信用創造
2019年9月4日 17:21
メルペイは4日、信用サービスについてのメディア向け勉強会を開催し、「メルペイあと払い」などの“信用”を用いたサービスについて説明。クレジットカードで用いる“属性情報”などではなく、動的な“利用実績“を使った信用サービス展開を目指す。
メルペイは「チャージレス」を目指す。利用実績から信用創造
メルペイにおける信用サービスの第1弾が、4月から展開されている「メルペイあと払い」。当月の購入代金を、翌月にまとめて支払いできるサービスで、メルカリアプリの「メルペイ」で、[支払い方法を変更]し、あと払いを選ぶだけで、通常のメルカリ残高払いから簡単に切り替えられる。ただし、利用には「本人確認」が必須。
メルペイによる「信用」は、この「あと払い枠」の算出に使われている。あと払いでは、一定の利用上限枠が設定されるが、この上限をメルカリやメルペイの利用実績などから、ひとりひとりの利用枠を設定(上限は20万円)。この枠内であれば、翌月まで、メルカリの売買やメルペイでの支払いに自由に使える。
信用枠算出に参照される利用実績は、メルカリやメルペイでの利用回数や金額だけでなく、メルカリで「きちんと発送している」「キャンセルしていない」などの「約束履行能力」からも判断。機械学習なども用いて、あと払いの利用枠を算出・設定している。そのため不良債権率も「想定より少ない」(メルペイ クレジットデザインチーム 石川氏)という。
なお、メルペイにより設定される上限内であれば、利用者の判断で自由に金額を設定できる。同社の調査では、クレジットカードなどの既存サービスで「使いすぎ」を不安視する声も多いという。そのため、利用者が、毎月の利用上限を自分で決められるように配慮。また、アプリのUX/UIにおいても、利用枠や利用金額がひと目でわかるようにし、使いすぎを防ぐようにしている。自分で少なめに枠を設定し、大きな買い物のときだけ引き上げる、といった使い方も可能。
メルペイの山本真人執行役員CBOは、あと払いによる「チャージレスな決済体験」をメルペイの強みとして強調。利用の都度、銀行等からチャージするのではなく、利用枠内で自由に使って、まとめて支払える。支払い時にチャージするだけでなく、支払いまでにメルカリで商品を売って支払いにあてることも可能。また、支払いで、銀行口座引き落としやコンビニ払いが選べる点も特徴という。
クレジットカードなどのこれまでの信用情報は、年収や勤続年数など「属性情報」を基本とするものが主流となっているため、20~30代前半の若年層には不利に働く。山本氏は、「属性情報が足りないから信用できないというわけではないはず。別の形での信用があり、その信用を見えるようにする」とメルペイの取り組みを説明し、メルカリにおける約束履行能力など「動的な行動情報」が信用になりうるとする。
こうした信用情報をもとに、あと払いを含めたサービス拡充も予定しているが、詳細は、9月18日開催の「MERPAY CONFERENCE 2019_SEP.」で発表するとのこと。
「信用」による新たな金融サービス展開を目指しているのは、メルペイだけではない。Yahoo!やLINE、NTTドコモなども、いわゆる「信用スコア」の展開に取り組んでいる。メルペイでは、現時点では、スコアをユーザーに可視化したり、外部に提供する予定はないという。
なお、メルペイでは、他の多くのPay系サービスが対応している「クレジットカードからのチャージ」に対応しておらず、「いまのところ予定は無い(山本CBO)」という。
その理由は「出金が難しくなるから」。
クレジットカードからの現金化は禁止されているため、クレカからのチャージでは、出金できない新たな電子マネーを使う必要がある。例えば、PayPayでは10月から「PayPayマネー」という出金可能な電子マネーも設定されるが、そのほか送金はできるが出金できないPayPayマネーライト、支払いのみのPayPayボーナスなど、4種類の利用範囲が異なる電子マネーが用意される。
しかし、メルペイはフリマアプリというメルカリの特性上、売上金の「出金ニーズ」が他の決済サービスより圧倒的に高い。ここが他の決済サービスとの大きな違いとなっており、複数の電子マネーを用意すると、出金時のわかりにくさにつながる可能性が高い。そのため、クレジットカードからのチャージは「優先順位は低い」とのことだ。
メルペイの信用サービスの考え方も、「クレジットカードなど、いままでの信用サービスの方にさらなる便益を提供するというよりは、まだ受けられていい人に、新たな信用サービスの便益を提供する方向」と説明している。
結構好調な「あと払い」
「メルペイあと払い」を担当するクレジットデザインチーム プロダクト責任者の石川佑樹氏は、あと払いの利用状況について、「一言でいうと結構好調」と紹介。GWや夏に実施した、50%還元などの大型キャンペーンなどで、利用者数は順調に拡大し、キャンペーン後も使い続ける人も多いという。
利用者の中心は20~30代で、女性が過半数を占める。これはメルカリの利用状況と概ね一致しているという。「旅行アイテムをあと払いで購入し、帰ってきてからアイテムを売って差額を支払う」といった使われ方も紹介した。
あと払いを積極的に使うというより、「残高が足りないので、あと払いをプラス。あとでメルカリでモノを売って支払う」といった使い方も可能で、あと払い利用者のほうが「より使っていただけている」という。
今後のあと払いの機能強化については、18日のカンファレンスで明らかにされる見込み。また、2月時点で135万としていた、利用可能店舗数も同日に最新の情報を公表する。