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運搬作業の腰の負担を軽減する“着るロボット”が腕も補助
2019年5月17日 17:45
パナソニックグループのロボティクスベンチャー ATOUNは、運搬作業などにおける腰の負担を軽減する「パワードウエア ATOUN MODEL Y」とあわせて使用する「腕の補助機能」のユニットを開発。製品化に向けた実証実験を行なう。また、補助機能についての技術セミナーを実施。そこでパワードウェアを体験してきた。
ATOUN MODEL Yは、腰の動きをセンサーがとらえ、モーターの力で重量物を持ったときにかかる腰部への負担を軽減する、着るロボット。運輸、製造、農業などの現場で使われているほか、JALグランドサービスと協業し、羽田、成田で実用導入、伊丹、福岡、札幌でもトライアルが開始される。
腕の補助機能は、腰用のパワードウェア利用者から腕の補助が欲しいというリクエストがあったと同時に、ATOUN 代表取締役社長 藤本弘道氏が創業以前から構想を練ってきたものでもあるという。
実験機となるプロトタイプは、ATOUN MODEL Yに腕補助用のユニットを取り付けたもの。ATOUN MODEL Y+ユニットの装着により、パワードウェア非着用時に比べて、作業効率が最大で37.7%向上することが確認されているとしている。
作業効率を比較するための実験では、20代から30代の男女5名が、高さ75cmの机の上に20kgのビールケースを乗せて、その後下ろすという作業を5分間繰り返し、装着の有無で回数を比較。パワードウェア非装着では徐々にスピードが落ちるほか、途中から荷物が机に当たるようになったという。
腕を腰との一体型ではなくユニットにした理由は、腰用の新しいタイプが出てきたときに、腕用ユニットはそのままに、腰用を入れ替えられるようにするため。
腕補助用ユニットで想定している持ち上げる高さは、床から最高90cm程度。また、重さは約5kg弱のサポートを想定。持ち上げ、保持・移動、持ち下げ、棚からの引き出しといった作業を得意としているという。
ユニットの仕組みは、スイッチを押すと巻き上げ機構が機能。両手に装着するグローブにつながるワイヤーを背中側に引っ張り上げるような感覚で、荷物を持ち上げる作業を補助する。
流れとしては、荷物を抱える際に、右手人差し指部分のセンサーが握力を計測。ユニットが、その握力に応じてグローブを引っ張り上げる。さらに腰用パワードウェアが腰の動きを検知し、腰の動きを補助。荷物が持ち上がるという流れだ。
実際に装着して荷物を持ち上げてみると、持ち上げるために腕を曲げる力をユニットが補助してくれるので、たしかに楽に持ち上げられる。ただ、それ以上に、持ち続けていても苦にならないという点に効果を感じた。
もう1つ、体験しておもしろい感覚だったのは流れの中の、センサーによる握力の計測部分。この時、人差し指のセンサー部分を荷物に力強く押し当てると、ワイヤーが一気に引き上げられてすばやく荷物が持ち上がり、ゆっくりと押し当てると、ワイヤーはじんわりと力がかかる感じになり、腰に負担がかかる恐怖も和らぐ印象を受けた。
今後は実証実験を通じて、さらに機能面での充実を図りつつ、主に仕様面の検討・検証に取り組む。また、JALグランドサービスとも腕補助機能の追加で協業するほか、新たなトライアルパートナーも募集。来年度の実用化を目指す。