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AWS宇宙へ! アマゾンが衛星通信事業に参入。ロッキードマーティンと共同事業も
2018年11月28日 09:21
11月27日(現地時間)、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、米ラスベガスで開催中の年次開発者会議「re:invent 2018」にて、衛星通信に関する事業への新規参入と、AWSと連携したシステム「AWS Ground Station」を発表した。
発表会には、AWSのCEOであるAndy Jessy氏が登場、新規事業を強くアピールした。
AWS Ground Stationは、衛星とのデータのやりとりを「オンデマンド」化するシステムだ。一般的に、衛星とのデータ転送はかなりコストがかかる。衛星を持つ会社と付き合いのない企業が「使いたい時だけ、リアルタイムに近い衛星写真を取得する」のは難しい。だがAWS Ground Stationは、衛星基地局をAWSで結び、「衛星から情報をダウンロードしていた時間」に応じて課金する形態を採る。要は、AWSによるパブリッククラウドと同じように、弾力的な運用が可能になるのだ。
AWS Ground Stationのために、AWSは12基の新しい基地局を、AWSの各リージョンの中に設置する。そうすることで、データを高速にAWSのクラウドストレージに配置、さらに、機械学習などによる処理も行なえる。AWSとしては、衛星写真の取得を「民主化」することによって、AWSのニーズそのものを増やすことができる……という、一石二鳥の戦略である。AWS側は、AWS Ground Stationの導入により、衛星基地局のアンテナにアクセスするためのコストが「80%以上削減できる」としている。
AWS Ground Stationのパートナー企業であり、衛星写真の提供元としても大手であるDigitalGlobe創設者のWalter Scott博士は、「宇宙関連事業は難しいと言われる。それは事実なのだが、AWS Ground Stationのようなシステムの登場で、劇的にハードルが下がる。衛星写真の活用の幅は広く、機械学習との連携により、事故や災害への対策から建築まで様々な可能性がある」と説明した。
一部の基地局は建設中であるものの、「プレビュー」という形でサービスはすでに運用を開始している。
また同時に、AWSと宇宙・軍事産業大手のロッキードマーティンは共同で、衛星との接続を低コスト化するアンテナ・ネットワークシステムである「Verge」を公開した。
Vergeは衛星写真撮影に使われる低軌道衛星を対象としたソリューション。従来は、少数の大型衛星基地局でカバーしていたが、Vergeは人が抱えられるほどの小型の基地局を使う。これを世界中に無数に配置し、複数のアンテナで複数の衛星を捕捉する。これをAWSのネットワーク上で管理することで、従来よりも多くの衛星に対して、より素早く、手軽にアクセスすることを狙う。結果として、衛星写真の利用コストが下がると期待できる。これも、AWS Ground Stationと同じく、オンデマンドでの衛星写真利用を促進する狙いがある。
Vergeのアンテナネットワークは、現在、デンバーとコロラドに設置されており、本日よりSバンドでのプラベート・ベータテストが開始された。Xバンド以上の周波数帯でのテストも近い将来に行なわれる予定だという。