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マイナ免許証とはなにか メリットと注意したいポイント

3月24日から、マイナンバーカードと運転免許証の一体化が始まります。

一体化を希望する場合、免許証に代わり免許情報の記録されたマイナンバーカード(マイナ免許証)を保有できるようになるもので、免許証とマイナンバーカードを「ひとつ」にできるのが大きな特徴です。

カードが1枚になるため、管理するものが1つで済むというメリットはあります。また発行手数料もマイナ免許証のほうが安くなります。

一方、これまで用途で分散されていたものが統合されることを「リスク」と感じる人もいるでしょう。また、3月24日時点ではマイナ免許証が「使えない」と告知しているサービスもあります。現時点ではメリット・デメリットが共存する環境といえます。

この記事では、マイナ免許証の実際や注意点などについてチェックしていきましょう。

マイナ免許証は任意。3パターンからどれを選ぶか

マイナ免許証が始まる、といっても、従来の運転免許証がなくなるわけではありません。3月24日以降は免許証の発行時に、「運転免許証のみ」、「マイナ免許証のみ」、「マイナ免許証と運転免許証の2枚」の3パターンが選べるようになります。従来の免許証を継続したり、従来の免許証を継続しながらマイナ免許証も持つ、といったことも可能です。

マイナ免許証の選択は「任意」となっています。当然ですがマイナ免許証に切り替えるためには、マイナンバーカードを持っている必要があります。

運転免許証の持ち方
マイナ免許証のみ

マイナンバーカードを運転免許証として利用し、現在の運転免許証を返納

「運転免許証とマイナ免許証の2枚持ち

マイナンバーカードを運転免許証として利用したうえで、運転免許証も引き続き保有

運転免許証のみ

従来通り、運転免許証のみを保有

このうち「マイナ免許証のみ」を選ぶうえで、わかりやすいメリットは費用です。

新規の発行手数料は、マイナ免許証のみの場合は1,550円、運転免許証のみが2,350円、両方の場合は2,450円となります。マイナ免許証のみだと物理的な免許証発行がないため、800円安くなり、両方発行する場合は免許証プラス100円という設定になっています。

更新の場合は、マイナ免許証のみが2,100円、運転免許証のみが2,850円、両方発行が2,950円です。これらに加えて、講習手数料(200円~1,400円)が必要となります。

運転免許証の持ち方による違い(手数料)(出典:デジタル庁)

できるだけ安くしたい、あるいは免許証は持っているけど、ほぼ使っていない、という人はマイナ免許証でも良いでしょう。

一方、一部のレンタカー会社など、マイナ免許証に非対応と告知しているサービスもあります。これまでの免許証が前提で作られていた、免許情報の確認の仕組みがマイナ免許証で使えないためと見られます。マイナ免許証読み取りアプリなども公開されており、時間が経てば解消される可能性はありますが、しばらく不都合があるかもしれない、という不安は残ります。

その場合、マイナ免許証と運転免許証の2枚を発行すれば、必要に応じて運転免許証を使えるようになります。

なお、マイナ免許証のみにした後に、運転免許証を再交付ことも可能です。所定の手続きを行ない、運転免許証の交付を受けられます。

70歳未満で、更新手続と同時にマイナ免許証を取得する場合は、「警視庁運転免許手続予約サイト」、もしくは自動音声予約ダイヤルから予約します。再交付、失効などの更新以外の場合は、「警視庁行政手続オンライン」から予約します。

マイナ免許証のメリット

マイナ免許証のメリットはどこにあるのでしょうか? 費用面以外でもいくつか準備されています。

最も重要といえるのが、更新時の「オンライン講習」でしょう。通常、免許の更新時は、試験場や警察署を訪問して講習を受講しますが、これがオンラインで済ませられるようになります。つまり、自分が都合の良い時間、場所で講習を受講でき、更新にかかる時間も短縮できるということです。「24時間受講できる」という点は大きなメリットでしょう。さらにオンライン講習の場合講習手数料が200円と安くなっています(通常の優良運転者は500円)。

なお、オンライン講習ができるのは、優良運転者・一般運転者のみで、「マイナ免許証」を保有している人です、優良運転者とは70歳未満で、継続している免許を受けている期間が5年以上、かつ事故や違反を起こしていないことが条件です。つまり「ゴールド免許」の人です。

気になるのは「マイナ免許証を持っている人」という条件です。現時点ではマイナ免許証を持っている人はいないため、3月24日時点では、オンライン講習はほとんどの人には関係ないと言えそうです。

オンライン更新時講習

オンライン講習は、マイナ免許証を所有したうえで、事前に運転免許センター等でマイナンバーカードの署名用電子証明書(6桁から16桁)を提出し、マイナポータル上で、連携手続をした人が利用可能となります。3月24日以降、マイナ免許証を取得しておけば、次回更新からは、オンラインで時間を選んで講習を受けられるようになります。

現時点のオンライン講習の対応デバイスは、PCやスマートフォン。対応ブラウザは、iPhoneがSafariとChrome、AndroidがChrome、WindowsがMicrosoft Chromium版 Edge、MacがSafari、Chrome、Firefoxとなっています。また、講習時に写真を撮影するためカメラや、スマホでマイナンバーカードを読み取る機能、PCではICカードリーダーも必要となります。

なお講習はオンラインになりますが、視力検査・写真などの更新手続きのため、オンライン講習受講後に運転免許センター等に行く必要があるのは、従来どおりです。オンライン講習は、講習の時間を選んで、更新手続きの時間を短くできるのがメリットとなります。

もう一つのメリットが「住所変更手続等のワンストップサービス」です。ただし、ワンストップサービスは「マイナ免許証のみ」の人が対象で、「マイナ免許証と運転免許証の2枚発行」の人は対象外になります。

マイナ免許証のみを持ち、なおかつ必要な手続をとれば、本籍・住所・氏名などに変更が生じた場合も、警察への届出は不要となります。特に引っ越した場合などの手続きの簡易化が見込まれます。

ワンストップサービスを希望する場合、マイナンバーカードの署名用電子証明書暗証番号(6桁から16桁)の準備をします。そのうえで、警察で署名用電子証明書と免許情報を紐付けること、及びマイナポータルとの連携手続を行なうなどの作業が必要になります。

運転免許証の持ち方による違い(手続)(出典:デジタル庁)

なお、「運転免許証とマイナ免許証の2枚持ち」の場合、引き続き都道府県警(運転免許センターや警察署など)への届出が必要です。

マイナ免許証のメリット(出典:警察庁)

こうしてみていくと、マイナ免許証の導入段階では、利用者にとってあまり大きなメリットがあるとは感じられません。ただし、次回更新以降の手続きは便利になっていきそうです。

免許情報はアプリで マイナ免許証の注意事項

マイナ免許証の注意事項としては、前述のようにマイナンバーカードの券面には、免許情報(免許種別、有効期間など)が表記されません。マイナ免許証に記録された免許情報を読み取る場合には、マイナポータルにログインする、もしくは「マイナ免許証読み取りアプリ」を利用する必要があります。

そのため、券面での本人確認などを前提として業務フローが構築されているサービスでは、当初は「マイナ免許証は利用できない」と告知しています。代表的なものはクルマを扱う、カーシェアやレンタカーなどです。タイムズカーレンタルやオリックスレンタカー、三井のカーシェアーズなどは、当面マイナ免許証ではサービス利用できないと発表しています。

マイナ免許証の読み取りの流れ(出典:マイナ免許証読み取りアプリ 操作マニュアル)

これらのサービスの利用頻度が高い人は、当面従来の運転免許証も持っておいた方が良さそうです。今後順次改修されていくと思われますが、いつになるかはわかりません。自分が使うサービスで、運転免許証を活用している場合は、確認しておきましょう。不安な場合は、運転免許証の継続や2枚発行という手段を選ぶとよいでしょう。

なお、マイナ免許証では、マイナンバーカードのICチップに以下の情報が記録されます。マイナ免許証読み取りアプリで、マイナンバーカードを読み取ることで、免許情報や運転経歴情報などが確認できるようになります。

  • マイナ免許証の番号
  • 運転免許取得日の年月日およびマイナ免許証の有効期間の末日
  • 運転免許の種類(普通、大型、二輪など)
  • 免許の条件に係る事項(AT限定、眼鏡、補聴器など)
  • 顔写真
  • 色区分(優良(ゴールド)、新規(若草色)、その他(薄青色)) など

マイナ免許証のもう一つの注意事項といえるのが、海外で運転する場合です。国外運転免許証を申請する場合、渡航先の国によっては、従来の運転免許証が必要になる場合があります。そのため、海外でクルマに乗る場合が多い人は、従来の免許証もあわせて発行しておいた方が良さそうです。

なお、マイナ免許証は3月24日(月)からスタートしますが、そのシステム準備などのため、3月23日(日)は、各運転免許試験場が終日閉庁となります。

もう一つ、マイナ免許証で注意したいポイントが「マイナンバーカードとマイナ免許証の有効期間が異なること」。マイナ免許証の有効期間の末日は券面に表記されないため、更新忘れへの注意が必要となります。

加えて、マイナ免許証を取得した後にマイナンバーカードを更新した場合、免許情報の記録を改めて行なう必要があります。免許情報が入っていないマイナンバーカードでは自動車の運転はできません。そのため、マイナンバーカードの有効期限が近い場合は、マイナンバーカードを更新した後に手続を行なうか、従来の運転免許証との2枚持ちがオススメとなります。

マイナンバーカードをの有効期限に注意(出典:警視庁)

マイナ免許証をきっかけとし、運転免許証を取り巻く環境は大きく変わり、今後デジタル化の恩恵を受けられるシーンは増えてくるでしょう。今後は、マイナンバーカードのスマートフォン搭載も予定されています。対応時期は未定ですが、その際には物理カードの持ち歩きが不要になるほか、様々な手続きなどがスマホから行なえるようになるでしょう。マイナ免許証のスタートは、デジタル化の大きな一歩といえそうです。

臼田勤哉