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新居の裏庭斜面が広くて草刈りが大変すぎて草が生える【オタク家を買う】
2024年11月22日 09:01
筆者の自宅の所在地は千葉あたりによくあるニュータウンなので、駅からは遠く、やや山の中ではあるものの、畑や山林に囲まれているわけでもなく、わりと普通の郊外的な住宅街だ。しかし我が家はちょっと変わっている。
我が家の敷地は約900m2。そのうち普通に家が建てられる平地は約300m2しかないが、残りの約600m2は地肌が露出する法面(斜面)となっていて、そこそこの勢いで草が生えてくる。なので、定期的に草刈りをしている。
実のところ、法面ではある程度の植生が残っていることが好ましい。草木には土壌を頑丈にしたり水を蓄えたりする機能があり、草木のない法面の土壌は風雨で崩れたり流されたりしやすくなる、らしい。よって、筆者も雑草は根絶させるつもりはない。しかし美観や接道への影響、虫や鳥獣への対策、あと自治体からの指導への対応のために、ジャングルにならない程度に雑草対策をしている次第だ。
雑草対策には、大雑把に「刈る」「抜く」「除草剤を撒く」「防草シートを敷く」「植生をコントロールする」などの選択肢がある。
どのような対策をするべきかは、ケースバイケースだし諸説ある。今回は草刈り2年目の筆者がどのような対策をしているかを中心に解説したい。
注文住宅を作ったオタクの記録。
筆者宅の主力は電動刈払機+チップソー
筆者宅では刈払機を使っている。個人で草刈りするなら一般的な選択肢だ。世の中には法面も素早く草刈りできる自走式草刈機もあるが、主に業者や農業従事者向けなので、いまのところ筆者は導入していない。
刈払機は肩下げの機械で、エンジンやモーターを搭載し、先端の刃物が回転して雑草を切り落とす。初期コストも維持管理コストも個人で導入・運用できる範囲だ。安い製品なら業者に1回お願いするくらいのコストで買える。ほかにも防護具などを揃える必要があるが、そのあたりはたいした金額にはならない。
筆者は電動工具でお馴染みのマキタ製の「MUX01G」という製品を使っている。40Vmaxバッテリを使う高出力モデルで、アタッチメントを付け替えることで回転刃の刈払機以外にもいろいろなことに使える。やや高価な製品だが、性能・機能・汎用性・使い勝手は素人目にも良い。
主力として使っているのは回転刃の定番、チップソーだ。凶悪な見た目通り、正しい扱い方をしないと事故りやすく、事故ると深刻な受傷事故になりやすいが、しかしほかの回転刃に比べて危険というわけでもなく、むしろ安全な面もある。
たとえば国民生活センターが公開した情報によると、作業中に小石などに触れたとき、チップソーだと散らばる程度だが、ナイロンコードカッターの場合は最大35m、十字型の4枚刃だと最大54mも飛んだという。
チップソーの使い方は、大まかに言うと、反時計回りに回転する刃の外周の「9時から12時まで」の90度部分を使い、右から左にスイングして刈る。1スイングで刈れるのは奥行き10〜20cm、幅1〜1.5mくらいなので、広い面積を刈るには時間も体力も必要だ。
刈払機の重量は全体で5kgくらいだが、それをひたすら振り回すので肉体的な負担は大きい。とくに作業する場所が法面だと、スイングに高低差があったり、足の踏ん張りが必要だったりして、さらに筋肉が必要になる。しかし疲労で筋力が弱まると作業の危険性が高まるので、筆者は刈払機での作業を1日あたりだいたい1.5時間まで(手持ちのバッテリ2本を使い切るまで)としている。調子が良ければ300m2くらい刈れるが、草が濃かったり暑すぎたりすると100m2くらいしか刈れないこともある。
600m2を刈りきるには何日もかかるが、天候にも左右されるのが地味に面倒だ。雨が降ると当日だけでなく、翌日でも地面が滑りやすいので法面作業には不適だ。風速が10m/sを越えると、不安定な法面では転倒しやすくなるし、刈った草が飛び散るので不適だ。かといって真夏の無風の好天だと熱すぎて、1時間とかの連続作業は命に関わる。良さげな気候でスケジュールが空いている日が何日も連続するとは限らないので、数週間かかったりする。これをワンシーズンに何度もやる。何というか、過酷だ。
とはいえ、準備などを含めて1日に2時間くらいしかかからないので、草刈り後には仕事をしたり家事をしたりもできる。むしろ仕事の合間の気分転換として草刈りをしたりもする。無心で作業に没頭できる草刈りは、慣れてくると頭の休憩に良いとも思う。
補助的にバリカンタイプも使用中
チップソーは壁や境界標など固いものの近くでは作業できない。回転中に固い構造物が触れると、キックバックを起こすし、刃が欠けて飛散することもある。いずれも危ない。
そうした固いものがある場所ではナイロンコードカッターが使われることも多いが、筆者は飛び石が怖いので、MUX01G用のアタッチメント、「グラウンドトリマアタッチメント」という製品を使っている。バリカンタイプの草刈り刃だ。
バリカンタイプは、2枚の櫛形の刃が互い違いに往復運動することで、ハサミのように草を切っていく。動作中にコンクリ壁にぶつかってもガチガチいうだけで事故にはつながりにくいし(でも刃は痛む)、小石を巻き込んでも飛ぶことはない(やはり刃は痛む)。ただ、指くらいの細いモノはすっぱり切断するので、動作中は慎重に扱う必要がある。
バリカンタイプは扱いやすいが、使っていると刃と刃のあいだにスキマが生じ、薄くて柔らかい草の切れ味が極端に落ちていく。しかし替え刃は1本1万円とかするので、気軽には交換できない(チップソーは1,000円くらいから買える)。
雑草も種類によっては小指くらいの太さの幹まで成長し、刈払機に負担をかける。替え刃が高価で耐久性に不安のあるバリカンは、そうした成長した雑草が繁茂している環境には向いていないとも思う。筆者の場合、メインのエリアはチップソーを使い、敷地境界や構造物の近くではバリカン、構造物近くに太い雑草が生えていたら園芸用のこぎり、と使い分けしている。
また、バリカンタイプはチップソーよりも重たく、法面で扱うには肉体的負荷が大きい。バッテリ消費はチップソーより小さいが、バッテリより先に体力が尽きがちだ。このあたりも使い分けのポイントとなる。
刈った草の処分が想像以上に面倒臭い
雑草も面積が600m2とかあると、刈った草はハンパない量になる。この秋は300m2ほどのエリアで刈り草を回収してみたが、45リットルで30袋になった。
こうなってくると、普通のゴミ捨て場には捨て難い。筆者の住む自治体のゴミ収集だと、1世帯あたり3袋まで収集してくれるルールがある。おそらく5袋くらいでも収集してもらえると思うが、収集されなくても文句は言えない。何回かに分けて、何週間もかけないと収集してもらえない。また、自治体の指定ゴミ袋を30袋となると、それだけでそこそこのコストでもある。
行政のゴミ処理センターに持ち込めば一気に処分できるが(有償だが自治体ゴミ袋より安い)、45リットルのゴミ袋で30袋とかだと、筆者の愛車リーフでは1回で運べない。しかし頑張れば18袋くらいは詰め込めるので、2往復で行ける。今回は草を排出する日、たまたま車検の代車で軽自動車(日産デイズ)を借りていたのだが、そちらでも16袋くらい積めた。日本の軽自動車は優秀でビビる。
しかし、そもそも刈った草を回収するのは果てしなく面倒臭い。この秋は300m2ほどを1.5時間くらいで刈れたが、回収には4時間以上かかった。筆者が不慣れで手順を最適化できていないせいもあるが、1人だとシンドイ作業だ。
まず、草をレーキなどで集め、草の山や山脈を作る。刈払機で前に進むように草を刈っていくと、左側に草の山脈ができるので、それをさらに集めるイメージだ。草の山ができたら、ゴミ袋を集草バッグにセットし、端から袋にかき入れていく。袋に9割くらい入ったら、圧縮して縛りつつ取り出し、次のゴミ袋をセットする。
草の中に木質化した雑草の硬い幹が混じるのだが、それらはゴミ袋を切り裂くので、取り出してまとめる必要がある。草地に放置しておくと次の草刈り時にチップソーで巻き込んで地味に危険だ。ちなみに木質化した雑草の切り株はベトコンのブービートラップみたいな形になるので、山林作業用の安全靴が必須だ。
収集作業中はホコリが舞うし、屈んだ姿勢になるし、法面を歩き回るし、長時間だしで、肉体的な負担は大きい。
草の回収は手間と負担が大きいので、全面回収はせず、刈った草の一部は放置している。刈った草が地面にあると、次の雑草の成長を阻害するとされている。雑草はいずれ朽ちて腐葉土になり、別の植生の栄養にもなってくれる。なによりとにかく捨てるのが面倒なので、なんとか再利用できないかと模索中だ。
「刈る」ではなく「抜く」や「削る」という手も
電動工具を使わず、草を抜くという選択肢もある。手で抜いていくこともできるが、草抜きを効率化する道具というのもいろいろ存在している。
筆者は三角ホーやスキッジャーなどと呼ばれるものを使っている。これは雑草を土ごと削るように除去する道具だ。製品によっては、刃の部分がギザギザだったりして、切れ味が良かったり、草を引っかけやすくなっていたりといろいろだ。
上手くやれば根っこから除去できるので、丁寧にやると地面がかなりスッキリして気持ちが良い。しかし丁寧にやると非常に時間と体力と根気が必要だ。広い面積はやりたくない。
根っこから除去すると風雨で土が流れやすくなるので、法面の雑草処理には向いていない。しかし別のカバープラントを植えたり、防草シートを敷く下準備となると、雑草を根っこから除去する方が好ましいので、この方法が最適だ。
場所によっては除草剤も
雑草対策では除草剤も有効だ。取り扱いにはいろいろな注意が必要だが、正しく使えばチップソーなんかよりも安全で高効率だ。
ただ、筆者宅ではほとんど使っていない。法面が多い筆者宅においては雑草を根絶すると、表土が流れやすくなって危険かもしれないからだ。筆者宅では植生が不要な建物の周りなどごく一部でのみ、よくあるグリホサート系の液体除草剤を散布している。
グリホサート系の除草剤は、葉や茎から吸収されて植物を枯らす。土壌に落ちるとやがて分解されて無害化するので、除草剤を十分に浴びた草にしか効果がない。散布段階で生えてない雑草には効果がないので、しばらくすると別の雑草が生えてくる。スギナなど葉や茎が細い雑草には効きにくい。また、枯れるだけなので刈るなり抜くなりしないと綺麗にならない。成長した樹には影響はないハズなので、例の事件で街路樹をどうやって枯らしたのかは割とナゾだ。
土壌に残って半年くらい効果が持続する除草剤もあるが、今のところ雑草を根絶しようと言うわけではないので、そちらは使っていない。あとで何か植えたいとなった時困るからだ。まぁ半年ほど待てば良いだけの話だけど。
防草シートなどで覆ってしまうという手も
防草シートやタイル、コンクリなどで地面を覆って雑草を防ぐ方法もある。
コンクリで覆うのは最強だが、コストはかかるし、撤去するのも大変だし、法面などでは注意が必要だ。雨水などの流れ方によってはコンクリの下の土が流れ、気がつかないうちに大空洞ができて大陥没、ということもあり得ない話ではない。
平地であれば、タイルやレンガで地面を覆うというのも手だ。外構造園業者にお願いしてもいいし、DIYでもできる。しかしちゃんと施工するとなると下地をしっかり整える必要があるので、そこそこ手間やコストがかかる。
コンクリやレンガに比べると、防草シートは敷くのも廃棄するのも簡単だ。防草シートのままだと見た目が味気ないし、紫外線で経年劣化してボロボロになってしまうので、上に砂利や人工芝を敷くこともあるが、それでもたいしたコストや手間でもない。
筆者宅では、実験的に天然石の貼ってある防草シートを一部に配置してみた。比較的安価かつ素人でも設置しやすいが、耐久性が高いものでもないので、数年で交換することになるだろう。廃棄するときのことを考えて設置するべきところだが、防草シートなら撤去も廃棄も素人でできる程度にお手軽だ。
草を植える
雑草対策のひとつとして、別の植生を作るというのもある。別の草や木が生えていれば、雑草も生い茂りにくい。
もっとも一般的なのは芝生だろう。ホームセンターなどで売られている芝生は、季節にもよるが比較的安価だ。ただし雑草を完全に抑えるわけではなく、条件によっては芝が活着しないし、活着しても継続的なメンテナンスが必要だ。その代わり、ちゃんとメンテナンスされている芝生は見ていてもその上で過ごしても気持ちが良い(個人の感想です)。
芝生のような地面を覆う植物を、「グラウドカバープランツ」や「グラウンドカバー」などと呼ぶ。ググっていただければわかるが、芝以外にもいろいろなグラウンドカバープランツがある。芝生のように踏みしめる地面に植えられるものも少なくない。筆者も何かしら導入したいと思っているのだが、植えるなら春〜夏が良いので、来春に向けて準備を進めている。
樹を植える
樹を植えて木陰を作り、雑草を抑制する手もある。ただの空き地は放置すれば雑草が繁茂するが、林の中にはそこまで雑草は生えない。
筆者宅も道路からの視線遮断を兼ねて法面に樹を植えてみた。これは当初から検討していたことだ。しかし、何もない法面に植樹して木陰を作るというのもなかなかに時間がかかる。
まず植樹といっても、最初から公園や雑木林に生えているような葉の茂った樹を植えられるわけではない。樹を育てる圃場では、樹は密集して植えられ、細長くまっすぐ育つ。そして運搬や植樹しやすいよう、余計な枝葉は切り落とされる。
また、植える場所にも影響される。クレーンやトラックが入れる平地であれば、かなり大きな樹でも植えられるが、筆者宅の場合、樹を植えたいのは法面の中腹ほどだ。法面の下に6m公道があるのでユニックで来てもらったが、植えたい場所にクレーンが届くわけもなく、2〜3人の人力で法面を運び上げられる大きさの樹しか植えられない。
筆者の法面は造成、おそらく山を切り崩す形で作られているので、もともと山林だった地面ではない。この地面に樹が活着するかわからず、ある意味で賭けになる。
そこで、まずは試しに、高さ3〜4mくらいの樹を5本、植えてもらった。ちゃんと根が活着するか、葉が生い茂るかなどを1〜2年くらい経過観察し、大丈夫そうなら10本くらい追加しようと考えている。
植えてもらった樹種は、アラカシが3本とシラカシが2本だ。いずれも3〜4mくらいで、複数の幹が集まった「株立ち」というヤツである。ちなみに費用としては作業や部材など込みで1本5万円くらいだった。
アラカシもシラカシも街路樹や公園樹として一般的な常緑広葉樹だ。樫の木の仲間で、ドングリができる。成長すれば20mくらいにもなるらしいが、筆者としてはメンテナンスして4〜6mくらいで維持できないかと考えている。
こうした樹木は日陰を作って雑草を抑制するだけでなく、フェンスのように道路からの視線を遮断する効果もあるし、根を張って地面を強くする効果もある。欠点としては、鳥や虫などが増える可能性があるが、実際のところ雑草も鳥や虫を呼ぶので極端な差はない。樹を植える前から裏庭の監視カメラのモーション検知履歴はほぼカラスと雉とクモだ。雑草の中からカエルや蛇が飛び出てくるのを何度か見かけている。
また、植樹は活着するまでは不安定でもある。今回植樹してもらった5本うちの、もっとも大きな1本は、植樹翌日夜の暴風で倒れてしまった。監視カメラの映像と気象庁のデータによると、倒れた時間帯には瞬間最大で11.8m/sの風が吹きつけていた。
すぐに植樹をお願いした造園業者さんに来てもらって復旧・補強してもらったが、根が活着するまでの1〜2年は注意が必要なようだ。実際に木陰がしっかりできるようになるまでは2年以上かかりそうなので、気長に育てていきたいところだ。
法面は管理が大変だけど……
筆者宅のオマケについてきた600m2の法面は、草刈りなどの管理に手間がかかり、その一方で斜面なのでキャンプやキャッチボールができるわけでもなく、素人が普通の靴で侵入すると怪我をするという、普通に考えれば厄介なだけの代物だ。こうした法面は不動産においてマイナスポイントとして評価されることが多い。
実際に草刈りなどをしてみても、法面のデメリットは大きいと感じている。業者に頼めば年間十万円くらいはかかるし、自分でやるには時間も体力も筋力も必要だ。安易な考えで法面付きの土地に手を出すべきじゃないと思う。
しかし筆者はこのデメリットを上回る価値を法面に見いだしている。たとえば樹を植えられるし、あるいは法面自体が障壁の役割を果たしてくれている。とくに隣家や道路とは距離が離れるだけでなく高低差も生じるので、都会の家ではなかなか得られない開放感がある。雑草だけでなく、虫も鳥も面倒だが、都会生活では縁のなかった動植物と身近にふれあえるのも面白いと思っている。これらの価値は、いまのところ筆者にとって、面倒な草刈りに見合った価値だと考えている。
こうした価値を見いだせる人でも、法面付きの土地には安易に手を出さない方が良い。筆者宅の法面は、造成、それもおそらく切り土メインで作られた安息角の法面で、樹木が生えているわけでもなく、デコボコも少ない。つまり、かなり扱いやすい条件のそろった法面だ。
実際の市場では、建築に制限が発生するような崖地や古い擁壁が売買されていることもある。南関東だと三浦半島あたりは高難易度な崖地が少なくない。そうした土地に手を出す際には、その土地が自分の手に負えるかどうか、慎重に検討するべきである。草刈り程度で済まない土地なんて山ほどあるんだから……