トピック
東京都の補助金で太陽光発電導入のその後 発電量と電気代はどうなった?
2024年11月8日 10:00
2024年8月の終わり頃、東京都の補助金を利用して筆者宅に太陽光発電システムを導入しました。前回は補助金の概要や、導入にかかった費用、システム構成などを紹介しましたが、今回はそれによって実際にどれほどの発電量が得られ、どれくらい電気代を節約できるようになったのか、ご報告したいと思います。
準備に1カ月半、工事は1日で即発電開始
結果発表する前に、太陽光発電システムの設置工事がどんな風に進んでいったかを軽く紹介しましょう。
太陽光発電システムを利用するには当然ながら設置工事が必要になり、そのための準備には時間がかかることがあります。筆者が契約したのは7月上旬、その2週間後に業者による確認作業(1~2時間程度)が行なわれて機器の搬入方法などが決まり、さらにその1カ月後に本番の設置工事となりました。
結局、契約から工事まで1カ月半ほどかかったことになりますが、工事自体は通常1日で終わります。足場が必要な場合は事前にその設置作業が必要になるものの、筆者宅の場合は屋根の傾斜が緩やかだったためかそれも必要なく、朝に工事が始まって、夕方までに完了し、即日発電が開始しました。
工事箇所は屋外と屋内の両方です。屋外にはソーラーパネル、蓄電池ユニット、パワーコンディショナ、PVユニットなどが設置され、屋内には既存の分電盤に並べる形で特定負荷用分電盤、マルチ蓄電システム用ゲートウェイなどが取り付けられます(筆者宅では停電時に宅内全体に電力供給する全負荷型ではなく、一部のコンセントにのみ電力供給する特定負荷型を選択しました)。
屋外と屋内の設備を接続することから、それ用に配線孔が設けられていない限り、新たに配線孔を開けることになります。事前の確認作業の際には、自宅建築時の設計資料などを用意しておくとスムーズに話を進められるかもしれません。
1カ月間の発電量、買電量を発表!
設置した太陽光発電システムの稼働状況は、今回の場合、屋内に取り付けたマルチ蓄電システム用ゲートウェイのディスプレイで確認できます。LEDランプで稼働状況がざっくりわかるほか、小型ディスプレイでリアルタイムの発電量、蓄電量と放電量、蓄電残量の大まかな数値を知ることができます。
ただ、これだと現在の瞬間的なステータスはわかるものの、一定期間の稼働状況はわかりません。1日の発電量や蓄電量がどうだったのか、月間でどうだったのか、といった実績値をできれば知りたいところです。そこで活用したいのが「遠隔モニタリングサービス」というもの。マルチ蓄電システム用ゲートウェイが宅内LANを通じてインターネット接続し、稼働状況のデータを専用サーバーに送信することで実現しているサービスです。
遠隔モニタリングサービスはパソコンやスマホのWebブラウザから利用でき、半リアルタイムの発電量、蓄電量、消費電力量のほか、当日の累計売買電量もわかります。また、日・月・年単位のスケールでそれらの実績データをグラフ表示して確認することも可能。各種機器の設定・管理機能も備えています。サービス自体は無料で利用できますが、有線もしくはWi-Fiで接続できる固定インターネット回線が必要となります。
というわけで、この遠隔モニタリングサービスから得られるデータを用いて、実際どれくらい発電できたのかをチェックしてみたいと思います。2024年9月の丸1カ月間、30日分という少ないデータではありますが、果たして!?(電力会社の検針タイミングと合わせるため、集計期間は9月2日~10月1日としました)
結果、発電量の実績値は計468kWhでした(うち売電量は11kWh)。買電量は187kWh、それを含めた消費電力量は618kWhなので、消費に占める自家発電の割合は約76%。これはなかなかに良い成績といるのではないでしょうか。事前のシミュレーションでは9月の発電量の予測値が383kWhでしたので、それも大幅に上回っています。
9月の日照時間が平年(約130時間)より長めの170時間程度だったことも影響していそうですが、筆者宅の地域だと、9月は1年のうちでも日照時間が短めの月。気象庁のデータによれば、170時間というのは年間日照時間(平年値の合計)を月単位でならしたときと同じくらいの数値なので、1年を通じて平均的にこれくらいの発電量は期待できそうです。
電気代はどれだけ安くなったのか
とはいえ3割近くは電力会社からの買電でまかなっているため、電気代は少なからずかかっています。そもそも電力会社と契約している以上、最低でも基本料金分は支払うことになるわけで、いくら発電・蓄電できても電気代がゼロになることはありません(もし自家発電で100%まかなえるとしても、仕組み上、基本料金のほかに一定の買電は発生します)。
それでも9月分の電気代は約6,200円(電力使用量190kWh)と、かつてない低料金を達成しました(先ほどのシステムから出力した実績値と、電力会社の検針値には若干の誤差があります)。とはいえ、前年同月の電気代が約19,000円(646kWh)だったのと比較すると3分の1以下、2023年に最も電気を使わなかった10月と比べても半分の料金です。
ただし、わずかではありますが、ここには契約プラン変更の影響もあります。筆者宅ではこれまで東京ガスの「ずっとも電気1」を契約していたのですが、9月1日から「基本プラン」にサクッと切り替えてしまいました。
なぜ切り替えたかというと、単純にその方が電気料金が安くなりそうだったからです。「基本プラン」にすると、120kWhまでの1kWh当たり電気代単価(第1段階料金)が「ずっとも電気1」より4円近く安くなります。
代わりに121kWh(第2段階料金)以降の単価は1.4円ほど高くなりますが、太陽光発電の導入で買電量が減ることは明らか。せいぜい月に120kWh+αの買電に収まるものと考えれば、プラン変更をしない選択肢はない、という感じだったわけです。
発電能力は今のところ瞬間最大値としても3.8kW程度で、日中の電気使用量によっては、蓄電池に満充電できることも、その後売電にまで至ることも、確率としてはあまり高くありません。当初の計画通り「昼の余剰発電分で蓄電できたものを夜に消費する」という自家消費中心の運用となり、そうした筆者の環境においては「基本プラン」が一番無難でお得になると考えました。
「基本プラン」に切り替えたことによるコスト削減効果は、この9月は200円弱と大きくはありませんでしたが、抑えられるのなら少しでも抑えたいもの。太陽光発電システムを導入する際は、電力会社との契約プランも合わせて見直して、より効果的なコスト削減につなげたいところです。
ちなみに、ソーラーパネル設置前後で2階の天井の温度もチェックしてみました。ソーラーパネルが屋根上に載り、直射日光が遮られることで室温にも影響するのではないかと考えたからです。
比較の結果、だいたい同じ外気温(35~36℃)の晴れの日、12時頃のタイミングで3~4℃低下したことがわかりました。電気代を抑えられたのは、ソーラーパネルが直射日光を遮ることによる副次的効果によって冷房効率が高まったことも要因の1つかも、と思っています。
今後1年間の電気代をシミュレーション 元を取れるのはいつ?
9月の1カ月分の買電量がわかりましたので、これを元に年間の電気代をシミュレートしてみたいと思います。前年9月の買電量646kWhを基準として、前年の各月の買電量との差から係数を割り出し、そこに2024年9月の買電量(190kWh)をかかることで、今後1年間の推定買電量を算出することにしました。
再生可能エネルギー発電促進賦課金や燃料費調整額の係数はたびたび変動しますので、そこは2024年9月の数値をそのまま当てはめることとし、売電も考慮せずに計算しました。結果、年間の電気料金は約72,000円ということに。
2023年の電気料金合計は約217,000円でしたから、年145,000円の電気代削減となります。システムの導入費用が実質200万円あまりだったことを考えると、単純計算で14年かからずに元が取れるはず。蓄電池の保証期間である15年に満たないので、機器更新が必要になるまではある意味プラス転換が期待できます。まあ、わりとギリギリ感はありますが……。
ただ、もし東京都の補助金が一切なく、もともとの導入費用500万円がフルにかかっていたとすれば、計算上はリクープまでに34年半はかかってしまうことに……。その間に機器の劣化による買い換えが発生する可能性も高いでしょうから、導入メリットは薄いといわざるを得ません。
その意味で、今回の太陽光発電システムの導入は、まさに東京都の補助金施策があってこそ。もし設置できる環境にあるのなら、みなさんもぜひ前向きに検討してみてほしいと思います。