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原付バイクはどうなる? 25年に50cc生産終了と新基準の原付バイク誕生か
2024年10月3日 08:20
50ccの原付バイクの生産が終了し、原付バイクの基準が変わるとされています。いよいよ8月30日に警察庁から道路交通法施行規則の改正案が発表されました。9月28日まで意見を募るパブリックコメントを経て、問題がなければ2025年4月1日には新しい原付バイクの基準が有効になる可能性が高まってきました。
原付免許で乗れる新基準の原付バイクが登場
改正案は、原付免許(普通自動車免許等で乗れることも含む)で乗れる原付バイクの基準としてこれまでの50ccまでに加えて「最高出力が4kW以下の125ccまで」も加わるとされています。
ただし、125ccまでのバイクに原付免許で乗れるということではなく、あくまで新しい基準である「出力が4kW以下に制限した125ccまで」に適合した新しく登場するバイクに乗れるということです。繰り返しますが、既存の125ccのバイクに原付免許で乗れるようになるわけではないことはよく覚えておいてください。
言い方を変えれば同じ免許で「今まで乗れなかったバイクに乗れるようにはならない」ですし、反対に「今まで乗れたバイクに乗れないようにもならない」ということです。
では、なぜ、このようなことになるのでしょうか。
排ガス規制で従来からの50ccを生産し続けることが困難
50ccのバイクが生産終了になる背景や、新基準の原付バイクについては、2023年12月に警察庁が発表した「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会 報告書」に記載があります。
50ccのバイクの生産が終了になる理由として、2025年11月以降生産のバイクに課せられる新しい排ガス基準への適合という問題があり、適合が難しいからです。
50ccの国内販売台数は1980年の198万台から2022年は13万台まで大きく減少しており、かつてのように50ccのバイクがたくさん売れている状況でもなくなっています。そのような状況のなかで、もともと単価の安い50ccのバイクを排ガス規制に合わせるための開発費用が捻出できないというわけです。
具体的には排ガスをクリーンにする装置である「触媒」を動作させるためにはある程度の高い排ガス温度になる必要があり、排気量の少ない50ccでは温度が高くなるには時間がかかりすぎ、規制を満たすことが困難です。仮に規制に適合させるにしても開発費がかかったり、排ガス対策機器を装備したりでバイクの価格が上昇すれば、本来手軽なはずの50ccバイクが手軽でないものになりかねません。
一方、50ccのまま設計最高速度を下げて新しい排ガス基準の適用外にする方法もあるとされています。現在の最高速度は60km/hですが、制限速度が30km/hの原付ならもっと下げてもいいと思うかもしれません。しかし、設計速度を下げるとパワーがなくなり急な坂道が登れないバイクになるとメーカーは説明しており、それでは、せっかくエンジンが付いている意味がなくなってしまいます。
このようなことから、2025年11月以降、50ccのバイクの新たな製造ができなくなり、手軽な原付免許や原付が乗れる普通自動車免許で乗れるバイクが製造できなくなってしまう恐れがありました。
そこで、全国オートバイ協同組合連合会および日本自動車工業会から提案された方法が、125ccまでのバイクに対して現在の50cc相当である4kWの出力制限を設けた新しい原付バイクの基準を作ることでした。
これなら既存の125ccまでのバイクのメカニズムの多くを流用でき、排ガスの温度をすぐ高くするということもできます。試作車による検証を経て、運転に関する問題はなさそうということが2023年12月の「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会 報告書」に記載され、新しい基準の実現が近い状況になっていたのが、これまでの状況です。
50ccは25年11月までに生産終了確実だが、詳細は未発表
では、現在の50ccバイクはいつ生産終了になるのでしょうか。新しい排ガス基準が有効になる2025年11月までに終了することは確実として、現在、50ccバイクを生産しているホンダ、スズキともに発表はしていません。50ccについてはホンダからOEM供給を受けて販売しているヤマハ発動機も新原付でどのようにするか正式な発表はありません。
2025年11月までに生産終了は確実としても、実際にはもう少し前になると予想されます。売れ残ってしまうと公道で走れないバイクができてしまうことになるため、かなり早い時期に受注を締め切り、11月前までに確実にユーザーに納められる台数だけ生産、ということが考えられます。
もし、現在の50ccバイクを新車で手に入れたいとなった場合は、一刻も早く販売店に問い合わせたほうがいいでしょう。ただ、新基準の原付バイクのほうが使いやすいバイクになる可能性があることも忘れてはなりません。
ちなみに、すでに製造されたバイクであれば、2025年11月以降に乗れなくなるということはありません。中古車の50ccバイクはあとからでも入手して乗ることは可能です。
新しい基準の原付は、出力が4kWに制限された125cc未満
新しい基準の原付バイクとはどんなものになるのでしょうか。警察庁の報告書にある、ホンダやスズキが作った125cc未満で出力が4kWに制限された試作車の試乗状況を見ると、最高出力は制限されているものの発進加速などは50ccよりも向上しており、一方で50ccと比べて特に扱いにくさもないとされています。50ccよりも余裕のある走りが期待できそうです。
また、報告書の試作車のラインナップに注目してみると、スクーターやビジネスバイクのほか、ホンダがCB125Rを新基準向けに出力制限した試作車が登場しています。CB125Rといえば125ccのMT(手動変速)のスポーツバイクです。もし、出力規制がされるものの新原付として原付免許で乗れる車種が登場すれば、絶滅していた原付免許で乗れるスポーツバイクの復活ということになります。
本来のCB125Rから出力が大幅に制限されているため、同じ走りをするわけではありませんが、原付免許で、しかも自動二輪のMT免許なしに乗れるMTのバイクが復活する可能性ができたことは歓迎です。
もちろん、あくまで試験のための試作車を作っただけで、ホンダが新原付としてCB125Rを発売するかどうか決定したわけでもありません。それでも、他メーカーを含め、原付免許で乗れるバイクのラインナップが広がる可能性があることは期待してよいと言えるでしょう。
懸念されることといえば価格の上昇です。現在の125ccバイクを出力規制しただけならば、125ccの価格から下がることはありません。出力規制をすることで車体やブレーキなどを50cc並みに簡素化できるならば125ccよりも安くすることはできそうですが、実際にどんな仕様でどんな値付けがされるかはメーカーの発表を待つしかありません。
「原付」の定義が道路交通法と道路運送車両法で違うので昔から混乱
ここで、原付という名称について簡単に解説しておきます。実は「原付」である原動機付自転車の定義は、免許の区分や多くの交通ルールが関係する道路交通法と、車両についての法律である道路運送車両法で異なっています。
免許の範囲の原付は一般原付として50ccまでで、車両の原付は125ccまでとなります。車両の原付は50ccまでが原付一種、125ccまでが原付二種と区分しています。
つまり、原付免許で運転できる車両は原付一種ということが現在の状況です。免許の区分では125ccまで乗れるのは「小型限定 普通二輪免許」です。
これまでも125ccまでのバイクを原付二種と呼ぶことで原付免許で原付二種のバイクに乗れるのではないかと勘違いしてしまうことや、125ccまで乗れる「小型限定 普通二輪免許」を「原付二種免許」と呼ぶ人もあり混乱の元となっています。
また、さらに今回の新しい原付の基準が、出力制限がある車種限定とはいえ125ccまで乗れることから、「原付免許で原付二種まで乗れるようになる」と、肝心なことを略して言う人まででてきており、誤解を招きやすい状況になっています。
今回の変更は、出力制限のある125ccまでの新しい原付の基準ができ、新基準に適合した車種が原付免許で乗れるだけにすぎません。警察庁の報告書でも誤解が生じないよう周知することが重要と指摘しています。
絶対に忘れてはならないことは、新基準が登場後であっても、原付免許で既存の125ccのバイクを運転してしまえば「無免許運転」となり、3年以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰と、現在持っている運転免許の取り消しという行政処分が下される、ということです。
準備することは特にないが、これから買う人は注意 新型車にも注目
今回の新しい原付の登場でユーザーがすることは特にありません。制度が変わったからといって同じ免許で、これまで乗れなかったバイクに乗れることはありませんし、これまで乗れたバイクに乗れなくなることもありません。
強いて言えば、原付免許で運転できるバイクを買おうと思っている人は、新型車や現行車の販売動向について注目しておくことです。50ccが欲しいのなら入手できなくなる前に販売店と相談する必要がありますし、新基準のバイクに期待をしているのなら、価格を含めた新型車情報に注目する必要があるでしょう。
また、基準の変更にともなって、一時的に入手が難しくなったり、価格が変動することも予想されます。この時期にバイクを必要としている人は、新型、現行型のどちらの場合でも早めに販売店に相談することや、法令の行方やメーカーの情報に注意しておく必要があると言えるでしょう。