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精度を強みにAI検索を推進する「Perplexity」 日本でも広告展開へ

あらゆる場所に「AI」が使われはじめた昨今、「検索」にも変化が訪れている。これまでのGoogleやヤフーの「検索」は、検索結果ページを表示するものだったが、複数の出典ページからより「回答に近い」文章などを抽出・生成し、ユーザーに提示する形のサービス提案が増えている。

こうした「AI検索」は、Googleが「AI Overviews」、OpenAIが「SearchGPT」として提供を開始している。そのパイオニア的なサービスが「Perplexity」(パープレキシティ)だ。

Perplexityは、AIと検索技術を融合させた検索エンジンを提供する米国の企業。多言語対応や高度な検索機能を特徴とし、OpenAIのGPTモデルとマイクロソフトのBing検索エンジンを活用し、ユーザーの質問に対して詳細で正確な回答を提供する。

無料でも利用可能だが、有料の「Perplextiy Pro」や企業向けの「Perplexity Pr Enterprise」も展開している。Perplexity Proの通常料金は、月額2,950円~/年額29,500円~。

「Pro」版では、検索の回数制限が緩和されるほか、LLMの切り替えや画像生成などの機能が利用可能になる。

AI検索の先駆けとして、注目されていたが、日本では6月にソフトバンクとの提携を発表。ソフトバンク契約者(ソフトバンク、ワイモバイル、LINEMO)に対し、1年間のPerplexity Pro無料トライアルを開始している。

また、海外では検索結果に対する広告の導入や、AIで話題になる対価の問題にも踏み込んでいる。Perplexity 最高ビジネス責任者のドミトリー・シェヴェレンコ(Dmitry Shevelenko)氏に今後の展開を聞いた。

Perplexityのドミトリー・シェヴェレンコCBO

回答の「精度」がPerplexityの強み

Perplexityは、知りたいことについて、従来の検索のようにページ(出典)だけでなく、「本当に知りたいことの内容」までまとめて応えてくれるサービス。通常の検索では、検索した後で情報を自分で精査する必要があるが、Perplexityの場合、情報を整理した形で提示してくれる。

つまり、自分で細かく調べる手間を省いてくれるサービスともいえる。一方、検索結果に対して、情報の元になったページにはリンク(出典)も表示されるため、「回答」のもとになったWebページで自分で確認することも可能だ。

シェヴェレンコ氏は、Perplexityの特徴は「アンサーエンジン」と語る。

「Perplexityは、世界で初めてAIと検索を一緒にした会社です。目的は『質問に回答すること』。検索でリアルタイムのインターネットの情報を集め、AIの特徴である要約や合成を活用する。AIと検索の融合により、差別化され、ユーザーに愛されるサービスを提供していく。そこに集中しています。我々が作るのは質問に回答するアンサーエンジンです」

Perplexityがサービスを開始したのは2022年12月。現状ユーザー数などは公表していないが、「先月(8月)の回答数は2.5億回以上」という。2023年は全体で5億回だったため、1カ月で昨年の半分ほどの回答が行なわれており、急成長に自身を見せる。

使われる理由は、「回答の品質」だ。サマリー(要約)が適切であること、リアルタイムの情報が反映されていること。これにより「インターネットを使いやすくするサービス」とシェヴェレンコ氏は語る。

一方、「AI検索」は、GoogleやOpenAIが取り組んでいるほか、MicrosoftもOfficeにCopilotとして類似した機能を盛り込みつつある。競合は「AI検索以外」と連動した仕組みを作っていく中で、Perplexityはどのような差別化ができるのだろうか?

「我々は焦点を『ユーザーの質問に答えること』に絞っています。そこに集中して、素早く改善し、使いやすさも向上してきました。それが我々の強みですし、ユーザーの離脱が少ない、ということがその証明です」

「もうひとつはパートナーです。今回日本に来たのもその一環ですが、例えば日本ではソフトバンクとモバイル分野で提携しましたし、韓国SK Telecom、ドイツテレコム、アメリカの通信会社Xfinityなどと提携し、プラットフォームを拡大していきます。また、他社のオフィス製品への組み込みを見ても、使い勝手に難がある部分があると思います。ユーザーが期待する『質問に答える』という質の部分で我々の優位性があります」

ソフトバンク連携で日本拡大 法人導入に期待

Perplexityのビジネスモデルはどうなっているのだろうか?

シェヴェレンコ氏は現在Perplexityには4つのビジネスモデルがあると説明する。

  1. コンシューマ向けのサブスクリプション「Perplexity Pro」
  2. 法人向けの「Perplexity Pro Enterprise」
  3. 広告(米国で2024年第4四半期開始)
  4. API提供

このうち現在では、一般消費者向けのサブスクリプションが最も多い。また、5月にスタートした法人向けサービスが大きく拡大しているという。

では今後、個人とビジネス向けのどちらのフォーカスしていくのだろうか? その問いにシェヴェレンコ氏は「どちらもだ」と語る。

「例えば、Google 検索をどう使っていますか? 会社の仕事でも使いますし、週末のレストランを探すなど個人の用途でも使うでしょう。そこに違いはありません。両方をターゲットにしていきます」

「ただし、機能強化の軸として、『ナレッジワーカー』の利用者が多いので、そこを強化していく予定です。リサーチや調べ物などの仕事で使ってほしいし、そうしたユーザーに知ってもらえる機能を増やしていきます」

日本での使われ方については、ソフトバンクとの提携により、個人のPerplexity Proの契約者数は6月から大きく伸び、利用も大きく増えているという。

また、提携のもう一つの狙いとして「法人」も強化していく。法人向けも「日本は2番目に成長しているマーケット」としており、ソフトバンクの営業部隊と連携して拡大していく。加えて「金融」や「法律」などの業界にフォーカスしたサービスなども検討しているという。

日本でも広告サービスとレベニューシェアを開始

「広告」を使ったビジネスも間もなくスタートする。

広告については、2024年の第4四半期から米国で開始予定としており、同時に出典元となるパブリッシャー(出版社)等への収益還元も行なう計画だ。IME、Der Spiegel、Fortuneなどのパブリッシャーが参加し、出典元として参照した場合、レベニューシェア(収益分配)を行なう仕組みを導入する。

Perplexityは、前述のように最新のWeb検索とAIを連携した精度の高い回答と、その「情報源」を表示するのが特徴だ。一方、その情報提供にあたり、「情報元」となるパブリッシャーへの収益還元を行なわないと、情報源に「タダ乗り」していることになる。そのため、広告サービスの導入にあわせて、収益分配プログラムも導入する。

このプログラムにより、ブランド(広告主)がPerplexityの回答において、特定の関連する「フォローアップ質問」に対価を支払い広告出稿できるようになる。関連する質問によるPerplexityの広告売上の一部がパブリッシャーに還元される。

日本でも広告サービスを開始予定だ。あわせて収益還元プログラムも日本で開始するという。シェヴェレンコ氏の今回の来日もパブリッシャーとのミーティングが目的の一つとする。

日本での広告事業の開始時期については、「2025年早々になるだろう。第4四半期(10-12月)には先行テストをスタートする計画」としている。

シェヴェレンコ氏は、「Perplexityの目標はユーザー体験を毎日1%向上していくこと。それを地道に続けていくことで成長していく」と言及。サブスク、法人、広告など各領域でサービス強化を図っていくとした。

臼田勤哉