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アイホンやロジテック 似てるが違う社名・ブランドのよもやま話
2024年1月5日 08:30
PC周辺業界では、よく似通った社名や製品名が話題になることがしばしばあります。実際に名前の変更に至ったケースや、利用の許諾を得たケースも存在するわけですが、ユーザの側から見ると、それでもなお紛らわしい場合も少なくありません。
また、かつて使われていた社名やブランドが、ひっそりと消滅しているようなケースもよくあります。今回はこうした事例のうち、ネットで繰り返し話題になるものから、知って驚くものまで、いくつかのパターンを集めてみました。
2つの「ロジテック」
社名について、似ていて紛らわしいとしてネットでたびたび話題になるのが、マウスやキーボードを中心に国内でも知名度の高いメーカー「ロジクール」と、エレコム傘下の周辺機器メーカー「ロジテック」でしょう。
なぜ紛らわしいかというと、ロジクールのスイス本社の社名はロジテック(Logitech)で、海外ではこちらの名前で事業を展開しており、新製品のニュースなどでは、こちらの社名で報じられることも少なくないから。日本のロジテックは「Logitec」と綴りが違うのですが、ユーザからすると混乱するのも当然です。
これについては、かつてロジテック(スイス)が日本に進出した時、すでに日本国内ではロジテック(当時はエレコム傘下ではなかった)が存在しており、同じブランド名が使えなかったため、日本向けに「ロジクール」というブランドを立ち上げたという経緯があります。
そのため当時、日本国内で販売されるロジテック(スイス)の製品は、パッケージはもちろん製品本体のロゴマークまでも、わざわざロジテックをロジクール(Logicool)にカスタマイズした上で販売されていました。その後ロゴマークが社名の先頭部分「Logi」をモチーフにした形状に改められたことで、これらの問題はひとまず解消されものの、苦労が忍ばれるエピソードではあります。
本件、古くからのパソコンユーザーや業界に詳しい人には当然と思われているかもしれませんが、定期的に「はじめて知った!」と話題になります。
よくある『エレコム・ロジテック・ロジクールの関係性の勘違い』公式による経緯説明あり「完全にごっちゃにしてた」-Togetter
ちなみにロジクールというブランド名が確定するより前、90年代前半には、ロジテック(Logitech)の並行輸入品が日本で販売されるケースもあったため、同じ売場で日本のロジテック(Logitec)とスイスのロジテック(Logitech)の製品が並んでいることもありました。紛らわしくて困っていたのはユーザではなく、むしろ販売店だったのかもしれません。
iPhone関連は権利がややこしい?
上に紹介したロジクールとロジテックの例だけでも「ややこしいわ」となる人が多いはずですが、ことIT系の業界では類似の事例は少なからずあります。
もっとも有名なのは、他でもないiPhoneでしょう。2007年に登場したiPhoneですが、日本国内では、「iPhone」やカタカナの「アイフォン」などが、名古屋に本社を置くメーカーであるアイホン株式会社によって商標として登録済であり、iPhoneの国内展開にあたり、そのままでは販売できないという事情がありました。
そのためAppleは、自社製品でそれらを使用できる使用権を同社から取得することで、日本国内でもこれらの商標を利用可能にしています。このあたりの詳細な交渉過程は公になっていませんが、特許情報プラットフォームに掲載されている商標出願にまつわるデータを見ても、実に入り組んだ状況になっていることがよく分かります。
近年は他社が使用する林檎などのロゴマークに対する権利の主張でたびたび話題になるAppleですが、このiPhoneに関してはスムーズな国内展開が図れるよう、早い時期に綿密な手を打っていることが分かります。iPhoneの製品ページにみられる「iPhoneの商標は、アイホン株式会社のライセンスにもとづき使用されています。」という一文も、その証ということになります。
ちなみにアイホン株式会社に対してはこの商標権の使用権にまつわるロイヤリティーが毎年払われているとされており、同社の連結損益計算書に記されている最大1.5億円の「受取ロイヤリティー」なる項目がそれに当たると噂されています。このあたりの真相は明らかではありません。
「まだあると思ったらなかった」「なくなったわけじゃなかった」ブランド
社名の変更や、会社自体の買収などにより、関係がわかりにくくなっているケースは少なくありません。PC周辺機器の業界を例に、いくつかの挙げてみましょう。
比較的有名? なのはiiyamaでしょうか。同社は飯山電機として1977年に創業したディスプレイメーカーですが、民事再生などを経て2006年にマウスコンピューターの子会社となり、2008年には同社に吸収合併されました。そのためディスプレイのブランド名としては残っているものの、社名としてはすでに存在していない。
同じディスプレイメーカーでは、そのiiyamaと並び名の知れた存在だったナナオは、ブランド名の「NANAO」をもうひとつのブランドである「EIZO」へと統合したのち、2013年には商号をEIZO株式会社に変更し、現在に至っています。古いPCユーザであれば今でも「ナナオのディスプレイ」と今でも口にしてしまう人は少なくないのではないでしょうか?
一方で、子会社化されて以降も、同じ社名を用いているケースもあります。前述のロジテックは2004年にエレコムに買収されたのち、ロジテックINAソリューションズという別会社を2010年に設立したものの、ロジテックという企業自体はいまも存続しています。同じくエレコムが買収したハギワラシスコムは、その後新しく設立されたハギワラソリューションズへと事業を移管しましたが、社名の一部はロゴデザインも含めそのまま引き継がれています。
ちなみにエレコムは他にもDXアンテナなどをグループ企業に加えていますが、それらは以前と変わらぬ社名のままです。すでにあった社名の知名度を有効に生かす方針が見て取れます。
最近では、コンシューマー向け製品ではスキャナやキーボードなどで有名な「PFU」が、富士通傘下からリコー傘下へと変わり話題になりました。これによって、ドキュメントスキャナ「ScanSnap」の本体に印字されていた富士通のロゴがリコーに切り替わりましたが、社名そのものはPFUのままです。海外に強い同社の社名をそのまま生かす方針があったのではないかと考えられます。
異色のパターン「Twitter」ブランドをまるごと捨てた「X」
より幅広く、IT系のサービスにも触れておきましょう。Twitterが昨年「X」へとその名を改めたことは記憶に新しいですが、それ以前もFacebookの運営会社が「Meta」になったり、さらに遡るとmixiの運営会社がイー・マーキュリーから「ミクシィ」になったりと、ウェブサービスにまつわる企業ないしはサービス名の変更は、ホットな話題としてしばしば取り上げられます。
mixiは、ヒットした自社サービスをそのまま社名に持ってくるという分かりやすいパターン(LINEもそうです)でしたが、逆に事業の多角化によって運営会社名とサービスを分け、サービス名自体はそのまま残すFacebookのような事例もあります。Googleの持株会社として設立されたAlphabetもこのパターンですが、いずれにしてもブランドを大事に扱っていることがよく分かります。
そう考えると、「ツイート」などの用語がほぼ一般名詞として認知されていたにも関わらず、それをあっさり捨てて「X」へと名称を変更したTwitterのパターンは、異例中の異例であることが分かります。今後、同社がほのめかすXのスーパーアプリ化が実現したとしても、依然としてマイナスのほうが大きいと感じるのは、筆者だけではないでしょう。