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イケアのソフトクリームはなぜ「プラントベース」になったのか
2023年10月20日 08:40
10月19日、イケアの人気商品であるソフトクリームが、植物由来のプラントベースに切り替わりました。これまでもプラントベースのソフトクリームは販売していましたが、ラムネ味やストロベリー味などフレーバーソフトのみで、19日からは新たにミルク味のプラントベースソフトクリームが定番商品に加わることになりました。
これにより、従来の牛乳を使ったミルク味のソフトクリームは終売となり、イケアのソフトクリームはプラントベースが主流となります。イケアでは、より健康的でサステナブルな食習慣とライフスタイルのきっかけを提供したいと考えており、その一環としてイケア・ジャパンではソフトクリームに着目。イケアの象徴ともいえるソフトクリームを見つめ直し、よりサステナブルな選択肢を生み出したいと考え、2016年頃からプラントベースソフトクリームを販売しています。
先日のイケアプレスデーで筆者は一足先にミルク味のプラントベースソフトクリームを試食。その完成度の高さに驚き、一般的なソフトクリームと変わらない味で、大豆由来と言われなければわからないほどでした。
なぜ、イケアはプラントベースソフトクリームを主力にするのか、また商品化に2年掛かったというミルク味の開発裏話などを、イケア・ジャパンでフードを担当しているコマーシャル フード マネジャーの岩垣 剛史氏に聞きました。
プラントベースのソフトクリーム開発は日本独自で進められたプロジェクトで、2016年頃からバナナ味やラムネ味などを展開。今回ついにミルク味が販売されますが、プラントベースでミルク味を実現するには苦労も多かったそうです。
「原材料は大豆やえんどう豆などになるのですが、これらをソフトクリームに使用するとなると豆乳のような風味が出やすくなります。バナナやストロベリーなどフレーバーソフトは風味を消しやすく商品化しやすかったのですが、プレーンなミルク味となるとどうしても豆乳のような香りが強くなり、またシャリシャリとした食感も目立ち、なめらかなソフトクリームに近付けられませんでした」と岩垣氏は話します。
従来のソフトクリームと遜色ない味や食感に近づけるため、開発期間は2年に及びました。その間に何度も試作を重ね、納得のいくバランスを実現できたことからついに商品化。大豆やえんどう豆以外の原材料は非公表としています。なお8月のイベント発表時にはバニラ味と表記されていましたが、正しい表記はミルク味となります。
確かにバニラ味ではなく、しっかりミルクの味わいがします。大豆やえんどう豆を原材料としながら、2年掛けて牛乳のような味わいを実現したことに改めて驚かされました。
「正式販売前に一部の店舗でテスト販売もしました。店頭にはプラントベースである旨を表記していましたが、購入したお客様から一番多かった声は『プラントベースということに気が付かなかった』というものでした。そうした声に手応えを感じて正式販売することができました」(岩垣氏)
また、販売価格が50円とかなり手頃なのもイケアのソフトクリームの特徴。サイズは小ぶりですが、このサイズ感がちょうど良く、食事をした後でもこれくらいのサイズなら食べられそう、と思わせてくれます。
「価格に関しては、イケアでは家具もそうなのですが商品化する際にまず値段を決めます。200円や400円のソフトクリームだと購入する人が限られるよね、とさまざまな値段を候補にあげて、最終的に50円にたどり着きました。そこからサイズなども決めていきますが、小ぶりなことで多くの人に手にとってもらえていると思います。ソフトクリームを購入するお客様はファミリー層で、お子さんと一緒の方が一番多いのです。小さいお子さんはもちろん、甘いものがたくさん食べられない大人でも、小ぶりなソフトクリームなら1人1個ずつ食べてもらいやすくなっています」
プラントベースソフトを主流にする理由
10月19日にミルク味のプラントベースソフトクリームを出すことで、従来の牛乳を使ったソフトクリームは終売となります。併売という選択肢はなかったのでしょうか。
「併売ではなくプラントベースソフトクリームに切り替えることにしたのには、明確な理由があります。プラントベースの食品は広まってきていますが、浸透しているとはいえない状況です。ですが、お客様の中には環境保護に興味はあるけど何をしていいかわからない、といった方も多くいます。そうした方々のためにイケアで何ができるかを考えたときに、イケアの人気商品であるソフトクリームをプラントベースに切り替える、という結論に至りました。数量ベースで多く購入されている商品なので、これをプラントベースに切り替えることで認知度を上げられるのではないかと考えたのです」
イケアではソフトクリームのほかに、人気商品であるミートボールもプラントベースの商品を販売しています。ミートボールは牛肉や豚肉を使った通常のミートボール、植物由来のプラントボール、野菜を使ったベジボールを展開。
この3つの中で最も売れているのがプラントボールだそうです。同じ量でもミートボールが890円なのに対し、プラントボールは590円と低価格なのも特徴的です。
プラントベースは価格が高くなりがちな印象ですが、イケアではプラントベースでも値段が変わらなかったり、むしろプラントベースの方が安いというから驚きです。
この値段設定に関しては、「イケアでは、プラントベースフードを、アニマルベースフードと同じもしくはお手ごろ価格で提供しています。プラントベースフードをお手ごろ価格で提供することで、より多くのお客さまにサステナブルな選択肢を提供したいと考えています。そして、お客様に喜んでいただきたいという気持ちで展開しています」と岩垣氏は話します。
フードは国ごとに独自開発
なお、フードはグローバル共通の商品もありますが、国ごとに食文化が異なることから各国独自での開発もさかんに行なわれており、プラントベースソフトクリームも日本独自での展開だったようです。「日本は特に食に関心の高い国なので、高いクオリティを求められます。季節ごとのフェアなどにも注力しています」(岩垣氏)
プラントベースソフトクリームはミルク風味のほか、フレーバーメニューも引き続きラインナップ。季節ごとにフレーバーは変わり、現在は梨味を販売しています。
「梨味は昨年人気だったので、今年も秋のフレーバーとして販売することが決まりました。春はキウイ、夏はラムネなどを展開していますがいずれも好評です。特にキウイは他にあまりないフレーバーで、しかも美味しいという声を多くいただきました」
プラントベースではありませんが、現在は見た目が真っ黒で味を公表していないシークレットソフトも150円で販売中。真っ黒な見た目は竹炭を使用しており、味と見た目は無関係だそうで、食べるまで味がわからないようになっています。
筆者も食べてみましたが、確かに見た目からは想像できない味でした。フルーツ系のさっぱりとした味わいでとても美味しく、気になる方はぜひ試してみてください(IKEA 原宿・IKEA 渋谷・IKEA 新宿は販売対象外)。
シークレットソフトは今後も定期的に新作を販売予定で、現在は第4弾まで開発が済んでいるそうです。「味の候補はたくさんあり、今後どれを出していこうか検討している段階です。シークレットソフトは始まったばかりなので、ぜひ楽しんでもらえたらと思います」(岩垣氏)