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Twitter新機能「コミュニティノート」はファクトチェック?
2023年7月14日 17:05
Twitterは、日本において「コミュニティノート」を開始しました。
誤解を招く可能性のあるツイートに対し、ユーザーが協力して「役に立つノート」を追加できる機能です。Twitterユーザーがコミュニティノートの「協力者」として登録し、当該のツイートに対して、誤解を訂正する情報を「ノート」の形で返信。さまざまな視点かつ十分な数の協力者から評価が集まると、当該ツイートにコミュニティノートも表示されるようになる、という仕組みです。
ということで、7月6日に以下の記事を掲載したところ、その記事のツイートにコミュニティノートが付けられていました。
Twitter、ユーザーによるファクトチェック機能 日本で正式提供https://t.co/3hkmykRToLpic.twitter.com/e67uwjzuT1
— Impress Watch (@impress_watch)July 6, 2023
Twitterのコミュニティノートは、「誤解されやすい情報に背景情報をつけるだけ」が基本方針であり、本記事の「ファクトチェック」というタイトルでは「間違った情報を正す機能」と誤解されやすいものです。
以下のURLはTwitter公式のコミュニティノートについてのガイドです。背景情報を付加するためのものであり、ファクトチェックとは違うことを理解ください。
https://communitynotes.twitter.com/guide/ja/contributing/examples
なるほど。背景となる情報を追加するもので、ファクトチェックを意図したものではない、というご指摘です。
「ファクトチェック」の意味を簡単に調べてみましょう。ファクトチェックの普及・推進活動を行なっている「ファクトチェック・イニシアティブ」によれば以下のとおりです。
FIJの「ファクトチェック・ガイドライン」では、次のように定義しています。
公開された言説のうち、客観的に検証可能な事実について言及した事項に限定して真実性・正確性を検証し、その結果を発表する営み
https://fij.info/introduction/basic
この考えによると、上記のコミュニティノートのガイドラインでは、「その結果を発表する」までは含まれません。「ファクトチェックいう見出しは誤解を招く」というコミュニティノートの指摘は、こうした趣旨で行なわれたものようです。
編集部でも、記事作成時に今回のTwitterの発表において「ファクトチェック」という用語を使っていないことは認識していました。そのため、記事中では「ファクトチェックのような機能」と記し、また「その誤解を招く可能性のあるツイートに対し、ユーザーが協力して『役に立つノート』を追加できるという機能」と内容は説明しているため、現時点では、編集部としては、大きくズレた説明ではないと考えています。
記事のツイートに付けられたコミュニティノートは、機能の趣旨を補完してくれる有意義なもので、使い方として正しいと感じました。
ファクトチェック的に使われている?
このツイートの半日後ぐらいにコミュニティノートが付加されていることに気づきました。
指摘には「なるほど」と思ったのですが、そのツイートへの反応で少し気になったのは、「ファクトチェックされている」というものが結構多いこと。「背景情報」の追加が、「ファクトチェック」に見えるというものです。補足された情報が、結果的に記事の誤りを指摘しているように見えるのでしょう。確かに、ツイートに情報上書きされる形で表示されるため、「ダメ出し」されているような印象はUI上から感じます。
当該ツイートの、ツイートのインプレッションは2日間で100万を超え、14日時点では155万となっています。「メディアの記事にツッコミが入った」というのが面白かったのか、かなり見られたようです。記事中できちんと説明しているつもりですが、記事のPVは2万弱なので、中の説明までしっかり読んでくれた人は、Twitterを見た人の1/80程度のようです。
また、Twitter上でのコミュニティノート認知も「ファクトチェック」に寄っているように見えます。弊誌の記事もその一助を担ってしまったのかもしれませんが、「質が担保されたノート」をまとめたというTwitterの公式アカウント「役に立つコミュニティノート( @HelpfulNotesJP )」を見ると、その多くは誤情報に対する、異なる視点での情報提示といった例が多く、現状ファクトチェック的に使われているという側面もあるようです。
さらには、「矛盾しています」「デマを流布しています。」など、背景情報よりは「反論」のように見えるノートもあります。議論は「背景情報」とは違うと思われ、このあたりはさじ加減の難しさを感じます。
あらためてコミュニティノートの目的を確認すると、誤解を招く可能性があるツイートに「背景情報」を付けることで、正確な情報入手を目指すというものです。それが、副次的に「ファクトチェック」的に働くこともある、といえるのではないでしょうか。
有意義なコミュニティノートをよりよくするもの
コミュニティノートが「付けられた」場合の反応についても記しておきます。
最初のツイートの7月6日から現時点(14日)まで、Twitterからの通知やフィードバックは特にありません。コミュニティノートがいつ付けられたのかも分からず、自から見に行かないと気づけません。
150万以上のインプレッションと、リプライや引用ツイートもそれなりの数があったはずなのですが、当事者としては、その数の割にあまり盛り上がりが感じられませんでした(掲載当時は、ちょうどTwitterの閲覧制限が厳しい時期で、反応を見られなかったという事情もありますが)。
コミュニティノートは、有益な背景情報が追加されれば、多くの人にとって役立つ仕組みになる可能性があります。現状でも役に立つノートは多く、この機能に「情報空間の健全化」を期待する声も多数見受けられます。一方で、背景情報でなく、議論や反論になっているものも見られ、その内容はマチマチです。
コミュニティノートは、コミュニティをベースにした機能で、日本でも協力者の新規登録を受付しています。興味のある人は参加してみてはいかがでしょうか。
参加資格は以下のとおりです。
- Twitterルールへの違反についての通知を最近受け取っていないこと
- Twitterに登録してから6カ月以上経過していること
- 電話番号が認証済みであること