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ChatGPT超入門(3) 新機能やプラグイン APIで一歩先の使い方

ChatGPTではWebアプリやiOSアプリから誰でも気軽に質問して、回答を得られますが、使い方はそれだけに止まりません。新機能がハイペースで追加されているため、昨日できなかったことが今日になったらできるようになった、みたいなことも珍しくなく、チャット以外の方法でAIの力を借り、さらに便利に活用することもできます。

「ChatGPT超入門」の最終回となる今回は、そんなChatGPTの新しい機能や、通常のテキストチャットとは異なる使い方を紹介したいと思います。

「Browse with Bing」で最新情報も入手可能に

本連載では「ChatGPTは基本的に2021年9月までの情報を元に回答する」と説明してきました。しかし、最近になってインターネット上の新しい情報を元に回答する仕組みも利用できるようになっています。それが「Browse with Bing」という機能です。

有償のChatGPT Plus(月額20ドル/約2,900円)のユーザーは、設定画面から「Browse with Bing」を有効にすることで同機能を使用可能です。「New chat」で新しいチャットを開始する際、「GPT-4」を選択してから、その中に表示される「Browse with Bing」を選んでください。(編注:7月6日時点では、会員限定記事の情報を取得できててしまうなど。「コンテンツ所有者の権利を侵害しかねない」として同機能は一時停止されています)

設定画面の「Beta features」にある「Browse with Bing」のスイッチをクリックして有効に
新しいチャットを「GPT-4」で始めて、「Browse with Bing」を選択

この状態でいつも通りChatGPTに質問すると、回答するのに最新の情報が必要と判断された際に、サーチエンジンのMicrosoft Bingを用いてバックグラウンドで検索し、情報表示します。たとえば本記事を執筆している6月30日朝に「大谷選手は2023年シーズン、ホームランを何本打っていますか?」のように質問すると、「29本のホームランを打っています」と答えてくれます。日本時間の当日早朝に29号ホームランを放っていることをきちんと理解しているわけです。

2023年6月30日午前の時点で、大谷選手のホームラン数を正しく回答してくれた

また、「○○(地域名)の今後1週間の天気予報を教えてください」といったように質問して、未来の情報を知ることも可能です。Bingを利用していることから、(無料の)Bing AIを直接利用するのと変わりないのでは、と思うかもしれませんが、Bing AIで同じ質問をしてみると回答内容が異なることがわかります。これは「Browse with Bing」では日本語をいったん英語に翻訳してから情報収集していることが関係していると考えられます。

天気予報を聞くとこのように簡潔に教えてくれる
同じ質問をBing AIに投げかけたところ。回答の仕方が少し異なっている

最新の情報が必要ではない質問に対しては、同じチャット内で従来通りGPT-4による回答が得られるため、いつものChatGPTと変わらない使い勝手でシームレスに利用できるのも「Browse with Bing」の便利なところです。なお、この機能はiOS版のChatGPTアプリでも利用できます(編注:7月6日時点ではBrowse with Bingは停止中)。

iOSアプリでも「Browse with Bing」が利用可能

ChatGPTの活用幅を一気に広げるプラグイン

ChatGPTはユーザーが入力したテキストに対して直接テキストで回答する仕組みのため、画像や特殊なデータを扱う必要がある内容についてはユーザーが望むような結果が得られない場合があります。

また、そもそもユーザーが期待する回答を引き出すための適切な質問の仕方にたどり着くまでに時間がかかったりもするでしょう。

そうしたChatGPT単体ではフォローされない部分を補完してくれるのがプラグイン機能です。これもChatGPT Plusユーザー向けに提供されており、「Browse with Bing」と同様に設定画面で有効にしてから、GPT-4の画面で「Plugins」を選択します。実際にプラグインを利用するには「Plugin store」から目的に合うものを探してインストールし、そのプラグインを選択した状態でチャットを開始します。

設定画面の「Beta features」にある「Plugins」を有効に
新しいチャットを「GPT-4」で開始し、「Plugins」を選択
最初は「Plugin store」から使いたいプラグインを見つけてインストールする

プラグイン機能では、ChatGPTで入力した内容を外部サービスに連携し、そのサービス内で処理した結果がChatGPTの回答として表示する、というような流れになります。たとえば「Create a QR code」というプラグインを選択し、WebサイトのURLを入力すると、しばらく待てばそのURLを元にしたQRコードがChatGPT内に画像で表示されます。

「Create a QR code」プラグインを選択
URLだけ入力するとQRコード画像が生成される

上手な質問の仕方がわからず、なかなか狙った通りの結果が得られないという人は、「Prompt Perfect」というプラグインがおすすめです。いつもの質問文の最後に「perfect」と追加するだけで、より詳細かつ適切な質問文に内部的に自動変換され、それによるChatGPTの回答を得ることができます。質問を最適化するだけでなく、Stable DiffusionやMidjourneyといった画像生成AI向けにテキストを最適化する用途にも使えます。

プラグインを使わずにGPT-4で質問したときの結果
「Prompt Perfect」を使って同じ質問をしたときの回答はより詳細でわかりやすくなっている
Stable Diffusionで画像生成するときのテキストを最適化してもらう
このように狙った画像を生成しやすくなる

他にも多くのプラグインが世界中の企業、開発者によって提供されています。自分の用途や目的にぴったりのプラグインを見つけて、さらなる生産性向上を図ってみてください。

プラグイン機能はiOSアプリから直接利用はできないものの、Webアプリで利用した後の履歴から参照することは可能

APIでオリジナルのAIツールを開発できる

ChatGPTを開発するOpenAIでは、同社がもつさまざまなAI関連サービスの機能を外部から利用できるようにするAPIも提供しています。

APIというのは、簡単に言えば複数のサービス・アプリ間の連携を容易にする仕組みです。たとえばAPIを使うと、ユーザーが自分で作ったWebサービスやアプリのなかからChatGPTのAIチャットを実現している個々の機能を呼び出し、そのWebサービス・アプリのなかでChatGPTと同等の機能を提供できるようになったりします。

OpenAIが提供しているAPI群

現時点で使えるAPIは、ChatGPTのエンジンであるテキスト生成を可能にするもの、画像生成を可能にするもの、音声ファイルから翻訳や文字起こしをするものなどがあります。プログラミングの知識は必要になりますが、OpenAIのWebサイトで詳しい使い方が具体的なコード例とともに紹介されています。既存のChatGPTプラグインにはない機能を実現したいときや、自分用に特化したAIツールが欲しいときなどにぜひチャレンジしてみてください。

このようなシンプルなコードでAPIを呼び出し、OpenAIがもつさまざまな機能を直接利用できる

ちなみに筆者が本誌で以前紹介した、音声ファイルから文字起こしするための「Whisper API」もその1つです。文字起こしサービスは他にもいくつかありますが、Whisper APIを直接利用することで圧倒的に安価に、自分にとって使いやすいツールを実現できるというメリットもあります。

自分に役立つかどうかは別として、まずは触れて楽しんでみよう

このようにChatGPTは、もはやAIとチャットできるだけのツールではなく、AIの利便性の高さをあらゆる領域に広げる中心的な存在にもなりつつあります。今はまだ自分の私生活や仕事には関係ないと思っていても、もしかすると明日には新しい機能が追加され、身の回りの環境が一変している可能性すらあるでしょう。

AI絡みの動きはOpenAIだけでなく、他の大手プラットフォーマーでも一段と活発になっています。自分でAIツールを使うか使わないかに関わらず、世界がどう変化しているのか知るためにも、日常的に最新の情報に触れることが大切です。

まだChatGPTを試したことがない人は、とりあえず仕事に役立つかどうかといった難しいことは考えず、気になっていることを軽く質問してみるところから始めて楽しんでみてはいかがでしょうか。

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。