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自宅でもおしゃれカフェっぽく撮影したい! 一畳のスタジオを作った

カフェで撮影したかのような写真を自宅で撮りたい!

ネットオークションやフリマアプリなどに出品するとき、きっと多くの人は自宅で撮影しているでしょう。売れやすくなるかどうかは写真の見栄えにも大きく左右されるので、スマートフォンのカメラを使うとしても、ウソにならない程度にできるだけキレイに撮ろうと努力しているはず。

そうした撮影で重要かつ効果的なのは、きちんと照明を使って「明るさ」を稼ぐことです。それともう1つ、個人的に大事ではないかと感じているのが「背景」です。アイテムを置いている台や壁が汚れていると、そのアイテム自体も(未使用品だとしても)なんとなく小汚く見えてしまいかねません。

フリマアプリなどに出品するとき、背景はおそらく白1色(アイテムの色によっては暗い色)で十分です。でも、実際に使っているような雰囲気の写真、つまり使用シーンを想起させるようなイメージもあると、より興味を引きやすくなるのではないでしょうか? きっとそうに違いない! たとえば自宅でもカフェっぽい背景のなかで撮影できればイイ感じになるのでは?

というわけで、あまりコストをかけずに、狭い室内でも「ソレっぽい背景」で撮影できる自宅スタジオを作れないものか、あれこれ試行錯誤してみました。

なぜ背景にこだわりたいのか

本題に入る前に、もう少し前提の話をさせてください。なぜ撮影背景を工夫したくなったかと言えば、本当のところはフリマアプリへの出品が理由ではありません。筆者の場合、仕事柄いろいろなアイテム、スマートフォンとか、パソコンとか、その周辺機器とかを撮影するので、それをなんとかしたかったのです。

あくまでもライターが本業なので、プロのフォトグラファーみたいな見栄えを目指しているわけではありません。「アマチュアな自分が可能な範囲で」ということになるけれども、少しでもキレイに見せられれば、と思っていました。とはいえ、背景はだいたい白1色でOKだし、そこはフリマアプリなどに出品するときと大差はない。でも、もうちょっと工夫したいな、と思うときもあありました。

普通はこんな風に白1色の、個性のない背景の方がいろいろ都合がいい

たとえば、持ち運びに便利なノートパソコンを紹介するとき、カフェで使っているような雰囲気を出したいなあ、なんて思ったりします。でも、わざわざ本物の喫茶店まで行って撮影するのは難しい。時間がかかるし、撮影許可が必要だったりして手間もかかる。代わりに自宅でパッと撮れたら楽ちんです。

しかし、だからといって自宅にカフェを作るわけにもいきません。いや、カフェっぽい場所が自宅にあったらそれはそれでサイコーだけれど、狭い我が家にそんなスペースを作る余裕はありません。撮影用に割けるのはせいぜい畳1枚分くらいの空間です。

以前は80cm四方の撮影用ボックスを使っていました。これも専有面積で言えば1畳に収まるくらいですが、立方体なので空間に占める割合が大きく圧迫感がありました。そのわりに中型のノートパソコン程度の撮影でサイズとしては物足りなくなる(パソコン全体を写そうとするとボックス内部の骨組みが見えたりする)ので、お役御免としました。以降は小さなローテーブルと背景紙(布)などを組み合わせてシンプルな撮影台にしています。

筆者の自宅にある既存の撮影スペース。だいたい1畳分くらい

被写体がノートパソコン未満の小物のみであればともかく、それ以上のサイズのものを撮影することもある場合、1畳程度のスペースで見栄えのする物撮りを可能にするのは意外と難しのです。

こんな状況でもカフェっぽい雰囲気のある背景を作る方法はないものか。もしかしたらフリマアプリに出品するような人の参考にもなるのでは? そう思っていろいろ試してみることにしました。

目指せカフェっぽさ! まずは「木製の板」でチャレンジ

ところで、そもそも「カフェっぽさ」とはどういうものでしょう。ネットで「カフェ」を画像検索してみると、多いのは木目のテーブルとフローリング。壁は漆喰っぽいものやコンクリート、レンガやデザイン壁紙とかもあります。全体として明るく開放的か、薄暗くしっとりしたプライベート感ある空間か、といった違いはあるにせよ、基本的には「木」を使うことが多いようです。

であるならば、木製の台とそれに合いそうな壁を作れれば、カフェっぽい見た目になりそうな気がします。そう単純に考えて最初に試してみたのが、ホームセンターで買ってきた合板にペンキで色を塗ってみる、というもの。1畳に収められて、かつある程度大きなアイテムの背景としてもカバーできそうな横90cm×縦60cmの合板を、台および壁として2枚利用しました。それが下の写真です。

色を塗った合板を背景に使ってみた例

完全に失敗です。数ある合板のなかでも、どうやら「ラワン合板」というものを選んでしまったのが敗因かもしれません。木目らしい木目がないうえに、ペンキのノリを良くしようと粗い紙ヤスリをかけたのもよくなかった。その紙ヤスリの跡が筋として目立ってしまい、何かしらの木材のようだとわかるにしても、カフェのテーブルにはとても見えません。

「明るい白基調のカフェテーブル」をイメージして白いペンキで塗ったバージョンも用意したのですが、やはりこちらも木目らしい木目がないせいでイメージと全然異なるものに……。単色の背景的に使うのは十分にアリだが、狙いからはだいぶ外れています。

白く塗った合板を背景に使ってみた例

実際のカフェと同じように、リアルな木目が見える無垢材を使えばそれっぽくはなるでしょう。けれど、そういう木材はとっても高価。重く扱いにくくなるのも問題です。カフェ風だけでなく、これまで通り単色背景で写したいときもあるわけで、設置と撤去(別背景への交換)を簡単にできるようにすることも考えると、軽く扱いやすい素材であることも欠かせない。

さて、どうするか……。

「素材感」を出して再チャレンジ!

リアルな無垢材を使うのはコストや使い勝手を考えると諦めざるを得ません。でも木の素材感は出したい。そう「素材感」だ。質感はともかく、無垢材のような見た目の素材感さえあれば、意外と写真上ではごまかせるかもしれない!

そこで次に試したのが木目調の壁紙です。木目「調」なので、本物の木材ではないものの、実際に目で見たり触れたりするわけではないのでバレないだろうと考えました。壁紙用のシートには木目調だけでなく大理石やコンクリートを模したもの、絵柄入りや単色などたくさんの種類があります。誰でも簡単に壁に貼れるのり付きのものもあって、部屋の気軽な模様替えなんかに使えるヤツです。

これを軽量なスチレンボード(こちらもサイズは90×60cm程度)などに貼り付けて撮影用の背景にすれば、カフェっぽい風景ができあがりそうではないか。ただし、テーブル代わりにする板はアイテムを置いたときに凹んだり折れたり、ひっくり返ったりしないよう、スチレンボードより重くて頑丈なMDF材を利用することにしました。

スチレンボードとMDF材、それと壁紙。おそらく必要になりそうなスポットライト用の照明器具もホームセンターで購入した(2万円弱)
フルカラー調光可能なスマート電球「Hue」も2個(計約14,000円)
MDF材にウォルナット風の壁紙を貼り付け。これだけで重厚感のあるテーブルになったぞ!
コンクリート打ちっぱなし風の壁紙はスチレンボードに貼り付け

そんなわけでコンクリート打ちっぱなし風の壁紙と、ウォルナット風の壁紙を使ってみたのが下記。大人な雰囲気がにじみ出るオフィスのワークスペース、みたいな見た目になったように思うが、どうでしょうか? 「カフェ」ではないですが……

コンクリート風壁紙+ウォルナット風壁紙を使った例

コンクリート風壁紙の代わりに(壁紙ではない)布を貼り付けてみても「どこかの室内」感は出る。むしろ特徴が薄い分、頻繁に使っても飽きられにくそうではある。まあ「カフェ」ではないけれども。

布+ウォルナット風の壁紙を使った例

次は明るめの室内をイメージして、コンクリート風壁紙と集成材風の壁紙を組み合わせてみました。こちらも「カフェ」ではないにしろ、クセのない背景なのである程度汎用的に使えそうな気がします。

コンクリート風壁紙+集成材風壁紙を使った例

もう1つ、白くペイントされた木目調壁紙を使ってみたパターン。なんとなく屋外っぽさを演出してみたかったのですが、さすがに壁側が単色に近いシンプルな壁紙なので、どことも言えない微妙な見栄えになってしまいました。これはこれで使いやすい背景ではあります。

グレー壁紙+白くペイントされた木目調壁紙を使った例

スチレンボードやMDF材の表と裏で別の壁紙を貼り付ければ、裏返すだけでいろいろな組み合わせの背景をつくることができる、というのも軽量な素材を使う利点。接写すると、さすがにその質感から壁紙と気付いてしまうかもしれませんが、被写体の背景として使う分には意外と違和感がありません。まあまあイケてるスタジオになったのでは?

「奥行き」を表現するべく「バーチャル壁紙」に手を出す

しかし、今回の主題である「カフェ」にはまだまだ遠い。

何が足りないのだろうか。じっくり考えてみた結果、それはきっと「奥行き」ではないかという結論に至りました。写真で切り取ったときに、そこがそれらしい場所であると感じさせる要素として「奥行き」というか「抜け感」みたいなものも重要なのかもしれない。素材感だけでは、ここはたぶんどうにもならない部分です。

カフェの雰囲気を出すのなら、手前の被写体よりずっと奥の方にも、カフェっぽい空間が続いているように見せなければいけません。とはいえ、1畳分という撮影スペース、その向こうはただの壁、なんていう環境で奥行きを再現するのはまず不可能。何か方法はないのか。

筆者は苦肉の策として「バーチャル壁紙」に手を出すことにしました。

バーチャルと言っても、カフェ風の店内の写真を紙に大きくプリントして、それを被写体の背景に置くという実にアナログな手法です。フリー素材を利用させていただき、スチレンボードに貼り付けて背景に置いてみた。そうしてできあがったのが下記の写真です。

フリー素材のカフェ写真をぼかしたうえで、大きくポスター(分割)印刷して貼り付けていく
できた!
これをこうして……
こうじゃ!

「あ、うん……」という声が聞こえてきそうな仕上がりになってしまいました。何がいけなかったのか。アングルやライティングなどを調整して違和感のないようにしたつもりですが、一番の問題は背景にリアリティがないというか、自宅インクジェットプリンターで印刷したせいでムラが見えて明らかな作り物感が漂っていることでしょう。また、背景が遠いはずのわりにぼかしが弱い気もします。

なので、今度はコンビニの複合機でポスター印刷し、できるだけムラが見えないようにしてみました。ぼかしも少し強めにしている。これでどうだ!

完成! まさしくカフェ! だよね?

ぱっと見、サムネイルだとまさにカフェ店内で撮影したかのような見栄えになっているのではないでしょうか。拡大すると、名状しがたい違和感がそこはかとなく漂ってしまっているような気がするけれども、ほら、ちょっと目を細めて見てみたら、カフェじゃない? これはまぎれもなくカフェ。カフェと言ったらカフェ。ここに自宅カフェスタジオがついに完成したッ!

コストパフォーマンスを考えるなら壁紙のみがおすすめ

よっしゃ、これで自宅でいつでもカフェ風の写真を撮ることができるぞ! と言いたいところですが、実際にはなかなか厳しい。本来は立体的なはずの店内を写真にして平面に貼り付けていることから、手前の立体物と合わせたときに自然に見えるアングルはごくごく限られる、というのがまず1つ目の理由。

手前にある被写体と、台と背景にできる境目などを考慮したとき、背景として不自然ではないフリー素材の写真というのもそう多くありません。いちいち探すことになるので時間がかかるし、プリントしてボードに貼り付ける手間もある。ライティングも工夫しないと、あからさまにフェイクの背景だとわかってしまいそうです。しかも、そこまで苦労しても、特徴的すぎる撮影シーンになるので使い回しがしにくい。

背景の内容に合わせて被写体に当たる光の色も細かく調整する必要があるので、フルカラー調光できるHueを投入したのは正解ではあったけれど……

要するに効率が良くないし、汎用性が全くない、というのが今回試してみてよくわかりました。なので、背景にカフェの写真を置くバーチャル壁紙はおすすめしにくい。

でも、ボードに各種壁紙を貼り付けて使う手は大いにアリ。コストパフォーマンスも高めで、パターンのバリエーションも作りやすい。自宅での物撮りが、きっともっと楽しくなると思います。

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。