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値上げが続く電気料金の仕組みを知る 政府の補助はいつ? 対策は?
2023年2月8日 08:20
電気料金値上げが話題です。「3割値上げ」と報じられていますが、誰もが支払額が3割増えるのでしょうか? 家計にとって非常に厳しい状況です。
今回は、現在の電気料金の仕組みをおさらいしながら、値上げの対象や値上げに対する対策がないのかを考えます。
電気料金の仕組みを知ろう
電気料金の値上げのニュースでは「一般家庭では月額△□○円の負担増加」などと報じられることが多いです。灯油は1缶(18リッター)、クルマのガソリンは1リッターあたりの価格で報じられますが、なぜか電気代は1kWhという電力量ではなく「一般家庭の負担額」というあいまいなモデルで比べられます。
その理由のひとつとして考えられるのは、電気料金の計算は単純に単価×使用量ではないところにあります。
従来から多くの一般家庭で使われてきた料金プラン「従量電灯B」は、単価が一定ではなく、使用量に応じて単価が変動します。といってもそれほど難しいわけではなく、120kWhまで、120kWhをこえ300kWhまで、300kWh以上と3段階に単価が増える計算方法となっています。ですので、単価で語ることが難しくなっています。
しかも、電力の単価だけで決まるわけではありません。
まず、基本料金があり、さらに「燃料費調整単価」「再生可能エネルギー発電促進賦課金単価」の2つが上乗せされます。この2つは使った電力量に応じて課金されます。
そして、オール電化や純電気自動車が家にあってエネルギーの入り口を電気にシフトしている家と、給湯はガス、クルマはガソリン、という家では電気の使用量は全く異なり、電気代も全く異なります。
値上げに立ち向かうには、まず、電気料金の仕組みを知ることが重要です。
現在、電気料金は以下のようになります。
支払う電気代=
基本料金
+ 電力量料金単価×使用電力量(プランごとに異なる)
+ 燃料費調整単価×使用電力量
+ 再生可能エネルギー発電促進賦課金単価×使用電力量
+ (口座振替割引額などの割引やオプション料金等)
少し前に話題になっていたのは燃料費調整単価です。日々変動する燃料費が上下するたびに電気料金の値上げと値下げを繰り返すのは手続き的にも大変で、値上げも値下げもしなければ電力会社の経営に影響します。それを、簡単に燃料費に応じて料金を変動するよう、1996年に導入されたものが燃料費調整単価です。
しかも、燃料費調整単価は一律ではありません。電力会社やプランによって異なります。また、変動するなかでプラスだけでなくマイナスということもあります。
燃料費調整単価は東京電力エナジーパートナー(EP)の規制料金を例にすれば、2022年1月まではマイナスで2022年2月には1kWhあたり0.74円、その1年後の2023年2月分は5.13円です。月に300kWhを使う家庭ならば、1年前に比べて1カ月に1,317円、負担が大きくなっていることになります。
これが限度なく上がってしまうと、まさに電気代は青天井ということになります。そのため、燃料費調整単価の上限が設定されていました。
燃料費調整単価の上限がない「規制料金」とは何か?
燃料費調整単価に必ず上限がある料金が「規制料金」です。
それはなにかといえば、2016年4月1日の電力自由化前からの伝統的プランである「従量電灯B」「従量電灯C」などのことです。自由化後は「経過措置料金」とされ2020年4月以降に廃止することもできましたが、各電力会社は現在も継続させています。
経過措置料金ということもあって、前述の燃料費調整単価についても上限が設定されています。しかし、2022年に上限に達してしまったことから、ベースとなる料金単価の値上げへとつながっています。
そして、その一方で、電力自由化以降の新しいプランや電気事業者の「自由料金」プランは、燃料費調整単価に上限を設けるも設けないも自由です。上限があるプランでも上限を撤廃する動きが出てくるなどして、実際の支払額に大きな影響が出てくることになってきました。
東京電力EPの場合、2022年8月までは規制料金と自由料金で燃料費調整単価に差はありませんでしたが、9月からは上限に達した規制料金と自由料金で燃料費調整単価に差が出て、2023年2月の自由料金の燃料費調整単価はkWhあたり13.04円です。すでに規制料金と自由料金で7.91円の差が出ています。
その結果、東京電力EPの規制料金の「従量電灯B」と自由料金の「スタンダードS」は基本料金も電力量料金もほぼ同じで揃っていますが、燃料費調整単価のぶんだけ「スタンダードS」が高くなり、300kWh程度使えば2,000円以上スタンダードSが高くなっています。
つまり、自由化前の規制料金のほうが安い現象が発生しています。
なぜいま値上げ? 3割値上げは規制料金
6月1日から電力単価が3割もの値上げが予定されているのは「規制料金」のプランです。燃料費調整単価が上限なので値上げができないなら元々の価格を上げましょう、ということです。
実際、各社が値上げの際の説明した内容では、「規制料金」に戻す人が増えて、電力会社として収支が悪くなったからとしています。前項のことからしても、規制料金のほうが安いとなれば、規制料金へ変更する人たちが多く出てくるのは当然です。
反対に自由料金の値上げ幅は小さくなっています。今回の値上げの結果、東京電力EPの場合、規制料金の「従量電灯B」と自由料金の「スタンダードS」が同単価になります。燃料費調整単価で差がついたところを元に戻したことになります。
そのほかの料金プランも値上げとなります。時間帯別に変化のある料金プランはそれぞれの時間帯で値上げとなっていますが、全体的には、これまで割安だった夜間の値上げ幅が大きくなる傾向があります。
なかには、これまで夜間の単価を極端に下げていたプランでは、夜間の値上げ幅がずっと大きくなっていることもあります。値上げ+燃料費調整のダブルで襲ってきた場合を計算すれば、1年前とくらべて、例えば1kWhあたりの単価が5円上がり、燃料費調整単価でプラス12円となれば合計17円。オール電化などで夜間に月間500kWh使っていれば夜間だけでも月に8,500円高くなることになります。
少しだけうれしいニュースは国によるkWhあたり7円の緩和対策
上がる一方のような電気料金ですが、ひとつだけうれしいニュースがあります。
国による「電気・ガス価格激変緩和対策事業」として、電気料金を軽減する対策、つまり国の補助が開始されます。一般家庭などの低圧では1kWhあたり7円を引いてくれ、燃料費調整単価は規制料金でマイナス1.87円となります。
この措置は2月開始となっていますが、2月の検針分からとなるので、電力会社によって異なるものの、1月のどこかの日にちから安い単価で計上されることになります。検針日がいつなのかは、自分で契約している電力会社の請求情報などで確認できます。
そして、この緩和対策は10月検針分まで続きます。最後の10月検針分はkWhあたり7円引きではなく半分の3.5円引きとなります。
なお、この1kWhあたり7円は家庭などの低圧受電の場合の金額です。工場や、高圧で一括受電をしているマンション、そしてオーディオマニアが導入するいわゆる「マイ電柱」などは高圧受電となり、緩和対策による値引きは1kWhあたり3.5円になります。
ほかにもある値上げの原因
最初に料金の説明をしたところに「再生可能エネルギー発電促進賦課金単価」というものがあります。要件を満たした太陽光発電などを備えた人には売電単価を上乗せする制度など、再生エネルギーを普及させる制度がありますが、この原資となるものです。
実は、この金額もじわじわと上がっているのです。スタートした2012年度は1kWhあたり0.22円でしたが、毎年上がり続けて現在の2022年度の単価は1kWhあたり3.45円です。2023年度は今後発表されますが、これまでと同じなら値上げとなります。
そして、そのほかに2023年4月1日からスタートする「レベニューキャップ制度」というものがあります。
現在、新しい電力会社と電気の契約をしていても、実際にはその地域の「一般送配電事業者」の設備によって電気を運んでもらいます。たとえば関東地方の一般的な家ならば東京電力パワーグリッドの送電線や電柱などが該当します。そのコストについての負担方法が変わり、変動が料金に反映されることになります。現在のところ、各電力会社で値上げが見込まれていて、例えば東京電力EPでは東京電力管内ではkWhあたり0.2円の値上げを見込むとしています。
電気代を抑える方法は残念ながらかなり限定的
値上げばかりで、電気に関しては先が思いやられるばかりですが、下げる方法としては、節電をすることのほかは、料金プランの見直しです。
電力会社の収支を悪化させた、つまりユーザーにとってはメリットがある規制料金のプランに今から戻すという方法もありますし、電気を使う時間帯が夜間に集中しているなら、夜間が安いプランにするなどの方法です。
また、スマートフォンの料金プランを指定の電力会社にすることで安くなる方法もあり、トータルで支払額を下げる方法もあります。そのほかに、契約することでポイント還元率を上げるECサイト系の電力会社もあります。
とはいえ、本当に安くなるかどうかは、綿密にシミュレーションしてみないとわかりません。自由料金プランでは、前述のように燃料費調整単価の問題があり、6月までは不利な状況が続きます。
また、特に夜間が安いプランの場合、本当に夜間の消費が多いのか、昼間は割高になっても元がとれるのかなど、詳細な確認が必要です。
いずれにしても、残念ながら誰もが簡単に安くできる方法はもう残されていないと言っていいでしょう。電気代を抑えるなら、「節電方法を考える」が基本になるのではないでしょうか。