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マイナンバーカードの“今”と“これから” 免許証・スマホ・オンライン申請

普及が進みつつある「マイナンバーカード」。公的な身分証明書としてはもちろん、税金の確定申告など一部行政手続きのオンライン申請に必要なカードとして、お馴染みの存在となってきました。直近では、最大2万円分相当のポイントが貰える「マイナポイント第2弾」が話題です。

このマイナポイント第2弾に参加するには、マイナンバーカードの取得が必要です。その期限が「9月末」とされていたのですが、先日「12月末」までの延期が発表されました。ただ、マイナポイント第2弾の申込期限は'23年2月末までで、マイナンバーカードは申請から発行まで1カ月程度かかることを考えると、早めにカードを申請・取得しておくにこしたことはありません。

重要なのは、「マイナンバーカードを取得するとどのようなメリットがあるか」です。かつては「マイナンバーカードを取得しても使い道がない」などと言われていましたが、ここ最近はマイナンバーカードを中心とした、行政サービスのデジタル化が加速しています。「マイナンバーカードと運転免許証の一体化」はその代表的なところですが、実はそれ以外にも結構あることをご存じでしょうか?

今後数年でマイナンバーカードがどう進化していくのか。解説していきます。

申請率がついに全国民の5割超え、最も身近な“身分証明書”

マイナンバーカードについてはImpress Watchで度々取り上げていますが、ごくベーシックな部分を今一度確認しておきましょう。日本では現在、住民票を持つ国内の全住民に対し、12桁の数列からなる「マイナンバー」が割り当てられています。行政手続きにおける個人識別のために必須なものとされ、ある意味で強制的・自動的に付番されます。

このマイナンバーを、券面として、あるいは内蔵ICチップをスマートフォンなどに読み込ませることで確認できるプラスチック製カードが「マイナンバーカード」です。マイナンバーカードの取得はあくまで任意で、義務ではありません。

マイナンバーカードの表面側には、本人の写真、氏名、住所などが記載されていますので、携帯電話ショップや銀行での本人確認に使用できます。

また裏面側のICチップ内には、(立法・行政上の手続きを経れば)さまざまなデータを保存できます。「マイナポイント」は、そうした仕組みのもとで実現しています。つまり、券面とICチップの複合技で、極めて多機能な運用ができるのがマイナンバーカード……という訳です。

マイナンバーカードの表面
こちらは裏面

マイナンバーカードの発行が開始したのは2016年1月。それから約6年半が経過しましたが、ここにきてついに全人口に対する申請率が50%を超えました。実際のカード発行数を意味する交付率は47.4%ですが、とはいえ国民の2人に1人がマイナンバーカードを持つ時代になった訳です。

ちなみに、マイナンバーカードとよく比較される運転免許証ですが、人口に対する保有率は74.7%とのこと(令和4年版交通安全白書 第1編 第1部 第3節 94ページより)。まだ大きな開きはありますが、マイナンバーカードは教習所に通わず、受験料もかかることなく、無料で発行・取得できます。未成年を含む全国民にとって、運転免許証以上に身近な“身分証明書”といえるでしょう。

'22年度~数年後にできること。マイナンバーカード将来展望

さて制度としてのマイナンバーには「行政手続きにおける個人識別」という、広い目的を前提に作られた制度です。適用範囲が少しずつ広がっており、例えば2016年の制度創設当初は考えつきもしなかったであろう、コロナウイルスワクチンの接種証明書の発行にマイナンバーカードが使われています。

それ以外の機能の追加についても、マイナンバーカードのウェブサイトでは予告されています。順に見ていきましょう。

活用シーンの拡大と今後の主な取組

子育て・介護・災害関連のオンライン申請 '22年度末までに“全自治体”

マイナンバーカードを使って各種行政サービスへアクセスするための窓口が、ウェブサイト「マイナポータル」です。同サイトへのログインにはマイナンバーカード(と発行時に設定した暗証番号等)を使います。通販サイトなどで一般的なID・パスワード制と比べて少々面倒なのは事実ですが、その分セキュリティに配慮されている格好です。

「マイナポータル」。行政関連の多くの手続きが集約されています

なお、ログイン時のカード読取には、iOS/Android問わず多くのスマートフォンに内蔵されているICカードリーダーが使えますので、特段の追加出費は不要と考えてよいでしょう。

マイナポータルでは、現状でもすでに多くの行政手続きをオンラインで申請できます。ただし「どの手続きができるかは“市区町村”によって全く異なる」──これを頭に入れておかねばなりません。

例えば介護分野における「要介護認定」のオンライン申請は、東京都港区ではでき、千代田区は未対応。子育て分野の児童手当は、江東区はオンライン申請できるが中央区は郵送か窓口受付のみ、といった具合。また、マイナポータルとは別に、市区町村独自のオンライン申請サイトが開設されている例が少なくありません。

マイナポータル内で、東京都港区において「要介護認定」の支援について検索したところ。表記の通り、マイナンバーカードがあればオンラインで直接申請できる
対して千代田区。そもそも「介護」のジャンルがない
川口市はマイナポータルではほとんど手続きできず、独自のサイトを開設している

この状況を踏まえて、2022年度末に以下のようにすることが明言されています。

「原則、全自治体において、マイナンバーカードを用いて子育て・介護等のオンライン手続が可能となるように支援」

……と言う訳で、こうした状況が、多少なりとも改善することが見込まれます。あくまで「支援」であって、「完了」「達成」ではありません。オンライン申請への対応度合いには、自治体の自主性が働くでしょうから、バラバラでもある程度は仕方ないのでしょう。

河野太郎デジタル大臣は、8月26日付けで公開したYouTube動画において、児童手当、保育園、そして介護関連の認定や更新、自動車税の納付、災害時の罹災証明発行などが、役所に出向かずともできるようになると説明しています。なお、一部のサービスのオンライン申請が9月時点ですでに可能な自治体もあります。

国民の皆様への、マイナンバーカード取得・利用に関するメッセージ【河野デジタル大臣】

もう1つ、地元の自治体でどんなオンライン申請ができるかは、マイナポータル内の「手続の検索・電子申請(ぴったりサービス)」で確認できます。サービスを検索するだけなら、ログイン不要、目的の自治体を選択するだけでOKです。引越し先の自治体の状況を調べてみるとか、ぜひ活用してみてください。

電子証明書機能のスマートフォンへの搭載 Androidから

マイナンバーカードの役割の1つとして、券面を対面で見せることによる身分証明書があります。ただ、内蔵ICチップが果たす役割はそれ以上に大きいと言えます。ネット経由でさまざまな機能・サービスと連携できるからです。

このICチップで実現しているサービスを、スマートフォンにも搭載する取り組みは2020年末から進められてきました。それが2022年度末(2023年3月末まで)にシステムでの対応が完了する予定です。なお、実際のスマートフォンでの対応は「2023年4月以降の早い段階」とされています。

マイナポータルへのログインの度に、マイナンバーカードをタッチする手間が軽減されるのが最大のメリットでしょう

これまでなら、マイナポータルへログインするためには、スマートフォンのICカードリーダーにマイナンバーカードをタッチさせる必要がありました。ですが2023年3月以降は、スマートフォン内に電子証明書を格納しておき、それを元にマイナポータルへログインしたり、民間サービスにおける本人確認ができるようになります。

実際に利用できる機能やユーザーインターフェイスについては、まだ不明な点は多いですが、マイナポータルへのログインは最初期の段階で実現する見込み。一方で、住民票のコンビニ交付サービス、健康保険証利用は、やや遅れての対応になりそうです。

実現の具体的な時期については、関係者の発言などによると、2023年4月以降のなるべく早い段階で、まずAndroid端末で可能になる見通しです。

なおiPhone(iOS)については、Android向けに提供開始後、なるべく早くとだけ説明されています。日本はiPhoneユーザーが多いですから、こちらも早急な対応を期待しましょう。

スマートフォン用電子証明書のユースケース(出典:総務省 情報流通行政局 情報流通高度化推進室)

2023年1月に「電子処方箋」スタート マイナポータルで閲覧可能に

2023年1月頃にはマイナポータルにおいて、自分自身の保健医療情報とともに「電子処方箋」の情報を閲覧できるようになります。

「医療機関等向けポータルサイト」が2022年7月に開催した説明会資料より。電子処方箋の関係イメージ図。マイナポータルの記載がしっかりあります

電子処方箋は、まだ聞き馴染みのない言葉でしょう。文字通り、薬の処方箋を紙からデジタルデータへ転換する取り組みのことで、マイナンバー制度とはまた別に、2023年1月から全国で運用が開始される予定です(実際には、ごく一部の医療機関・薬局での対応となるでしょう)。

ただし運用によっては、患者に対して紙の処方箋を発行せずに、保険証利用登録しているマイナンバーカードに直接、薬の引換番号を紐付けられるそうです。これを聞くと、なかなか便利そうです。

2022年秋の現段階においても、マイナンバーカードを健康保険証として利用登録しておけば、医療費情報がマイナポータルから参照できます(病院窓口でマイナンバーカードを提示していなくてもOK)。恐らくはマイナポータル内のそのページに、電子処方箋の情報が追記されるようになると思われます。

マイナンバーカードの運転免許証利用は「2024年度末」メド

こちらは一般マスコミでも取り上げられているのでご存じの方も多いでしょう。マイナンバーカードと運転免許証の一体化に向けた動きが進んでおり、時期についても「2024年度末」とされています。

マイナンバーカードと運転免許証の一体化イメージ

「一体化」とはいうものの、より正確には、マイナンバーカードのICチップ内に、運転免許証にかかる情報を記録しておくというかたちが想定されています。これはあくまで想像ですが、運転免許センターで運転免許証を発行する際、マイナンバーカードを合わせて持参するのか、あるいは事後的に別手続きが必要なのか……? このあたりは不明ですが、一定の利便はありそう。マイナンバーカードを持つ理由になりますし、もしかすると免許不携帯の心配が減るかもしれません。

参議院の議案情報によれば、3月に提出された改正道交法(案)でマイナンバーカード関連の条項が盛り込まれており、審議を経て翌4月には可決・公布されています。どんな実装になるのか、続報を待ちましょう。

と、こういったあたりがマイナンバーカードの今後の拡張予定です。他にも、マイナンバーカードの国外継続利用(2024年度中)、マイナンバーカードと在留カードの一体化(2025年度)等、国内・国外を行き来する方の利便向上に繋がりそうな策が計画されています。

ここから少し脱線しますが、筆者が気になるマイナンバー関連トピックについて、少し補足を加えておきたいと思います。

保険証代わりになる「マイナ受付」、ペースは遅いも徐々に拡大

マイナポイント第2弾を契機に、マイナンバーカードの保険証利用登録を済ませた方は多いでしょう。引越し先でもそのまま使える、医療費関連の確定申告が簡単になる等、色々メリットがあります。

マイナンバーカードの保険証利用に対応している病院や薬局では「マイナ受付」の表示があります

マイナンバーカードの保険証利用に対応している医療機関・薬局には、「マイナ受付」のロゴステッカーなどが掲示されています。ただ筆者の場合、最寄りの医院・歯科医院ともにまだ未対応。あんなにいち早く申請したのに、一度も使ったことがないという……。

日本医師会の資料によれば、マイナ受付に必要な顔認証付きカードリーダーの運用を開始した施設は、病院・診療所・薬局など合計22万9,836施設中の18.4%(2022年5月1日時点)。これでは確かに少ない印象です。ただ、2021年10月の制度開始時点では5.1%ですから、伸びているのは確かです。なお、今年度末(2023年3月末)までにはすべての医療機関に導入という目標となっているため、これから更に伸びることが期待されます。

今年の春先には、マイナンバーカードで受診すると紙の保険証受診時に比べて医療費が数十円割高になるという制度設計にも批判が集まりました。ただ10月以降、それを見直す動きも出ています。

一方で気になるのが、紙の保険証を廃止して、マイナンバー保険証に一本化するいう案があがっている点です。個人的には、流石に性急すぎると感じています。このあたり、継続的にウォッチしていく必要がありそうです。

「引越しワンストップサービス」は検証継続中

こちらも、期待のサービスと言えるでしょう。住居の引越しにともなって多々発生する行政・民間の窓口手続きを、新たに開設する専用ポータルサイト上でまとめて実行できるようになります。

この際、マイナポータルを一部利用するとのことで、恐らくはマイナンバーカードが1つのキーとなるのでしょう。

「引越しワンストップサービス」の概念図(出典:デジタル庁ウェブサイト)

この「引越しワンストップサービス」の検証は内閣官房によって2019年に実施されましたが、2022年にはデジタル庁所管で協力自治体を募り、改めて検証が行なわれます。

ちなみに、協力自治体の公募にあたっての説明では、「令和4年度(2022年度)に全市区町村において、マイナポータル等を通じたオンラインによる転出届・転入(転居)予約のサービスを開始することを目指す」と記載されています

市区町村レベルの引越し手続きだけであれば、マイナンバーカードを使った「特例転出」「特例転入」の制度があります。こちらも利用できるかは自治体次第ですが、上手くいけば転出地・転入地で合計2回窓口を訪れなければならなかったのが1回で済みます。是非チェックしてみてください(神奈川県小田原市の例はこんな感じ)。

意外と多い? マイナンバーカードが図書館利用者カードに

マイナンバーカードを、マイナンバーの証明以外の別の目的に利用しようという動きは、制度誕生初期から模索されています。代表的なところでは、会社員・公務員の職員証としての利用が知られています。

東京都豊島区立図書館による告知。利用時は、マイナンバーカードを職員に渡す必要はなく、自分でカードリーダーにタッチすればOK

しかし一般市民レベルで誰でも使えるもの……となると数は限られます。比較的身近でかつ普及している例として「公営図書館の利用カード」がありました。

こちらは東京都豊島区の例。2017年9月にはすでに制度がスタートしました。逆に新潟県のように、2022年3月になって開始したところもあります

他に軽く調べただけでも、姫路市宇都宮市愛知県などの例がありました。想像以上に広がっているのかもしれません。もし興味のある方は、「お住まいの自治体名 図書館 マイナンバーカード」でウェブ検索してみてください。

着実に進化するマイナンバーカード

以上、マイナンバーカードの進化のポイントを見てきました。少し注意しておきたいのは、マイナンバーカードの運用は、市町村レベルで導入状況に違いがあるため、「全自治体で○○ができる」というような断定表現がなかなか難しいところ。マイナポータルのオンライン申請は、本当に市町村ごとに違うので、お住まいの自治体の状況を確認しておきましょう。

オンライン申請の対応度は本当にバラバラなので気を付けて! 都会の街だから完璧という訳でもありません

現状ではまだ不満点の多いマイナンバー制度ですが、河野デジタル大臣が「行政サービスは基本的にマイナンバーカードだけで手続きができるように(したい)」」と発言していますし、またデジタル庁の幹部はマイナポータルを2022年中にリニューアルする方針も示してます。まずは着実に、機能強化を図っていってほしいですね。

さて、マイナポイント第2弾で最大2万円!──というのが、多くの人にとって取得のきっかけとなるでしょう。9月30日という申請期限は12月末まで延長されましたが、12月までももあまり時間はありません。とにかく申込みだけはお忘れなく。

冒頭でも触れましたが、マイナンバーカードがあれば身分証明書、確定申告、コンビニ交付など、どれも現時点で一定の利便性はあります。特に運転免許証を持っていない方は、取得を真剣に検討してほしいです。一方、カードを既に持っている方は、さまざまな利便をドンドン享受しちゃいましょう!