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【オタク家を買う】注文住宅を建てる土地、どこをどうやって探したか
2022年8月19日 09:00
オタクこと白根雅彦(45)が注文住宅を作るための苦闘を記録していく連載です。順調に遅延中です。
注文住宅を建てるとなると、土地が必要だ。土地を持ってないなら、買わないといけない。買う土地が決まってないなら、探さないといけない。
そんなわけで、2021年1月ごろから注文住宅計画を開始した筆者も、まず最初に土地探しから開始した。眺望など立地に依存するコンセプトを持っていたので、そのコンセプトを実現する土地を探さないといけない。
注文住宅において、「土地を探さないといけない」というのはデメリットでもあるが、「土地を選ぶことができる」というメリットでもある。賃貸も分譲マンションも中古住宅も建売住宅も、いくら建物が気に入っても、立地由来の要素が気に食わない可能性はある。土地を探すのはかなり手間がかかるが、土地を探せる注文住宅なら、特定の立地でしかできない暮らしを実現できる(かもしれない)。
しかし注文住宅でも、理想に完全一致した土地に建てられるわけではない。結局のところ、「売地が理想にどれだけ近いか」という話になる。そして理想に少しでも近い売地を探すのは大変だ。とくに筆者のように、条件が厳しく、探すエリアが広いほど大変になる。
筆者の土地探しはやや特殊なのであまり参考にならないかも知れないが、今回は筆者がどうやって土地探しを進めたかについて解説する。
まずは自分の理想の暮らしを土地の条件に当てはめる
筆者の理想のマイホームのコンセプトは以下の通りである。
(1)大開口窓にカーテンをかけずに生活できるプライバシーと眺望を確保
(2)そこそこの広さの庭とリビングルームがシームレスに接続
(3)山手線主要駅から100分以内(週1くらいで上京しても苦にならない立地)
(4)総予算は最大8,000万円で家の広さは100m2(30坪)くらい
これを具体的な土地の条件に落とし込んでみよう。
まずプライバシーと眺望を確保しつつ、庭も作るとなると、都市部の住宅が密集するエリアでは難しい。普通に考えると、そこそこ郊外で、山林や海に面した土地、あるいは高台の土地ということになる。
郊外に行けば都市部よりも広めの土地が安く販売されているが、その一方で建ぺい率・容積率は低めなので、建物の総床面積が100m2(30坪)くらいでも、土地の面積は駐車場や庭も考えると165m2(50坪)、できれば300m2(100坪)くらい欲しい。
公共交通機関で山手線主要駅から100分圏となると、大雑把に都心から60kmくらいのイメージだ。これは乗り継ぎ、駅やバス停からの距離などの条件によって大きく変わり、新幹線を使ったり、特急駅の近所とかであればもっと遠くまでいけるが、とりあえず大雑把に60kmの範囲で探しつつ、都度Googleマップなどで調べることにする。
総予算の8,000万円から逆算すると、建物は坪単価100万円で総床面積30坪として3,000万円、外構などに最大1,000万円かかったとしても、土地には最大4,000万円かけられる。実際にはもっと安い土地でイイのだが、土地探しの時点では金額を多めにした方が候補が増えて検討の幅が広がる。
以上のことから、探すべき土地の条件は、以下のように要約できる。
- 山手線の中央あたりから60km以内(公共交通機関で100分以内)
- 山林や海に接したエリアか高台が多い起伏のあるエリア
- 面積50坪以上で4,000万円以下
どのエリアで土地を探すか?
筆者の場合、大雑把に東京から60km圏と対象範囲が広く、「山林や海に面した高台の土地」という特殊な条件も付いていたので、担当エリアが決まっている不動産屋やハウスメーカーに土地探しをお願いするのは難しいと判断し、自分で土地探しをすることにした。
では筆者がどう探していったかというと、行き当たりばったりで片っ端からチェックしていった。力技である。
具体的に言えば、まずGoogleマップなどの航空写真モードを使い、条件を満たす土地がありそうな、緑の多いエリアや起伏の多いエリア、海に近いエリアにあたりを付ける。良さそうなエリアを見つけたら、不動産情報サイトでそのエリアの住所で検索をかけ、どんな土地が販売されているかをチェックする。この繰り返しだ。
ここで参考までに、筆者の独断と偏見による東京近郊のエリアごとのざっくりレビューを勝手にお届けしよう。不動産素人の筆者による個人的感想だし、少ししか調べなかったエリアもあるので、情報としては参考にならないと思うが、「こんなポイントをチェックした」というところを見ていただければと思う。
多摩丘陵
まず東京近郊だと多摩丘陵は緑が多く起伏に富んでいるが、東京や横浜から近すぎて住宅地としての開発が進みきっているので、条件に合うような広い売地は少ないし、坪単価も高めだ。筆者の予算だと、もう少し都心部から離れた方が良い。
「生産緑地」という税優遇制度が2022年に期限切れとなるので、東京近郊で農地だった広い土地が宅地として販売される可能性はある……可能性はあるが、広い農地は大手デベロッパが買い取り、分割して相場通りに売るだろうから、個人が広めの土地を買える機会は少ないかも知れない。
三浦半島
東京から南に目を向けると、多摩丘陵の延長にある三浦半島は起伏に富んでいて高台や山林も多く、海も近い。また、市街としての歴史もあるため、交通も商業施設もそこそこ充実していて住みやすい。例えば逗子駅からは新宿駅も東京駅も60分くらいなので、逗子駅まで30分かかっても90分圏だ。しかし逗子や鎌倉あたりは住宅地として人気があり、密集していて土地も道路も狭く、地価はそこまで安くない。
三浦半島の横須賀以南は、鉄道も高速道路も東側に集中していて、半島西側の交通の便は良くない。また、東側も久里浜あたりから先は、東京から100分というのがギリギリになってくる。しかしそのあたりになると地価は安くなってきて、広い売地や海の見える売地、山付きの売地なんかも出てくる。交通利便性との兼ね合いになってくるが、物件を眺めていると楽しくもあり、悩ましくもあるエリアだ。
なお、三浦半島は傾斜が険しく、がけ崩れも多い地域で、建築に制限がかかるようながけ付きの土地や車道に接していない土地も多い。相模トラフに近く、断層も多く、1923年の関東地震の推定震源域(相模湾という説が多い)にも近いなど、災害リスクはそこそこありそうなエリアかもしれない。
関東山地
東京から西だと八王子以西、関東山地の東側も選択肢に入る。例えば相模湖駅は新宿駅から60分ほどなので、そこから40分以内ならば100分圏に入る。青梅や飯能あたりも鉄道で1時間くらいなので同様だ。山林も高台も多いので、眺望やプライバシーを確保しやすい。しかし山間部の住宅地は規模が小さいので、商業施設や路線バスが少ないなど、ほかのエリアと比べて生活利便性のバランスが悪い場所も少なくない。
関東平野中央
埼玉など東京の北側は広く平野が広がり、古くから住宅地として開発されているので、交通網も商業施設も充実していて住環境は良好だが、高台や山林は多くない。眺望やプライバシーを確保できる土地は少ないので、正直言うと筆者はほとんどチェックしていない。
千葉北部
東京の東側、千葉県北東部あたりは、山を切り開いたりして開発分譲された、いわゆる「ニュータウン」が多く、その売地も多い。しかし千葉県は湾岸北エリアを離れると、鉄道や高速道路、公共施設、商業施設は少なくなり、生活利便性が低い売地も少なくない。価格だけを見て物件を選ぶのは注意が必要なエリアだ。
千葉県に限らず、衰退しつつあるニュータウンは少なくない。住宅街が形成されたあと、世代交代が進まずに人口が減り、バス路線や商業施設、公共施設が減り、生活利便性が落ちてさらに人口が減る。郊外の住宅地を探す場合、この負のスパイラルが起きているかどうかの見極めも重要となる。
アクアラインの千葉県側(更津市・袖ケ浦市・君津市)
衰退しつつあるニュータウンがある一方で、発展中のニュータウンもある。東京湾を横断するアクアラインの千葉県側、木更津市の金田エリアは、筆者がとくに注目したエリアで、ここには「かずさアクアシティ」として区画整理事業が完了したばかりの、ピカピカのニュータウン1年生がある。
この金田エリアにある木更津金田バスターミナルは、高速バスで東京駅に40分程度、高速バスの路線も本数も多いなど、特異的に交通の便が良い。近隣の三井アウトレットパークやコストコが徒歩圏内となる売地もある。ただし、利便性の高さから注目度が上がっているせいか、この1年ほどで地価相場が急上昇しているエリアでもある。
金田エリアを始めとする木更津市・袖ケ浦市の海沿いは、海抜が低く、山林や高台がほとんどない平野が広がっていて、眺望やプライバシーは確保しづらい。眺望とプライバシーをもとめて内陸に入ると、交通網や商業施設が減り、生活利便性が下がっていく。ここも筆者的にバランスが難しいエリアだ。
眺望とプライバシーとなると、海に面した土地は魅力的だが、東京近辺だと海沿いはほとんど工業地帯で、個人所有できそうな海に面した土地となると、西は三浦半島の南端から西、東は木更津市以南となる。しかし海に面して住宅が建てられるような土地は、非常に希少かつ高価だ。
筆者はこんな感じで各エリアの特徴をおさえ、地図を眺めながら「今日はこのエリアのこのあたり」と決め、不動産情報サイトで行き当たりばったりに土地探しをしていった。
めぼしい物件を見つけたら、まずは具体的な場所を特定
探すエリアを決めたら、不動産情報サイトでエリアと価格、広さの条件を設定し、売地を探す。「アットホーム」とか「ライフルホームズ」とか「スーモ」とか、そのあたりだ。たいていの物件は複数の不動産情報サイトに掲載されているので、どれか自分にとって使いやすいサイトを見るだけでも良い。
地図上に不動産の位置を表示できると土地探しが捗る。その場合、画面が大きなパソコンだけでなく、iPadなどのタブレットがあると便利だ。自分の持ってる機材と相性の良いサイトやアプリ、サービスを使おう。
たまに特定の業者でしか販売情報を扱っていない物件というのもある。筆者も詳しくないが、専任媒介とかそういう形式だ。そうしたケースも想定し、エリアを決めたら、そのエリアを得意とするローカル色の強い不動産屋もチェックするのも良い。クセが強く面白い売地が出ていたりする。
有望そうな売地を見つけたら、その土地が実際にどこにあるか特定する。物件やサイトによっては、細かい場所が表示されることもあるが、「X丁目」くらいの粗い情報しか掲載していないこともある。その場合も、図面や写真、接道などの情報から具体的な場所を特定する。
場所の特定は、そこそこ難しいかも知れないが、慣れればできるし、やるしかない。位置特定ができないと、いちいち不動産会社に問い合わせして場所を聞き出さないと詳細を調べられないので、手間が大幅に増えてしまうのだ。
接道と土地形状、インフラ、周辺環境などもチェック
有望そうな売地を見つけたら、エリアや価格、広さ以外にもさまざまな情報を精査し、総合的に判断する必要がある。
まず基本となるのは、都市計画上の区分や用途地域、建ぺい率・容積率といった行政上の情報だ。住宅建設に制限があるような、市街化区域以外の土地も売られているので、注意が必要だ。
次に重要なのは、土地の形状や方角、接道といった敷地情報だ。ただ、どういった敷地がベストなのかは、人によって異なる。土地探しと並行して建築の知識も身につけ、どのような家を建てたいか、たっぷりイメージしておくと、敷地図を見た瞬間に、「こういう家が建つな」と想像できるようになる。そのくらいになっておくと、土地選びの精度も速度も向上する。
例えば筆者の場合、大開口窓にカーテンを掛けずに暮らしたいので、眺望とプライバシーが確保できる海や山林、高台があり、その方角の間口が広い土地が良い。日本の不動産の常識である「南向きが良い」という考え方とは違って、個人的には開けた方角はどちらかというと北向きが良い。というのも、南向きの大開口窓は、カーテンを開けておくと夏は暑い・冬は直射日光が低い角度から入り込んでまぶしいという欠点があるからだ(建物の軒を伸ばすなどでフォローはできる)。
あとはプライバシーが確保できて静かな環境が良いので、一般的に嫌われがちな、道の奥の土地や旗竿地の方が個人的には好みだ。防犯にコストが必要になることがあるが、静かで人目が気にならない立地が良い。
どのような暮らしをしたいかによって理想の土地の条件は変わってくる。一般的な常識は参考にはなるが、それにとらわれず、個々の土地の個性と向き合うべき、というのが筆者の考え方だ。
あと郊外に土地を買うとなると、インフラの有無や土地の整備状況もチェックが必要だ。下水未整備で浄化槽が必要な地域は少なくない。土地によってはインフラ整備や造成にコストがかかり、住めるようにするには都市部の土地と大差ないコストが必要になった、というパターンもあり得る。
このほかにも周辺環境も重要なチェックポイントだ。近隣にスーパーやコンビニなど商業施設があるかとか、学校や病院などの公共施設があるかとか、騒音や悪臭を発する施設がないかとかだ。チェックすべきポイントは、ここでは説明しきれないほど多い。住みやすさにダイレクトに関わるポイントなので、自分の生活パターンをベースに、可能な限り検証したいところだ。
ただ、例えば騒音や悪臭は季節や時間帯によって発生したりしなかったりするので、土地契約前の短期間で周辺環境を完璧に調べきるのはほぼ不可能だ。また、そもそも家を建てた後に騒音や悪臭を発する施設が建設される可能性だってある。周辺の土地の行政による区分や来歴、将来の開発計画などもチェックしておくにこしたことはないが、それでも完璧にチェックするのは難しいだろう。
あとはこんなことを言うと、「田舎を舐めんじゃねぇ」と言われそうだが、筆者としては「スーパーやコンビニ、駅かバス停が徒歩圏にない場所」は避けた。車が必須の生活を覚悟している(そういう暮らしをしたいと思っている)が、車が使えなくなったときに詰むような生活は、半世紀近く都市生活に慣れた身体が受け付けない可能性があるからだ。
まぁ前述したように、そこそこの規模の住宅街も衰退するとバス路線が減ったり、商業施設が撤退したりするので、20年後どうなるか、というのは予測が難しいところであるのだけど……
土地探しは時間と根気の要る作業だけど割り切りも大切
筆者は、「60km圏内で有望そうなエリアを選ぶ」「そのエリア内で条件に合う物件探し」「条件に合う売地を見つけたら詳細の評価」というような段階を何回も繰り返しつつ土地探しを進めた。
土地探しの中で3回、条件を満たす売地を見つけ、不動産会社に連絡を取って現地を見たり詳細を調べたりした。そのうち2回はほかの人に買われてしまって筆者は買えなかったが、3回目を購入することができた形だ。土地探しを開始してから土地の契約まで、約1年かかっている。
1年かかって土地を買ったが、時間をかければもっと良い土地が見つかったのでは、という思いは消えない。ほかのエリアをほかの条件、ほかの方法で探せば良かったのでは、とも思ってしまう。しかし土地探しは巡り合わせだ。時間をかけすぎると、良い土地を買い逃すということもある。割り切りは大切だ。
もっとも、筆者が買ったのは、筆者が土地探しを開始した2021年1月以降、2021年夏頃に開発されて分譲された土地なので、時間をかけたおかげで巡り会えた土地でもあるのだが。
で、筆者がどのような土地を買ったかというと、上掲の写真ような土地である。周辺の住宅は加工させてもらっているのでちょっとわかりにくいかもしれないが、2方向が最大8mくらいの高低差のある高台角地なので、そこそこの眺望とプライバシーが確保できそうなのである。
細かいエリアは個人情報でもあるので伏せるが、山手線の某主要駅から公共交通+徒歩で約60分と、当初の想定よりもやや近い場所となった。住宅地の中で、スーパーもコンビニも公共交通も徒歩10分以内だ。土地の広さは平地部で約300m2(このほか法面が約600m2)、価格は約2,000万円なので、法面を含まない坪単価は20万円くらい。最大予算よりだいぶ安く済んだ。法面付き、道路の奥で間口狭め、土地形状は極端に細長いなど、一般的には多数のマイナス評価ポイントを持つ土地だったが、高台角地が気に入った次第だ。
筆者の場合、土地を契約する前にハウスメーカーに「この土地どうっすか」と相談を持ち込み、建築上の制限の確認や建築プラン作成をお願いした。数社が出してくれたプランを見て、「えぇ家建つやん」となった時点で、土地とハウスメーカーを契約、という流れだった。
ちなみに8月上旬の筆者の計画進行状況はというと、ハウスメーカーとの打ち合わせが大詰めで、上掲の写真にある高台からの眺望に対し、広く大開口窓を並べた家を計画中だ。次回以降はハウスメーカーの選び方などを解説していこうと思うが、筆者の家の図面や仕様も決まりつつあるので、可能ならそのあたりを例に挙げつつ、ハウスメーカーの違いなどを解説していきたい。