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参議院選挙、遠隔地から「不在者投票」を試した
2022年7月5日 08:20
7月10日に投開票が行なわれる参議院議員選挙。ただ今回筆者は、一身上の都合で参院選公示前の6月上旬から実家の香川県に滞在しており、そのままでは投票できない状況となっていた。
そこで、以前より試したいと思っていた、遠隔地から投票できる「不在者投票」を利用してみることにした。
不在者投票は、遠隔地から投票できる制度
日本の選挙制度では、投票日前に投票できる制度が複数用意されている。それは、「期日前投票」、「不在者投票」、「在外選挙制度」の3種類だ。
このうち、最も有名で、実際に多くの人が利用しているのが、期日前投票だろう。投票日当日に仕事や旅行などの予定があるという人に対して、投票日前に投票が行なえる。通常投票日は日曜日に設定されることが多いこともあり、選挙のたびに多くの人が期日前投票を利用しているようだ。
また、在外選挙制度は、仕事や留学などで海外に住んでいる人向けの投票制度で、滞在している国の在外公館や郵送などで投票が可能となっている。
ところで、期日前投票は、投票日に用事がある人にとって便利な制度だが、自分の住民票が登録された「名簿登録地」の市区町村が用意している期日前投票所でしか行なえない。つまり、選挙期間中の全ての期間、名簿登録地にいない人は利用できないのだ。
今回筆者は、参院選公示前から投票日も含めて名簿登録地ではない香川県に滞在していることもあって、期日前投票が行なえない状況だった。そういった人が投票できる制度が不在者投票だ。
不在者投票制度を利用すれば、名簿登録地の選挙管理委員会から滞在地に投票用紙などが郵送され、それを利用して名簿登録地以外の滞在場所で投票できる。この他、指定病院等での投票や、郵便等を利用した郵送による投票も可能となっている。
総務省のホームページに、これら3種類の制度について詳しく紹介されているので、そちらもぜひ参考にしてみてもらいたい。
不在者投票は最低1週間の余裕を持って申請を
不在者投票は、選挙期間中に名簿登録地以外に滞在している人にとって便利な制度だが、利用するには結構面倒な手続きが必要となる。
不在者投票を利用する場合、はじめに住民票を登録している市区町村の選挙管理委員会に、手続きの方法を問い合わせる必要がある。筆者の場合、名簿登録地である東京都新宿区のホームページに詳しい手続き方法が記載されており、そちらを参考にした。
新宿区で不在者投票を利用する場合は、不在者投票用の「宣誓書兼請求書」に、氏名、生年月日、住所、投票用紙送付先、連絡先電話番号、不在者投票を行なう理由などを記載し、新宿区選挙管理委員会あてに郵送して申請するか、マイナンバーカードを利用してオンライン申請できる。
今回は、残念ながらマイナンバーカードが手元になかったこともあり、宣誓書兼請求書を郵送して申請を行なうことにした。
まず、新宿区のホームページに掲載されていた宣誓書兼請求書をダウンロードして、プリント。そして、必要事項を記入し、新宿区選挙管理委員会あてに郵送。すると、後日投票用紙など不在者投票に必要となる書類が滞在場所に郵送されるわけだ。
では、必要書類が届くまでにどれぐらいの日数がかかるのか? 今回筆者が宣誓書兼請求書を郵送したのが6月27日。そして、不在者投票に必要となる書類などが届いたのは7月1日だった。申請して4日後に届いたわけだ。これが、マイナンバーカードを利用したオンライン申請なら、もう少し短期間で届いた可能性もあるが、どちらにしても投票に必要となる書類は郵送されることになるため、2~3日はかかると思われる。
不在者投票が行なえるのは、投票日前日まで。そのため、最低でも投票日前日から1週間ほど前など、ある程度余裕を持って申請する必要がある。
不在者投票証明書は“開封せず”投票場所に持っていく
新宿区の選挙管理委員会から届いた不在者投票用書類には、不在者投票に関する注意事項などを記載した用紙と、参議院東京都選挙区議員選挙の候補者氏名等一覧表、参議院比例代表議員選挙の政党名・参議院名簿登載者一覧表、そして、投票用紙や封筒などが封印された小封筒「不在者投票証明書」が同封されていた。
ここで気を付けなければならないのは、同封されていた不在者投票証明書は、実際に不在者投票を行なう投票所に、 開封せずに持っていく 必要がある、という点だ。もし事前に開封してしまうと、その不在者投票証明書は無効となり、不在者投票ができなくなってしまうため、この点は要注意だ。
また、不在者投票は、滞在場所の自治体が用意している期日前投票所全てで行なえるわけではなく、各自治体の選挙管理委員会など特定の場所のみ、という点にも注意が必要だ。
筆者が滞在している香川県 高松市の場合は、高松市役所内の選挙管理委員会などで行なうことになる。不在者投票が可能な場所は、滞在している自治体によって変わるため、各自治体の選挙管理委員会に問い合わせるといいだろう。
合わせて、不在者投票を行なう場所には、自分の選挙区の候補者氏名等一覧表などは用意されない。すでに投票する候補者や政党名が決まっているのならともかく、基本的には届いた書類一式を持って行くべきだろう。
高松市役所内の選挙管理委員会で不在者投票完了
というわけで、届いた不在者投票用紙を一式持って、7月3日に高松市役所内の選挙管理委員会へ出向いた。現地では、通常の期日前投票の投票場所とは異なる場所に案内された。
そして、持ってきた不在者投票用紙の一式を係員に手渡すとともに、身分証明書(今回は運転免許証を利用)を提示。すると、係員が不在者投票証明書の小封筒を開封し、中に封入されていた選挙区議員選挙用と比例代表議員選挙用の投票用紙を手渡してくれた。あとは、投票用紙に候補者や政党名を記入して投票することになるが、ここから先も結構面倒だ。
実際の投票用紙は封筒の中に入っているが、その封筒は2重になっており、まず1つめの封筒から中の内封筒を取り出し、内封筒の中に入っている投票用紙を取り出す必要がある。投票用紙を取り出したら、通常の投票同様に、候補者氏名や政党名などを記入する。記入後は、通常なら投票箱に投入するが、不在者投票では再度封筒に戻して封をする必要がある。まず、記入した投票用紙を内封筒の中に入れて封をする。続いて、その内封筒をもう外封筒に入れ、外封筒も封をする。最後に、外封筒の表に記名欄があるので、自分の氏名を記入する。以上が一連の作業となる。
この作業、選挙区議員選挙と比例代表議員選挙の双方で行なうわけだ。通常の投票と比べてはるかに厳重で、作業自体も結構面倒に感じたが、誰に投票したのかわからないように、また不正もないようにするために必要なことだと理解できるので、まあしかたのない部分だろう。
面倒ではあるが「投票」できるありがたさ
今回、参議院選挙を不在者投票で投票したが、申請から投票まで結構面倒ではあったものの、遠隔地でも問題なく投票できるのはありがたいと感じた。筆者はこれまで、国政選挙に関しては選挙権を得てから現在まで皆勤賞だったこともあって、当然今回も投票すると考えていた。突発的な事情で実家に長期滞在せざるを得なくなったが、不在者投票制度によって、無事投票できて良かった。
私以外にも、住民票のあるところとは異なる場所に滞在していて、選挙に行きたくても行けない、という人がいるかもしれない。今回の参議院選挙には間に合わないかもしれないが、機会があれば、不在者投票制度を試してみてもらいたい。そして、せっかくの権利を無駄にすることなく、票を投じてもらいたいと思う。