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新Squareスタンドと“コロナ後”の店舗ニーズ。磁気ストライプはもういらない

Squareスタンドの第2世代。iPadを装着するディスプレイ側の側面にカードリーダーが内蔵された

Squareが、iPadを使ったmPOSレジ「Squareスタンド」の第2世代製品を発表した。iPadを挿入するディスプレイ部にカードリーダーを内蔵して使い勝手を向上させた製品で、米国で2013年に第1世代が登場して以来の新製品となる。Squareスタンドの第2世代に関して、Square ハードウェア プロダクト マーケティング責任者のローラ・ジョーンズ氏に話を聞いた。

Squareスタンドは、iPadを固定するスタンドで、底面に回転トレーを内蔵しているため、iPadでレジ入力をして、画面を回転させて客側に内容を確認してもらって決済をする、という一連の作業が行なえるスタンド。価格は29,980円。

第1世代では、ケーブルで接続するなどしたカードリーダーを別途用意し、決済自体はリーダーにクレジットカードを差し込んでいた。米国でこの第1世代が発売されたのが2013年。発売以降、「マーケットによくフィットしていて、事業者も気に入ってくれた」(ジョーンズ氏)とのことで、ロングセラー製品となった。実は同社自身は発売直後から「第2世代の議論を始めていた」(同)という。

Squareスタンドの第1世代。右側にあるリーダーが別途必要だった。ディスプレイ部はリーダーがない分、第1世代の方がコンパクトだが、リーダー部を追加しても大型化は最小限で、「デザインはうまくいったと自負している」とジョーンズ氏

その議論の中から生まれたのがオールインワンタイプの「Square Register」(日本未発売)。Squareスタンド利用者からのフィードバックを継続的に受け付けて新製品の検討も続けてきたが、その評価が高く、Squareの製品ラインナップに継続して残したいということから、全く新しい製品としてSquare Registerを開発したという。

こちらはSquare Register。SoFiスタジアムに導入されるなど、こちらも米国では人気のようだ

「12日の発表まで、(第1世代)Squareスタンドの需要は高かった」とジョーンズ氏は話す。それだけニーズの高いSquareスタンドの第2世代として、新製品では新たな機能を搭載した。

磁気ストライプはもういらない

それがリーダーの内蔵で、これまでは外部接続していたSquareリーダーをスタンド内に内蔵したことで、レジ周りがスッキリするデザインとなった。特徴なのは、第1世代ではスタンドに内蔵されていた磁気カードのリーダーが廃止されたことだ。

これまではスタンド下部に搭載されていたリーダーがなくなったため、デザイン的な自由度が増してよりシンプルな外観になったという効果もあるが、新たに内蔵されたリーダーがタッチ決済とICカードの挿入しか対応しないため、そのままだと磁気カードに対応できない形だ。

新型は、磁気カードリーダーが廃止されたことでよりスッキリしたデザインになった
第1世代は下部に磁気カードリーダーがあって、スタンド部分はやや大きめのサイズになっていた

とはいえ、決済時に店員がカード番号を入力することで磁気カードに対応することは可能だ。日本だと、一部のプリペイドカードなどで磁気カードのみの場合があるが、こうした場合は直接番号入力で対処できる。

ジョーンズ氏は、海外でも磁気カードの利用は多くなく、一部のギフトカードなどで使われているものの、磁気非対応が問題になることはないそうだ。もともと、クレジットカードのIC化は国際的な流れで、日本でも改正割賦販売法によって、店舗側にはICカード対応リーダーの設置が義務づけられている。磁気ストライプは安全性が低く、現状はクレジットカードで使われることはまずないため、Squareの判断も間違いではないだろう。

Squareによれば、'21年の同社統合型決済端末を利用したキャッシュレス決済の取引のうち、98%がタッチ決済またはICチップ付きのカードを差し込む決済だったという。

磁気カードリーダーは搭載していないが、内蔵のリーダーはクレジットカードのICとクレジットカードのタッチ決済だけでなく、FeliCaをサポートして交通系電子マネーやiD・QUICPayが利用できる。

SuicaなどFeliCaにも対応している

FeliCaへの対応は、すでに同社のSquareリーダーでも実現しており、Squareスタンドの内蔵リーダーでのFeliCa対応は難しくなかったとジョーンズ氏は言う。そのこともあって、独自決済の対応もしつつ、世界同時発表を実現した。

なお、日本以外の独自決済だと、カナダのInterac Debit、オーストラリアのeftposにもそれぞれで対応している。ただし、FeliCaのように異なる決済手段をカバーしているのは日本だけのようだ。

日本では、コード決済のシェアが増加しており、コロナ禍における規制が解除されると、中国人観光客の増加も期待される。そのため、Squareのコード決済対応も期待されるところだが、現時点でジョーンズ氏は、「検討はしているが、何らかの公表できることがあるわけではない」と慎重な見方。同社が提供する欧米を中心とした8カ国の中ではコード決済は特殊なため、対応自体は難しいのかもしれないが、今後日本からのニーズが強まれば、FeliCaのような対応もありえるかもしれない。

新しくなったSquare スタンド、登場

ハードウェアだけではないエコシステムの優位点

Squareスタンドの第1世代は、米国やカナダでは2013年登場で買い替え需要も期待できるが、日本では2019年登場であり、他の欧州でも英国が2018年、フランスが2021年9月、スペインでは同社の参入自体が2022年1月のため今回の第2世代が初登場と、第1世代からあまり時間が経っていない国が多い。

同社が参入した国とその時期。米国でのサービス開始が2010年で、日本は比較的早く2013年から。最新はスペインで今年1月の参入だ

欧州3カ国(アイルランド・仏・スペイン)で参入が2021年以降だったことを踏まえても、同社が参入する世界8カ国では第1世代の発売時期にはばらつきがあった。これに対して今回の第2世代は8カ国での発表となったが、この同時発表を「最優先課題とした」とジョーンズ氏。ここ数年の課題として取り組んでいたそうで、むしろ「同時発表をしない方が間違っている」(同)という考え方で進めてきたそうだ。

それは、魅力的なハードウェアが顧客獲得に繋がっているからだと言い、特に参入が21年以降の欧州3カ国では重要な位置づけの製品と言えるだろう。

こうしたiPadなどのタブレットを使ったmPOSサービスは、日本や海外でも複数のサービスが登場している。そうしたサービスに対するSquareスタンドの優位点について、ジョーンズ氏はハードウェアに加えて「様々なツールを提供するエコシステム」だと話す。

Squareでは、決済端末とPOSシステム、決済サービスだけでなく、スタッフ管理や顧客管理、Eコマースなどのサービスも提供。国内ではまだ提供されていないが、給与管理なども用意している。

周辺機器としてもキャッシャーやレシートプリンター、バーコードスキャナーも接続でき、スマートフォンを使った店員側のオーダー、キッチンプリンターだけでなく、モバイルオーダーとの連携も可能。こうしたエコシステムをジョーンズ氏はアピール。

ジョーンズ氏は、コロナ禍で非接触化に加え、オンライン化やモバイルオーダーといった複数のチャネルを活用する店舗が増加していると指摘。こうした店舗の動きが、Squareのエコシステム採用の追い風になっていると見ており、そのタイミングで登場するSquareスタンド(第2世代)の拡大にも期待する。

米国では、個人経営の小規模店舗から中規模、大規模のチェーン店まで幅広い業種業態での利用が進むSquare。日本ではまだ中小店舗が中心だが、新たなSquareスタンドのリリースに加えて、アフターコロナに向けた店舗の新たな取り組みも見据えて、さらなる顧客の拡大を目指す考えだ。