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空き巣対策と近所の交流の復活。スマートロック&ドアベルが効果絶大【実家見える化】
2022年2月16日 08:20
ある時ふと感じる親の老い。「離れて暮らす親の安全と健康をどう守ったらいいのか……」。そんな重たい悩みの解決策のひとつが「実家スマートホーム化」です。3回連載の3回目は、スマートドアベルなど家の入口の問題解決について紹介します。
2021年夏、Googleから新製品が発売されました。外出先からでも玄関の来訪者にスマホで応対できるスマートドアベル「Google Nest Doorbell」(23,900円)です。
手頃な価格になってきたスマートロックとあわせ、玄関の“スマート化”に今、関心が寄せられています。高齢者宅やその見守りを担う家族にとっても、強力なサポートとなる製品です。
風水において、玄関とは運気アップの要となる場所なのだそう。実際、居住空間の内と外の接点となる玄関からは、良いものも悪いものも入ってきます。そこをどうコントロールするかが、実家の遠隔見守りにおいても鍵になります。
今回はスマートドアベルとスマートロックの活用法や導入メリットについて紹介します。
第1回:なぜ電話に出ない? 高齢親の見守りにネットワークカメラ
第2回:「OK グーグル」が高齢母の生活を変える 家電スマート化で快適に
第3回:空き巣対策と近所の交流の復活。スマートロック&ドアベルが効果絶大
チャイムがなっても玄関まで辿り着けない高齢者の憂鬱
現在母がひとりで暮らす実家は築40年の一戸建て。リビングから玄関までは廊下で、途中のキッチンに来客の顔を映し出すモニターが設置されています。
私なら玄関チャイム後7秒でモニターを確認し、「ちょっとお待ちください」と玄関まで出ていってもトータル15秒程。しかし、脚が弱った母の場合、まずリビングでソファから立ち上がるだけで数十秒かかってしまいます。そして転ばないよう慎重に廊下の手すりをつたい歩きして玄関に辿り着いた時には、留守かと思った来客が去ってしまっていることも。
近所の人が来た時には、待たせちゃいかんと気が急いて、盛大な転倒をしたこともありました。
その結果、玄関チャイムがなっても「居留守」を使うことが増えてしまいました。「こんな情けない姿を見せたくない」とも言いますが、結果、母を心配し様子を見に来てくれた人が対面できず帰る羽目にもなっています。近隣に兄弟親戚もいない母にとってそうした友人は貴重な存在で、その縁まで切れてしまったら本当に孤立してしまいます。
また、日中寝ている時間が長くなったことで、来客対応はさらに難しくなりました。私が母のためにネット注文した商品の配達も不在で戻され、地区自治会の回覧板が実家で止まってしまうこともありました。
「屋根瓦がずれてますよ」 法外な料金を取る業者も来訪
一方、玄関にやってくるのは必ずしも善良な人ばかりとは限りません。高齢化した地域には、悪質なセールスや詐欺まがいのリフォーム会社の営業も横行しています。
私が帰省するのは月数回程度ですが、たまたま実家にいる時だけでも怪しさ満点の飛び込み営業が何度もやってきます。そして「近くで工事がありその挨拶に」「たまたま通りかかったら見えてしまって気になり」など、親切を装っては存在しない屋根瓦の浮きを指摘してきます。
母もリフォーム詐欺が多発していることは理解していますが、何分にも判断力が低下しているため、「台風で雨漏りした時、誰も頼る人がいなかったら困りますよね?」など誘導されると簡単に「そうね、困るわ」と言ってしまうでしょう。「無料点検しましょうか?」「ここに名前だけ書いてください」「あ、あと印鑑も」なんてテキパキ言われたら、素直に名前と住所を書き、押印してしまうかもしれません。
クーリングオフ期間内に私が契約取消できればいいのですが、一週間もせず母の中で一連の記憶が消えてしまう可能性も少なくありません。
Wi-Fi接続のスマートドアベルなら遠隔で来客応対可能
そんな実家の来客対応の課題を解決してくれたのがスマートドアベルです。「Google Nest Doorbell」は23,900円と比較的高価な部類ですが、他にもWi-Fiでインターネット接続しスマホアプリで来客応対できるドアベルが各社から発売されており、安いものなら1万円以下でも購入できます。
スマートドアベルなら、こんな使い方ができます。
来客時、スマホアプリで来客の顔を確認できる
- リビングでも寝室でも、その場で誰が来たのかをチェックできる
- 玄関まで出て行かなくてもいい用事なら、スマホで応対(飛び込み営業など)
どんな来客があったのか後から録画映像で確認できる
- 地区自治会の人の来訪など私のフォローが必要ないかどうか事後確認
- ベルを鳴らさず玄関前で建物内や庭の様子をうかがう怪しい人影も記録
スマートドアベルを導入することで、「ドアベル専用モニターを見に行かなくても」「寝室のベッド上からでも」「外出中や入院中でも」「離れて暮らす家族でも」、スマホの専用アプリで玄関先の来客の顔を確認し、会話による応対ができるようになります。
従来の製品は、玄関のドアベル本体と家の中の映像確認用モニター両方の設置が必要となり、その配線を電気工事士などに委託するケースも多かったのですが、スマートドアベルは、電池式で玄関の外に強力両面テープで貼り付けるだけというものが多く、配線工事は不要。特別な工具も必要なく、作業は数分で完了します。
使い方は専用のスマホアプリをインストールし、Wi-Fiなど初期設定をするだけ。初期設定ではほかに、チャイム音や玄関前の動体検知を行なう範囲、録画映像の保管場所などを変更できます。
来客がチャイムを鳴らすと、室内に設置した専用ベルが鳴ると同時に、アプリをインストールしたスマホに通知が届き、来客応対ができるようになります。
ドアベル専用モニターのある場所まで行かなくても、来客の顔を確認できるのは非常に便利で、浴室や寝室からでも応対できます。家族がそれぞれ自分のスマホにアプリを入れておけば、手が空いている人が居場所に関わらず来客対応できます。
実家遠隔見守り用途でのメリットはさらに大きく、来客があれば離れて暮らす私のスマホにもアプリ通知がくるので、母がリハビリで不在の時や寝ている時なら私が応対できます。近所の人であれば用件を聞いたり回覧板を次の家にもっていってもらうようお願いできるし、宅配業者なら置き配にしてもらえます。
後述するスマートロックを最近導入したことで、馴染みのスタッフなら、遠隔開錠して玄関内に荷物を置いてもらうこともできるようになりました。
動体検知で怪しい人影もチェック 防犯効果も大
ドアベルには動体検知機能もついており、玄関前に人が現れると録画を開始し、その通知もアプリに届きます。玄関チャイムを鳴らさず、ただ表札を確認し玄関周辺や中の様子をうかがっているだけの怪しい人影もしっかり録画できます。
高齢者の一人暮らし宅は狙われやすく、私の母のように歩行困難だったり、会話の中で認知症の傾向をうかがわせる点があれば、悪意ある人にとっては格好のターゲットにもなります。
しかし、ドアベルで親以外の人が出て応対すれば、同居家族がいるかもしくは頻繁に身内が来ている家なのだろうと警戒されるでしょう。不運にも空き巣被害にあった場合でも、ドアベルが自動録画した直近の映像が捜査のひとつの材料にもなります。
いざという時、スマートロックの遠隔開錠で安否確認・レスキュー
実家では、スマートドアベルに加え、玄関扉の開閉を担う「スマートロック」も導入しました。
遠隔見守り体制はネットワークカメラやセンサーで構築できますが、問題は緊急事態発生時。近隣に住んでいるなら急いで駆けつけることもできますが、私は実家まで片道最低でも3時間半かかります。万が一脳梗塞だったら、命取りになりかねない時間です。
また、ベッドから転倒してひとりで立てなくなっているだけの場合などは、わずか10分ほど誰かが手助けしてくれれば、それで何とかなる場合もあります。
近所の人や知人、あるいは介護事業者や便利屋にサポートを依頼をすることもできるのですが、問題は「玄関のカギ」。私は週一で訪ねてくれるヘルパーの事務所にカギを預けていますが、夜間や土日は対応が難しく、緊急時にすぐ人を手配&派遣できるとも限りません。
そして高齢者が一人で暮らす家のカギは、預けられる側の心理的負担も小さくはなく、預かってもらうのは難しいのです。結果、実家の玄関のカギを開けて中に入れる人が他にいないという理由で、私が緊急帰省せざるをえないことが何度もありました。
そこで導入したのがスマートロック「セサミ4」。既存の鍵に後付けで貼り付けるだけで「インターネット経由での開閉」が可能になる製品です。価格は9,800円ですが、直販サイトではもう少し安くなっているようです。
本体とスマホ間はBluetooth通信ですが、別売りのWi-Fiモジュールを組み合わせると、インターネット経由で遠隔からでも鍵の開け閉めが可能になります。カギが閉まっているかどうかの確認もスマホアプリ上でできるので、親が閉め忘れていないかどうかのチェックもできます。
既存の鍵の形状がどんなものであっても対応できるよう、高さ調整のアダプタも同梱されています。今までのように手動でカギの開け閉めもできるので、親の使い勝手は何も変わりません。
スマートロック内蔵のドアを取り付けるという選択肢もありますが、その場合ドア代金に加え施工手数料もかかり、20万円は超えてしまうでしょう。そう考えると、1万円以下の後付けスマートロックで遠隔開錠できるようにできるのは非常にリーズナブルですし、自分が遠方から駆けつけて開錠しなくても安否確認や手助けしてくれる人を家の中に導きいれることができるのは、いざという時に非常に助かります。
遠隔開錠が役立つのは緊急時だけではありません。買い物にいけない母は、食料調達を生協の宅配に頼っていますが、母が応対できない時には、一時的に遠隔開錠して玄関の中に荷物を入れてもらえれば母親も楽ですし、雨の日や暑い日に冷凍食料品がある場合でも安心です。
また、通所リハビリやショートステイの迎えの人が来た時、母が身支度や荷造りに手間取っているようなら、本人の許可を得て迎えの人に入ってもらい、荷物の運び出しや誘導を手助けしてもらえればお互いにスムーズで安全です。
長期留守の実家を空き巣に狙われにくくする
親が一人暮らしの場合、入院や施設入居で長期にわたって無人となることもあるでしょう。カーテン閉めっ放しの家は犯罪者にロックオンされやすくなるとも聞きます。それなら開けておけばいいのかというと、夜も灯りがつかず無人状態なのがばればれになってしまいます。
そこで導入したのが「SwitchBot カーテン」という製品です。既存のカーテンレールに挿入するだけで毎日繰り返される“カーテン開閉”作業ががらりと変わります。
カーテンの開け閉めをスマホアプリで操作できるようになり、スマートスピーカーと連携すれば「OK Google カーテンを開けて」と声だけで開け閉めできます。「少し開けて」「半分開けて」なんてことも音声で指示でき、実の娘のように面倒くさそうな顔をしないので、母も毎日愛用しています。
もちろん遠隔操作も可能なので、親が長期不在の間は適当な時間に開け閉めしたり、自動化設定してもいいでしょう。日の出・日の入り時間に自動で開け閉めする設定もありますし、「OK Google おはよう」など毎日使っているコマンドがあるのなら、それに「実家のカーテンを開閉する」アクションを追加してもいいでしょう。
カーテンだけではなく、天井照明だって遠隔操作できます。もし二階の部屋が普段使われていないのなら、たまに点灯することで遠くで暮らす家族が帰ってきていると思わせることもできます。
「スマートホーム化しても、どのくらいの期間使うかわからないし」と導入をためらう方もいると思いますが、親が施設入所するなどして長期空き家になった後でも、まだまだ活用方法はあるはずです。
長期不在の空き家では、家屋の劣化を防ぐため定期的な「換気」が欠かせません。地元の便利屋さんなどを使う場合、スマートロックがあればカギを預けっぱなしにしなくても作業時のみ開錠して入ってもらえるし、ネットワークカメラがあれば作業風景も確認できてより安心です。
アプリ来客応対の便利さは予想以上。近所や親友人との交流も実現
今回スマートドアベルとスマートロックを導入・利用してみましたが、この便利さは想像以上でした。
今なら賃貸物件や古い一戸建ての玄関であっても、製品後付けで最先端IoTマンションと同じようなシステムを簡単に構築できます。カギを忘れ、別の家族が帰宅するまで中に入れなくなるトラブルもなくなるので、子供がいる家でも導入メリットは大きいでしょう。
スマートドアベルを付けたことで、それまで接点がなかった母の知人や近所の人との交流も始まりました。
離れて暮らす高齢の親の見守りとサポートを、身内だけで完遂するのはとても難しいことです。ケアマネージャーや介護事業者、そして親の知人友人や近所の人の手助けも、時に必要です。
「何かあれば、あなたより早く駆けつけることができる」
「だから遠慮しないで電話をして」
そう言ってくれたのは、以前母が日本語を教えていた日系ブラジル人の女性でした。頻繁に様子を見に来てくれ、庭で倒れていた母を助けてくれたこともあります。
命にかかわる事態があれば遠慮せず彼女に助けを求めたいと思いますし、そのためにもスマートロックは不可欠です。
実家スマートホームで解決できる課題はある
「実家スマートホーム化体験」をテーマに各種製品とその活用法を紹介してきましたが、他にも高齢者見守りに役立つIT製品はいろいろあります。健康状態を遠隔で把握できる機器もあれば、緊急時にインターネット経由で家族のスマホに通知する首提げブザーもあります。
親の心身の状態や生活環境によって抱える課題は様々ですが、こうしたIT製品を組み合わせて自動化設定も活用することで解決できることはたくさんあるでしょう。開閉センサーを冷蔵庫や毎日服用する薬が入った棚に設置すれば、親がきちんと食事や服薬ができているかのチェックにもなります。
「離れて暮らす高齢の親の見守りとサポート」は重たく悩ましい問題で、中には介護離職に追い込まれる人もいます。でもその決断を下す前に、“実家スマートホーム化”もぜひ検討してみてください。本人の不便さ・不安も少し解消され、見守る家族の心理的・時間的負担も減るでしょう。
「ちゃんとしてよ」「また忘れちゃったの!?」と親の物忘れを責めることがなくなり、笑顔と余裕が生まれ、ポジティブなコミュニケーションが活発になれば、認知症の改善だってありえるかもしれません。
そして実家スマートホーム化は、親のだけのためならず。加齢により低下する人の能力をITでどう補うかという一連の試みは、将来訪れる自身の「老後」準備にもきっと役立つはずでしょう。
第1回:なぜ電話に出ない? 高齢親の見守りにネットワークカメラ
第2回:「OK グーグル」が高齢母の生活を変える 家電スマート化で快適に
第3回:空き巣対策と近所の交流の復活。スマートロック&ドアベルが効果絶大