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“オタバレ”しない通勤リュックはなぜ生まれた? ジャンボうちわ収納が大前提
2021年9月22日 08:20
仕事帰りに推しのライブに行きたいけど、通勤バッグからうちわがはみ出てしまう。そんな経験をしたことがある人は少なくないと思います。私もそうでした。
こうした悩みを解決するアイテムが、先日カバンメーカーのエースから発売されました。“お仕事”と“推しゴト”どちらにも使える通勤リュック「オタハピ」です。
ちなみに“推し”とは、アイドルやキャラクターなど応援する対象のことで、推しのイベントに行ったり友達と推しについて語ったり、推しに関係する活動のことを総じて“推し活”と呼びます。
オタハピは、パソコンやケーブル類を収納する「お仕事スペース」とは別に、うちわやペンライトを収納できる「推しゴトスペース」を設けているのが大きな特徴。またそれぞれのスペースは2気室構造で完全に分かれているため、チラ見えによるオタバレの心配もなくしています。
実際に製品を見ると細部までかなりこだわっており、これは実際に推しがいる人じゃないとたどり着けない境地だと感じました。一体どんな経緯で生まれたのか、「オタハピ」の開発に携わった、エース MD本部 商品企画部 デザイン課 小滝 朋子さんと、マーケティング本部 マーケティング部 PR・広報担当 森川 泉さんに話を伺いました。
推し活をオシャレに楽しむ人が増加
オタハピを展開しているのは、エースのレディースバッグブランド「ジュエルナローズ」。オタハピより先に手掛けた、通勤コーデに合わせやすい大容量のPCリュック「リモハピ」がオタハピの開発につながっています。
「コロナ禍でリモートワークが増えてきたけれど、パソコンやマウスなど荷物が多くなっても気分よく通勤できるように、とリモハピの企画が決まりました。ちょうどその頃ジュエルナローズのInstagramのフォロワーさんが増えてきたときで、フォロワーさんと一緒に理想のバッグを作ろう、とインスタで告知したりアンケートを取ったのです。そしたら意外と15.6インチのパソコンが入るリュックの需要があることがわかって、リモハピが生まれました」(小滝さん)
Instagramのストーリーズにあるアンケート機能などを使って、リモートワークで使うのにどんな機能があったらいいか、どんな色がいいかフォロワーから意見を集めて作られたのがリモハピ。そこからさらにInstagramのフォロワーを分析してわかったのが、推しがいて、推し活を楽しんでいる人が多いことだったそうです。
「製品の企画を考えるMD担当と、ジュエルナローズのフォロワーさんはどういう人が多いんだろうと見てみると、推し活をしている人が多いことがわかりました。MD担当も推しがいて、そういう企画もありだねというところから始まりました」(森川さん)
「今は推し活をオシャレに楽しんで、推しのグッズを可愛く撮ってSNSにアップする人も多いと聞きました。なのでリモハピの次は、通勤と推し活をうまく組み合わせられないか、というところからオタハピの企画につながりました」と、小滝さんは話してくれました。
ジャンボうちわが入るサイズにしたら15.6インチPCも入る
オタハピの機能ですが、ジャンボうちわやペンライト、チケットホルダーが入る専用ポケットなど、推し活をしている側からするととても具体的に感じました。これらはどうやって決まったのでしょうか。
「推し活をしている複数の社員から意見を集めました。皆さん推しがいることを公にしている訳ではく、『オタハピ』の企画があることを知った社員から、私も推しがいて……と声を掛けられ、そこからチームに誘うパターンが多かったです。推し活をしていることが既にわかっている人には、こちらから声を掛けることもありました。また社員同士でも、同じジャンルが好きということをお互いなんとなく知っていても、今までは声を掛けるのは恥ずかしかったそうですが、今回の企画で距離が近くなった人もいるみたいです」(小滝さん)
オタハピが社内のオタクコミュニケーションを活性化させたのですね。今回森川さんに取材の連絡をした際、「関わった人が多すぎて誰がインタビューに適任か迷っている」と聞いて驚きました。1人の熱意ある方が作ったと思ったので。
「MD担当もそうですし、担当営業も推し活をしてますね。インスタはまた別の人が担当していて、本当にたくさんの社員が関わりました」(森川さん)
ちなみにサイズに関しては、リモハピと同じく15.6インチのパソコンが入るサイズを、ということで決めたのでしょうか。
「いえ、ジャンボうちわが入るサイズにしたら、たまたまリモハピと一緒になりました。社員から意見を集めていると、一番収納したいのはコンサートで使うジャンボうちわということがわかり、ジャンボうちわがすっぽり入ることを大前提にして決めました。先にリモハピを発売して需要があることがわかっていたので、大きいサイズを出すことに抵抗がなかったのは良かったことですね」(小滝さん)
いわゆるジャンボうちわと呼ばれるもののサイズは、うちわ部分が295×285mm、持ち手が135mm。この持ち手が、A4ファイルが入る通勤バッグだとはみ出てしまいます。なおジャンボうちわはリュックだけでなく、付属のサブバッグにも収納可能。中が見えないよう、口が絞れる巾着型を採用しているのもオタハピならではです。
リュック内に“祭壇”。コンサートがなくてもグッズを持ち歩く
ほかにも缶バッジやアクリルスタンド(アクスタ)用のポケットなどは、どうやって決めていったのでしょうか。
「これらも社員の意見から必要なものをリストアップして決めていきました。缶バッジやアクスタは、コンサートがないときでも持ち歩いて身につけたいということを教えてもらいました。缶バッジとかは外に付けたい訳ではないという意見もあり、内側で楽しめるようにしています。部屋の一部を推しのグッズでかためる“祭壇”を作る人もいますが、オタハピではリュックの中でちょっとした祭壇が作れます」(以下、小滝さん)
缶バッジやアクスタは、取り外しできる両面クリアポケットに収納可能。ブロマイドも収納できるサイズで、ポケットごと外せば友達と鑑賞会などをするときに側に置いておけます。
またクリアポケットを取り付けるテープ部分には、キーホルダーやチャームを引っ掛けるといった使い方も。
「一見グッズとわからないようなチャームも今は出ているので、そういったものは外側のリングに取り付けられます。内側のテープでは1人で楽しみたいものを、と使い分けられます。内側はチャームをたくさん付けられるので、複数のチャームを付けてゆらゆらさせるのも可愛いですよ。ちなみにこのチャームを引っ掛けられるテープは、ミリタリー用のバッグからヒントを得ています。ミリタリー用もカラビナを引っ掛けられるテープがついていて、推し活のグッズもチャームなど引っ掛けるものが多いので応用しました」
ちなみにペンライトについては、最近はスティック型だけでなく変わった形のものも多く、そういったペンライトは収納できないかという意見を見かけました。
「ペンライトの形状については、社内でも同じように意見がありました。さまざまな形に対応するとなると難しいので、今回はスタンダードなスティック型を2本入れられるようにしています。ただ、リュック自体マチが結構あるので、大きいペンライトも入れやすいと思います」
オタバレを防ぐ配慮。会社ではグッズを見えないように
推しのグッズを内側で楽しめるようにしながら、チラ見えによるオタバレを防ぐ配慮もしっかりされています。お仕事スペースと推しゴトスペースは2気室構造で分かれているので、推しゴトスペースのファスナーを開けなければ中身が見えることはありません。
もし推しゴトスペースを人前で開ける必要があっても、開口部の開き具合はホックで調節可能。荷物を整理するときは大きく、中を見られたくないときは小さく開ける、ということができるのです。また上部には中を隠せるフラップがついています。
“オタバレ”という点については、やはり社内ではオタバレしたくないという意見が多かったのでしょうか。
「ありましたね。会社帰りに行くとか、午後休とって行くときはやっぱり荷物はなるべく隠したいという意見が多かったです。うちわも結構目立ちますからね」
後ろめたいことをしている訳ではないけど、この後の予定を知られたくなというのはありますよね。
デザインも、一見推し活グッズが入っているものとは思えませんでした。デザインに関しては、どういったことにこだわりましたか。
「デザインも推し活しているメンバーに聞いたら、なんにでも合わせやすいシンプルな形がいいです、ということだったので、それをベースに考えました。色もジュエルナローズではこういったニュアンスカラーが多いんですけど、推し活をしている人のインスタを見ていても、ラテ系女子と言われるようなモカっぽい色合いのファッションや持ち物が多くて、やっぱりそういう方が若い子は使いやすいのかなと。販売してから日が浅いですが、今のところ一番人気があるのはアイボリーですね」
パッと見ではうちわやペンライトが入っているとは思えないオタハピ。その開発には、推し活をする多くの人の意見が反映されていることがわかりました。ラインナップの追加など、第2弾、第3弾と続いていくことに期待したいです。