トピック
ホントの自動運転車まもなく登場。クルマの自動運転は今どうなっている?
2020年12月23日 08:20
今、自動車の進化といえば、自動運転が挙げられます。自動運転という言葉を聞いて真っ先に思い浮かぶのは、無人で機械が勝手に運転してくれることではないでしょうか。しかし、そこまで到達するにはまだまだ時間がかかります。
それなのに市販のクルマには「自動運転技術」や「自動ブレーキ」などといった技術が搭載され、あたかもクルマが勝手に運転してくれそうなワードが付いています。自動車業界で言う「自動運転」とはどんな定義づけがなされ、今はどうなっているのでしょうか?
最新のクルマはどんなことになっているのか、そして、街を歩いていても自動運転技術のクルマなら轢かれないですんでしまうのかをまとめてみました。
自動運転の“レベル”ってなに? レベル3からホントの自動運転
自動運転といっても、何もしないですべて勝手にやってくれる自動運転から、前方に障害物があったときに“自動”でブレーキをかけてくれるところまでさまざまです。どこまでやってくれるかで、国際的にレベルが1から5まで定義付けられています。
- レベル1:運転支援
- レベル2:高度な運転支援
- レベル3:特定条件下における自動運転
- レベル4:特定条件下における完全自動運転
- レベル5:完全自動運転
【自動運転車の定義】
自動で止まる自動ブレーキだけ付いていればレベル1となます。
レベル1には前のクルマにぶつからないように自動で速度を調整して付いていく「ACC(アクティブクルーズコントロール)」や、車線からはみ出さないようにハンドルの向きを手助けしてくれる「LKAS(レーンキープアシストシステム)」などがあり、すでに何年も前から市販車に搭載され、一般的になっています。
そして、レベル2はレベル1の組み合わせからもう少し高いレベルでの運転支援までが含まれます。ACCとLKASを組み合わせれば、車線がきちんと書かれて人間が歩いていない高速道路などでは、アクセルやブレーキ、ハンドル操作をしなくてもクルマは前に進んでいき、先行するクルマに合わせて速度を調整し、道路に合わせてハンドルがその方向に向こうとします。かなり自動運転に近い状態のことができますが、これも何年も前から市販車に搭載されています。
レベル2は追い越しのプロセスを自動化したり、合流を自動でこなすなど機能までも含まれます。ここまでくれば高速道路の運転はかなり自動ですんでしまうといっていいでしょう。
ちなみに、レベル2までは、レベル分けでは自動運転の範疇には入っていますが、自動車メーカーでは「自動運転」とは言わず、「ADAS(先進運転支援システム)」と呼んで区別し、いわゆる自動ブレーキについても「衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)」と呼んでいます。
そして、その上のレベル3になるところに大きな線引きがなされています。
レベル3でできることは高速道路等の一定条件下での自動運転が可能になりますが、高速道路の自動運転ならレベル2でも事実上実現しているように見え、高機能なレベル2とレベル3の違いはあまりないようにも思えます。
2と3の最大の違いは運転の主体が人間なのか、システムなのかの違いです。レベル2はあくまでシステムが運転の補助をしてくれるだけであって、運転の主体は人間です。事故の責任も人間です。クルマで走行中は、運転者は前を見ていないといけません。
ところが、レベル3になると、運転はシステムが主体になるため、高速道路などの特定条件下では人間のドライバーは前を見ていなくてもよいことになります。しかし「条件付き自動運転」となるため、システムの介入要求、つまりシステムが手に負えない事態になったときに運転者がすぐに対応することが求められます。
このため、ドライバーなしではクルマは走れませんし、無免許の人を乗せて走ることもできません。
さらにその上のレベル4では限定地域での無人運転や高速道路での完全自動運転となり、レベル5では、常にシステムが全ての運転を行なう「完全自動運転」になります。
いよいよレベル3の市販車が登場、法律や保険の対応も完了
一般的に想像する自動運転はレベル5かもしれませんが、システムが主体になるということから、レベル3からが本格的な自動運転と言えそうです。そして、レベル3の市販車ホンダ「レジェンド」が2020年度内に発売予定と2020年11月に発表されたばかりです。
レベル3の自動運転実現にあたっては、自動運転に関する技術の進化はもちろんですが、技術以外にも大事なことがあります。システムが運転するクルマというものがなかったことから、新たな法整備なども必要です。
例えば、自動運転ではクルマを運転するときに免許を持った人が前を見て運転しなければならないというルールをあてはめにくくなります。また、どんなクルマを自動運転車として認めるのかという基準や、万一、事故が起こったときの責任は、運転者なのか、システムなのか、という問題についてもルールを決めないとなりません。もし、この部分が不十分のまま自動運転車が街を走るようなことになれば、自動運転車に轢かれてしまった場合、誰が責任をとるのかわからなくなります。
レベル3の自動運転車が市販されるにあたっては、関連の法律が整備されました。事故の際の保険についても、損害保険大手の東京海上日動火災保険では、レベル3の自動運転車が事故を起こした場合は、事故を起こすと翌年の契約に影響する等級は、事故を起こしていないのと同様に据え置くことを発表しています。
レベル4や5の自動運転のクルマは市販はもちろん実用化もまだされていません。そのため、これらのクルマを動かすにあたり、免許はどうなるのか、事故の責任は、といった問題はこれから決まっていくことになります。
アイサイト? プロパイロット? 今、売ってるクルマの自動運転レベルは?
レベル3の市販車が2020年度内に発売されますが、それ以外のADASを装備したクルマはどの程度進化しているのでしょうか?
いわゆる「自動ブレーキ」として衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)が話題になったのは何年も前。今や、衝突被害を軽減するため自動的にブレーキをかける装備はほとんどのクルマに搭載され、2021年11月以降に発売される乗用車の新型車では搭載が義務化されます。AEBSだけでは自動運転レベルは1です。
そして、自動運転に近付くものとして、ACCやLKASも搭載がかなり進んでおり、軽自動車でも装備しているクルマが当たり前のようにあります。高速道路ではスイッチをオンしてハンドルに軽く手を添えていれば、アクセルもブレーキも踏まず、ハンドルも進む方向にアシストしてくれる状態になります。ここまでできると自動運転レベルは2になります。
AEBSなどADASをまとめた商品名(装備名)では「アイサイト」「プロパイロット」「トヨタセーフティセンス」「ホンダセンシング」などで、それぞれの各メーカーがわかりやすいネーミングで訴求していますが、搭載時期によってできることや性能が大きく変わってきますので、実際にどの機能が装備されるかは、個々に見て確認していかなければなりません。
自動ブレーキもACCもLKASも世代や車種で大きく違う
いわゆる自動ブレーキであるAEBSも自動運転技術のひとつであり、まだまだ進化発展中です。最近のものではカメラの画像処理を組み合わせ、自転車や歩行者まで対応としたものとなっており、カメラの進化により、歩行者などの検知を日光が当たらない夜間でも対応としたものまで進化しています。
ところが、初期のころのAEBSを見ると、クルマやモノだけをレーザーレーダーやミリ波レーダーで感知していた世代があります。それでは残念ながら人や自転車には反応できません。カメラで画像処理を追加したタイプでも、最新に比べ昔のものは処理性能が未熟だったり、識別能力できるものが少なかったりして、最新のものに比べれば安全面では不安を覚えるかもしれません。
そのほかの機能でも同様で、仕様や実際の性能は車種や世代で大きく異なります。ACCについても、先行車が停車した場合に停止までサポートしてくれればよいですが、一部では40km/h以下になると機能が解除される車種もあります。これでは、クルマ任せで減速した場合、40km/h以下まで自動で速度が落ちたあと、油断していると先行車に追突してしまいそうです。
そして、LKASは車線に沿ってハンドル操作を誘導してくれるものが多くなりましたが、ハンドルの補助は一切せず、車線をはみ出しそうになると警告音を発するだけという車種もあります。
ハンドルの誘導も最新のものは道路のカーブに沿ってなめらかに補助をしてくれるものが多くなりましたが、はみ出しそうなときだけ誘導してくれるタイプでは、ドライバーが道路に沿うようにハンドル操作をしていないと、カーブの進路がギザギザになってしまいます。
例えば、2020年10月に発表されたスバル「レヴォーグ」に搭載される「アイサイトX」では、ACCやLKASはもちろんサポートしていますが、今回の進化で自動車専用道路での渋滞時ではハンドルから手を放すことが可能になりました。
アイサイトXでは加減速や渋滞停止のあとの再発進もクルマが自動で行ない、料金所の減速まで自動です。車線変更もなめらかに行なう運転支援まで行なってくれます。さらに、ドライバーを監視するカメラもあり、居眠りや脇見などドライバーの異常を検知すれば警告した上で、減速・停止まで自動で行ないます。
最新のアイサイトXは最も進んだシステムのひとつですが、世代が古ければアイサイトでも機能は低くなります。新型車では最新の装備であることが多く、登場したばかりのコンパクトカーと、発売から時間のたった高級車では、最新コンパクトカーのほうが高機能のADASが搭載されていることもあります。
もし、自動ブレーキなどADASを重視してクルマを購入するような場合には、装備と内容をよく確認することが必要です。特に中古車の場合は、最新に比べて機能、性能の両面で劣っている可能性があるので、スペックを十分に確認する必要があるでしょう。
そして、ADASにはサポカー(安全運転サポート車)補助金も用意されています。65歳以上という条件がありますが、新車だけでなく中古車や後付装置まで対応、最大10万円が補助されます。
自動運転が普及すると、歩行者はひかれないのか?
次に、歩行者の立場から自動運転はどうなのでしょうか。自動運転のレベル1やレベル2といったクルマは爆発的に普及していますが、そういったクルマが多くなった今、歩行者は轢かれることはなく、安心して街を歩いていいのでしょうか。
システムが正常に動作している範囲では、歩行者もクルマに轢かれてしまう恐れも少なくなりますが、異常があればそうもいきません。また、怖いのは誤動作を恐れてシステムを無効化する設定をする人や、逆にシステムを過信して運転が荒くなってしまう人も一定数いるものです。
また、ADASが正常に動作するのは、クルマの改造をしていないことが前提です。例えば車高を高くしたり低くしたりする改造を勝手に行なったクルマでは、センサー類が正常に動作しないことがあります。また、根本的なこととして、新型車でADASの性能が優れていると話題になっても、装備しない仕様を選んでいることもあります。
ですので、高度なADASを装備したと思われる新型車が近づいてきたときでも、絶対轢かれないと安心してしまうのは、まだ早いといえるでしょう。
2021年は自動運転のスタートの年に
前述のように2020年度内、つまり2021年はじめにはホンダ・レジェンドにレベル3の自動運転仕様が追加されます。「市販」のクルマが出た以上、他社も追随するほか、これまで高機能なレベル2としていたクルマの装備が、レベル3に進化して再登場する可能性もあるかもしれません。
また、レベル3とはいえ自動運転車が市販されたことで、将来実現するレベル4やレベル5の自動運転車も現実味を帯びてくるでしょう。
クルマを持たない層にとっては、しばらくは関係のないことなのかもしれませんが、自動運転の技術やADASの性能を重視してクルマを買おうとしている場合には、機能の進化に目が離せない1年になりそうです。