トピック
ローソンが「マチの本屋さん」を目指す理由。書籍販売は伸長
2020年12月22日 08:00
ローソンは「マチの本屋さん」を目指して、書店併設型店舗をオープンするなど、本や雑誌に力を入れている。書店の数が年々減少していく中で、なぜローソンではこのような取り組みを行なうのか。ローソンは、その理由についてのメディア向け説明会を実施した。
雑誌→書籍の流れ。書店併設も強化
ローソンでは、小説や文庫、ビジネス書など幅広い種類の本を取りそろえるための書籍専用什器を導入する店舗の拡大や、書店併設店の展開、書籍・雑誌の陳列工夫をした販売実験などの取り組みを行なっている。
書籍専用什器の導入は2014年に開始し、’16年の導入は1,000店、’17年2,000店、’18年3,000店、’19年4,000店、’20年4,700店と拡大している。一方でかつてコンビニエンスストアでメインとしていた雑誌の売上は減ってきていることから、書籍専用什器導入などのため、雑誌ゴンドラは減らしている。
本の市場の動きを見てみると、1990年代後半に雑誌売り上げのピークを迎えたが、2016年には雑誌と書籍の売上高が40年ぶりに逆転したという。
書店併設店については、2014年に広島県で書店一体型店舗をオープン。’20年11月には、ローソン鴨居駅東店として文教堂との書店併設店をオープンした。そのほか書店と併設した店舗は、埼玉県・神奈川県・広島県で計23店展開している。
こういった取り組みから、ローソンにおける本の売上推移は、2020年の書籍カテゴリーの販売高が2019年よりも約2割伸長(’19年と’20年の5月~11月で比較)、併設店では4割伸長(同)したという。また本の購入とあわせて、本以外の商品も購入する人は約65%と多いことも特徴とする。
書籍売上の伸長について、特に学習用のドリルや自己学習に向けたビジネス書が好調だったとし、ローソンでは外出自粛や休校の影響もあるとみている。今後も新しい生活様式の中で、ビジネス書は動きがあるものと見込む。
マチの本屋を目指す理由。オンライン活用も
ローソンでの書籍売り上げが伸びる一方で、書店数は毎年減少しており、書店がゼロの市区町村が100を超えているという。ローソンがマチの本屋さんを目指す背景には、こういった書店減少という状況がある。
例えばローソン鴨居駅東店のエリアは、離れた場所にある大型テナントまで行かないと書店がない立地。ローソンと書店の入り口が別にあるが、書店側から入って本を選び、あわせてローソンの商品を購入することから、書店を目指して来店しているであろう人のほうが多いと想定している。
そのほか鴨居駅東店では、午前中にはシニア層、午後からは子供連れファミリー層が多く、また本・雑誌の販売構成比は約30%で、⼀般的なローソンの本・雑誌売上の20倍以上の売上高だという。なお鴨居駅東店は直営店ではなくローソンのフランチャイズ店で、本を文教堂から卸している形。
利用者からは「駅周辺に書店がなく助かる」「予約、取り置きができるのが有難い」「24時間いつでも書店に⾏けるのが嬉しい」といった声があるという。この「24時間」という点も一般的な書店にはない特徴で、『鬼滅の刃』最終23巻発売日には、早朝の納品にあわせたタイミングで買いに来る人がいたという事例も紹介した。
’21年6月には、埼玉県での書店併設店オープンを予定しており、以降も拡大に向けて全国的に商圏調査を実施している。
そのほかの取り組みとして講談社とともに全国約3,000店で、⽂庫本や緊急事態宣⾔時より伸⻑した図鑑、ナチュラルローソンを中心に⼥性向け実⽤書などの書籍セットを、⽴地・客層に応じて展開。
また書店が減少する一方でオンラインでの本の販売が拡大していることに着目し、売場に専⽤のQRコードを設置。売り場にはない本も含めてオンラインでも購入できるようにする、「リアル店舗」と「ネット販路」というOMO(Online Merges with Offline)を取り入れた取り組みを行なっている。
ほかにも、ローソンの書籍購入層の約6割が⼥性であることに着目し、3月から大崎の店舗において、⼥性にも⼿に取りやすい売場を目指した書籍・雑誌の陳列⼯夫の販売実験を開始。展開前と比較して書籍カテゴリーの売上が約3割伸⻑したという。
さらに、内容は同じながら表紙のみ猫に変更した、ローソン限定表紙版のビジネス書を販売。こういった取り組みを通して、猫を表紙にすると売れ行きが良いという傾向が見られたという。
今後は、’21年3月以降、書籍専⽤什器導入店舗を5,000店に拡大するとともに、従業員がメンテナンスをしやすいようオペレーションを変更。また商品をより目⽴たせる展開も推進する。
ローソンでは、本・雑誌へのニーズの拡大に向け、リアル店舗の強みを生かしたマチの本屋さんを目指すとともに、オンラインのニーズに応えていくために、リアル店舗とオンラインを活⽤した利便性構築も進める。