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キャッシュレス決済の基本(2)。クレジット/デビット/プリペイドカード
2018年12月27日 09:15
キャッシュレス決済とは、その名の通り現金(キャッシュ)を使わない支払いのこと。“現金を使わない店頭での支払い”といえるが、用語や背景事情などは複雑で、わかりにくい部分も多い。キャッシュレス決済の解説記事第2回は、キャッシュレス決済の基本となるクレジットカードやデビットカードと、その使い方を解説する。
【第1回】決済の手段
【第2回】クレジット/デビット/プリペイドカード
【第3回】電子マネーと国内外の非接触決済事情
【第4回】なにかと話題の「QR決済」
キャッシュレスの代表選手クレジットカード
まず、前提となるのが「プリペイド」と「ポストペイ」いう概念だ。これはそれぞれ、「先払い」、「後払い」のことだが、あらかじめ現金を入金しておき、その金額の範囲内で支払いを行なうのが先払い(プリペイド)だ。それに対して、購入時に消費者は支払いをせずに代行してもらい、後からその分の支払いを行なうのが後払い(ポストペイド)となる。
ポストペイドの代表格であり、キャッシュレス決済の代表選手でもあるのがクレジットカードだ。日本でも所有者は多く、使える場所も多い。もっと古いキャッシュレス決済だと小切手もあるが、さすがに主流とは言えないので、やはりクレジットカードがまず一番に上がるだろう。
米ダイナースクラブが設立されたのが1950年。VISAは1958年、MasterCard(の前身)は1966年と米国で相次いで設立したクレジットカード会社。VISAは自身で「世界最初のフィンテック企業ではないか」と語るが、現金を使わずに商品を購入できる決済サービスを長く各社とも提供してきている。
こうしたダイナースやVISA、MasterCard、そしてJCBやアメリカンエクスプレス、銀聯といったカードのブランドを「国際ブランド」という。国内外で決済情報をやりとりして、決済の仕組みを提供しているのが国際ブランドだ。クレジットカードの表面に各社のアイコンが印刷されているので区別がつく。
国際ブランドでは、特にVISAとMasterCardは自社でカードを発行することはしない。逆にアメリカンエクスプレスやJCBは自社でもカード発行を行なっている。こうした国際ブランド自身が発行するカードを「プロパーカード」とも言うが、プロパーカードを発行しているブランドでも、他社がそのブランドが付与されたカードを発行できる。
このカードを発行する事業を行なうのが「イシュア」だ。VISAやMasterCardは自社で発行しないため、クレジットカードは全てイシュアが発行したものとなる。JCBなどは国際ブランドであり、イシュアでもある。イシュアは、例えば三井住友カード、オリエントコーポレーション(オリコ)などといった企業がそれにあたり、カード会員の獲得やユーザーが使った代金を徴収する役割も担う。
クレジットカード発行会社であるイシュアはユーザーにとって身近だが、逆に店舗側にとって身近なのが「アクワイアラー」だ。これは加盟店管理業者といって、担当する国際ブランドのクレジットカードが使える店舗を開拓したり、開拓した店舗に対して支払いをするなどの業務を行なう。
海外では、イシュアは銀行、アクワイアラーは別の会社が行なうのが一般的だが、日本では銀行法によって銀行がクレジットカードを発行することができなかった。1982年の新銀行法の施行で銀行本体がクレジットカードを発行できるようになったが、それまでの経緯もあって、銀行子会社の発行が継続し、今に至っている。そのため、諸外国とやや状況が異なっているのが日本のクレジットカード事情だ。その辺りは決済ネットワークの独自性にも表れているが、いずれにしても、クレジットカードでは国際ブランド、イシュア、アクワイアラーの3者が全体を構成しており、ユーザーと加盟店の間の代金のやりとりを仲介している、という形になる。
クレジットカードの支払い方は、リアル店舗では3種類ある。磁気ストライプ、接触IC、非接触ICだ(連載:第1回参照)。磁気ストライプをリーダーでスワイプするやり方は日本では一般的だが、安全性が低いため、海外ではほとんど使えなくなっている。日本でも2019年夏からICが必須になるので、今後は、リーダーにIC部分を差し込む必要がある。
日本だと支払時にクレジットカードを店員に手渡すことも多いが、基本的にこのやり方もできなくなる。クレジットカードで支払うときは、利用者自らリーダーにクレジットカードを差し込み、PINパッドと呼ばれる数字キーで4ケタの番号(PIN)を打ち込む形になる(少額決済の場合、PINが省略されることもある)。
非接触ICは、カード自体をリーダーにタッチするだけで決済が行なえる仕組みだ。スマホでタッチするおサイフケータイやApple Payも同様の仕組みだが、日本は海外とやや仕組みが異なる。これは別の回で解説したい。
デビットカードとプリペイドカード
さて、こうしたクレジットカードの仕組みは、ほかのキャッシュレス決済でもほぼ踏襲されている。
例えば同じプラスチックカードを使う似たようなカード決済として、デビットカードとプリペイドカードがある。デビットカードは、銀行の預金口座と直結したカードで、決済を行なうと、その金額を口座から即時に引き落とすというのが特徴だ。
クレジットカードのように、いったんイシュアが決済を代行して翌月以降に口座から引き落とすのではなく、即時に現金が引き出されるため、利用者にとっては現金に近い使い方が可能になる。
こうした特徴から、発行主体は銀行になるのがデビットカードだが、問題は決済するためのシステム(決済ネットワーク)と使える店舗(加盟店)の開拓だった。これを解消しようと日本独自のシステムを構築しようとしたのがJ-Debitだ。
1999年に開始したJ-Debitは、対応する銀行のキャッシュカードがそのままデビットカードとして使えるという仕組みで、 国内の多くの金融機関が参加し、決済ネットワークとしては「CAFIS」を利用している。
仕組みとしては悪くはなかったが、国内独自の仕組みで新たな加盟店開拓が必要となり、さらに海外では使えなかったこと、金融機関によっては営業時間外では使えなかったこと、インターネットでの利用ができなかったことなど、致命的な欠点が多く、利用者の獲得には繋がらなかった。
その後、銀行がJ-Debit以外のデビットカードを発行するようになり、こちらは国際カードブランドを使うことで、クレジットカードが使える店舗なら同じように使える仕組みのサービスを提供している。
こうしたデビットカードは、クレジットカードとほとんど同じように使えて、即時に口座から引き落とされるようになって、使い勝手が向上した。決済ネットワークは各ブランドのものを使い、同ブランドの加盟店ならそのまま使えるので利便性が向上。もちろん、24時間使えるし、インターネットでの利用にも対応している。
プリペイドカードは、この銀行口座の代わりにあらかじめ入金したマネーを使って支払いを行なう。事前に入金した範囲でしか支払いできないため、使いすぎの心配がないほか、すでに現金がチャージされているので、カード自体は誰でも利用できるというメリットがある。
通常は、新たに現金をチャージすれば繰り返し使えるので、クレジットカードやデビットカードのように店舗で支払いに使える。国際ブランドを経由するので、加盟店はクレジットカードと同等だ。ただし、プリペイドカードは仕組み上、一部の加盟店で利用できない場合がある。使えないシーンはガソリンスタンドや高速道路の支払い、毎月の継続課金での支払いなどで、クレジットカードやデビットカードとは使える加盟店が異なる場合があるので注意が必要だ。
決済のやり方としては、磁気ストライプをスワイプする、オンラインではカード番号などを入力する、というやり方で、クレジットカードと変わらない。ただ、仕組み上、IC化は義務づけられていないため、ICチップ非搭載のプリペイドカードも多い。
クレジットカードがキャッシュレス決済の基本であるというのは、決済ネットワーク、加盟店開拓・管理などの各種業務が共通している点だ。こうした仕組みは、ほかの決済手段でも踏襲されている。次回以降は、こうしたクレジットカード以外決済手段を取り上げたい。
【第1回】決済の手段
【第2回】クレジット/デビット/プリペイドカード
【第3回】電子マネーと国内外の非接触決済事情
【第4回】なにかと話題の「QR決済」