小寺信良のくらしDX
第18回
睡眠時無呼吸症候群を早期発見したい 「Sleep Doc」を試した
2024年8月23日 08:20
皆さんは近ごろ、十分寝たつもりなのに疲れが取れない、昼間突然眠くなるといった症状に悩まされたことはないだろうか。日常的にそうであれば、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)という疾患を疑った方がいいかもしれない。
これは睡眠時に、本人が気がつかないうちに無呼吸状態が繰り返されるというものだ。筆者は10年以上前、40代のときに同級生がこの疾患にかかり治療していたので、かなり早くから知っていたほうだと思うが、潜在的には日本人のおよそ2,200万人がこの疾患に該当する可能性があると言われている。かく言う筆者も自覚症状はないが、最近妻から寝ているときに息が止まっている時があると指摘されたことがあった。
自分がこれに該当するのか、治療が必要なレベルなのかというのは、自覚症状がないことから、本人が気付けない事が多い。また診断には専門医にかかって睡眠検査する必要がある事から、なかなか大がかりな話になる。
そうした懸念がある方は、「Sleep Doc」を試してみてはどうだろうか。運営会社のサプリムは、日本最大級の医療従事者専用情報サイト m3.com を運営するエムスリーと、ソニーグループが2022年に立ち上げた合弁会社だ。ソニーのセンシング技術を使って、簡単なデバイスを装着するだけで睡眠中の無呼吸状態をチェックできるサービスだ。
昨年10月から、主に運輸・運送事業者向けB2Bサービスとして展開していたが、今年7月からは一般の個人でも測定を申し込めるようになった。そんなわけで筆者も早速申し込み、実際に測定してみた。
知識がなくても簡単に測定できる
測定の方法には、3タイプある。腰に付けるセンサー「amue link」を使うコース、腕時計型デバイス「mSafety」を使うコース、自分のApple Watchを使うコースだ。
B2Bサービスの時には腕時計型デバイスしかなかったそうだが、個人向けサービスの展開にあたり、腰に付けるセンサーとApple Wachアプリを新規開発した。価格は7,980円で、Apple Watchコースのみ2,800円だ。筆者はせっかくなので、一般化へ向けて新規開発された「amue link」を申し込んだ。
数日後に到着したパッケージには、「amue link」と充電器、ケーブル、説明書が収められている。返却するときはこの箱が丸ごとゆうパックとしてポスト投函できるように作られている。
測定前にamue linkを十分充電しておき、寝る時に腰にクリップで挟んで一晩そのまま寝る。翌朝、取り外して窓際など電波が届きやすいところで再度充電。2日目の夜も同様に測定する。するとamue linkが勝手にキャリア通信して、データをサーバにアップロードする。したがって家庭のWi-Fiに繋いだりといった手間はない。
測定はこれだけだ。数日後にSleep Docから、データの分析結果がメールで届く。測定結果は「中リスク」で、受診をお勧めしますという判定であった。
amue link内には加速度・ジャイロセンサーが内蔵されており、寝返りなどの情報を省いて呼吸のサイクルを抽出する。そのサイクルが停止したり、あるいは呼吸動作が半分以下になった低呼吸状態を「呼吸イベント指数」としてカウントして、リスク判定をするという仕組みだ。10回未満は低リスク、10以上25未満は中リスク、25以上は高リスクに分類される。
医療機関にどう繋がるか
この診断結果を受けて、そのまま専門医にかかってもいいし、看護師の資格を持ったSleep DocサポートセンターとZoomで面談する事もできる。今回はせっかくなので、サポートセンターの方との面談を希望した。だいたい30分ぐらいで、データに関する質問や今後の治療の流れなど、気になることを相談できる。
睡眠時無呼吸症候群が起こる主な原因は、肥満、特に喉回りに脂肪が沈着して気道が狭くなっているところに、睡眠時に筋肉が弛緩することで気道を塞ぐというケースが多いという。そのほか扁桃腺の肥大や、先天的にアゴや気道に問題があるケースもあり、それによって治療法が変わってくるという。
筆者の場合は慢性的な鼻炎があり、寝ている間に口呼吸に変わっている事も多いことから、まずは耳鼻咽喉科からアプローチしたほうがいいのではないかという事であった。
睡眠中に呼吸が止まるということは、別の疾患とも関係する。無呼吸状態は体の筋肉がより弛緩するノンレム睡眠時に起こりやすいが、呼吸が止まる事で交感神経が危険を察知して覚醒しようとするので、どうしても睡眠が浅くなる。また血中酸素濃度が下がることで、心臓の拍動が急速に高くなり、高血圧症が徐々に悪化する可能性も指摘されている。
Sleep Docでは、「Sleep Docとはなんぞや」ということを承知している病院をリスト化しており、そこにかかることでスムーズに治療へ移行できるようになっている。元々Sleep Docのデバイスは医療機器ではないので、病院にかかればもう一度今度は専用医療機器で検査することになるが、すでにSleep Docでデータを取ってあれば、一般検査をパスして精密検査に進むケースもあるという。
現在リスト化された病院は、首都圏、名古屋、関西に集中しているが、それ以外の地域ではSleep Docの解析データを持ち込む事でスムーズに話が進むよう、データの巻末に医師向けの説明も記載されている。
病院に行く時間が取れないという方へ向けて、Sleep Docが提携しているオンラインクリニックによる診察も用意されている。これはWebで受信日時を予約し、専用アプリにクレジットカードや保険証情報を登録すると、予約時間に医師とビデオ通話で診察が受けられる。その後、医療用の検査機器が宅配便で配送され、家庭内で検査する。その結果に応じて、一度実際に虎ノ門か新橋のクリニックに通院する必要があるが、必要な治療が開始されるという仕組みだ。
虎ノ門や新橋に出向くことができない場合は、別の病院への紹介状を書いて貰うこともできるため、すぐに必要な治療が受けられる。
昨今のスマートウォッチでは、睡眠時の低呼吸が測定できたり、血中酸素濃度が測定できるものも多く存在する。だが専用機器に比べると、かなり甘めに測定されるようだ。筆者は普段からAmazfitというスマートウォッチで睡眠の質を計測しているが、普段の低呼吸回数は1時間に5回程度と測定されており、リスクがあるとは思っていなかった。
睡眠時無呼吸症候群である可能性は、50歳以上では男性で約20%、女性でも10%とされている。50歳以上の男性では5人に1人という事になるが、ほとんどの人に自覚症状がなことで放置されている例が多く、実際に治療している人はそれほど多くないというのがこの疾患の特徴であるという。
自覚症状がなくても、睡眠の質が悪いと感じたら、一度専用機器でチェックしてみるといいだろう。