いつモノコト
電気式でコンパクト ハリオのサイフォンコーヒーメーカーを買ってみた
2025年1月25日 09:15
家庭用のコーヒー器具は百花繚乱の時を迎えています。一昔前なら諦めていた、業務用が中心のサイフォンのコーヒーメーカーというジャンルにも、家庭向けのコンパクトな新製品が登場していました。2023年4月に発売されたHARIOの「Electric Coffee Syphon」(ECA-3-B)がそれで、アルコールランプなどの火を使わない、熱源がコンパクトな電気式ヒーターの製品です。サイフォンの老舗でもあるハリオが手がける、初心者でも始めやすいサイフォンコーヒーメーカーで、1回の抽出量は最大でカップ3杯分(100ml×3)、1~2人向けのサイズになっています。
ヨドバシカメラで購入し、価格は12,610円、10%のポイント還元分を差し引くと11,349円でした。Amazon.co.jpでも現在11,000円台で販売されています。
はじめに、サイフォンで淹れるコーヒーの特徴について触れておきます。サイフォンはその独特な仕組みにより、非常に“香り”の高いコーヒーを淹れられます。コーヒーの香りは、口に含んだ時に、温かい蒸気の塊として鼻腔を駆け上がっていくので、意識するとその存在が分かります。ハンドドリップなどでは技術を習得し丁寧に淹れないと香り高くはなりませんが、サイフォンなら難しいテクニックなしに、香り高いコーヒーを淹れられます。
電気式でコンパクト
ハリオの電気式サイフォンは、家庭での利用を主眼にしたコンパクトな350Wのヒーターを新たに開発し、抽出中に必要な熱源の管理を簡単にした製品です。ヒーターの上に置くガラスボール(コーヒーサーバーのような形ですが、サイフォンの仕組みに倣いガラスボールや下ボールと呼ばれます)も専用の形状で、一般的なサイフォンのようなボール形状ではないため、それをつかむスタンドや台座も不要になり、設置面積がかなりコンパクトになっています。
一方、サイフォンの仕組みやコーヒーの淹れ方は、従来のサイフォンとまったく同じです。ろ過器はネル(布)ではなくペーパーフィルターで、こちらも管理が簡単なタイプです。
ハリオはサイフォンの老舗ですが、意外にも熱源が電気式のサイフォンは今回が初めてだとか。業務用がメインとはいえ長年親しまれてきたサイフォンには、淹れ方のノウハウなどさまざまな知見が蓄積されていますから、初心者でもそれらを参考にすれば、大きな失敗なく淹れられます。現在ではYouTubeなどでプロが解説する動画がたくさん見つかるので、初心者でも始めやすく、心強い点ですね。
私はサイフォンで淹れるのは初めてでしたが、5~6回淹れたら、手順や動作にも慣れて、好みの味に近づけることができました。サイフォンは、コーヒー粉を淹れた上ボールにお湯が上がってきた後、ヘラを使って粉とお湯を混ぜる「攪拌」の作業が必要で、これが味を決める上でキモになっています。なお、抽出の“終わりのサイン”などは無いので、タイマーで抽出時間をちゃんと計る必要があります。
攪拌のタイミングや混ぜ方で、ボディ(≒重さや厚み、喉ごし)や酸味といったコーヒーの味のバランスが大きく変わります。お湯が上がってきた直後の第1攪拌を20秒などしっかりするとボディが強めになり、抽出時間の後半に行なう第2攪拌をしっかりすると酸味が強めに出るとされています。サイフォンの見た目の面白さはさておき、サイフォンが奥深いのはこの攪拌による味や仕上がりの操作で、自分好みの味に仕立てられる面白い部分でもあります。
一方で、サイフォンはお湯の量や温度、コーヒー粉の量、抽出時間も、計量・計測して毎回同じにできるため、攪拌のやり方だけ同じにしてしまえば、毎回安定した味で抽出が可能です。
冒頭で触れていますが、サイフォンで淹れたコーヒーは非常に香り高く仕上がります。高温で抽出することや、お湯が粉を通過していく透過式ではなく、お湯に粉が漬かる浸漬(しんし)式の抽出であることなどが理由とされていますが、その原理はともかく、私がかつてこだわりまくったハンドドリップでやっとたどり着いたレベルの香りの高さが、サイフォンだと簡単に手に入ることに改めて驚きました。
香りが高いコーヒーというのは、コーヒーを淹れる工程のさまざまな部分にこだわらないとなかなか実現しませんから、それを簡単に実現できるだけでもサイフォンには価値があると思えました。もちろん豆のグレードやコンディションにはある程度気を遣う必要はありますが、豆のポテンシャルを最大限に引き出し、まるでワンランク上の豆のようになる、そんな印象を抱きました。
ドトール「ブレンドコーヒー」の豆をサイフォンで淹れたら……
今回私は、サイフォンを導入するにあたってちょっとしたテーマを設けました。それはズバリ、ドトールの「ブレンドコーヒー」をサイフォンで“ブースト”し、「ものすごいドトールのブレンド」にするというものです。
筆者宅の近所にはドトールがあり、店で出されている「ブレンドコーヒー」に使われている豆が「マイルドブレンド」の名称で販売されています。現在の価格は200gで1,090円。カルディで最も安い「マイルドカルディ」や、スーパーで売られているUCCなどの豆より一回り高い価格帯ですが、特別に高級という訳でもない、程よい塩梅だと思います。ドトールのブレンドコーヒーは個人的にも親しんできた身近な味ですし、サンドイッチなど食事との相性も良く、好きなコーヒーです。
そんなドトールの「ブレンドコーヒー」に使われている豆をサイフォンで淹れるとどうなるのでしょうか。攪拌で味のバランスを崩さない調整は必要ですが、うまくいくと、サイフォンの特性により(あくまで主観ですが)1.5倍ぐらいに香りが高くなりつつ、お店の「ブレンドコーヒー」の味も再現された、上位版とでも言うべきコーヒーができました。身近な味でありつつ、香りが高くワンランク上の雰囲気も楽しめて、すぐにお気に入りになりました。
私は、10年ぐらい前にハンドドリップで淹れるコーヒーに傾倒していましたが、コロナ禍以降にテレワークが中心になって自宅での消費量が増えたため、“週一で淹れる究極の一杯”ではなく、“毎日淹れるそこそこの味をたくさん”という方針に転換、コーヒーメーカーでたくさん作るスタイルになっていました。
しかしながら、自分好みで淹れるこだわりの一杯が時折恋しくなるのも事実。サイフォンはそこそこのグレードの豆でも簡単にワンランク上の仕上がりにしてくれますし、香りの高さは文句なし。得られる結果のレベルが高いので、準備や後片付けの手間を差し引いても、サイフォンで淹れよう、サイフォンで淹れたコーヒーが飲みたい、という気分になります。
ハリオのこの製品は電気式ヒーターで管理の手間がなく、コンパクトで、普段は気軽に仕舞っておけます。サイフォンの仕組み自体は伝統的なもので、既存のノウハウをいろいろと試せます。私のようにサイフォンに挑戦する初心者にも最適ではないかと思います。