いつモノコト
ジャンプの演劇物語「アクタージュ」。主人公は役者志望の女子高生
2019年7月3日 08:30
コミックスを購入するきっかけは人それぞれあるだろう。筆者は、その物語が自分の好きな部類であることを確認してから購入することが多い。幸いなことに、近年は公式サービスで多めに試し読みできることが増えた。
とはいえ、レーベルごとにサービスが違ったり、冒頭から少ししか試し読みできず、購入の決め手に欠けることも多々ある。そこで、長めに試し読みできる作品の中から、筆者が独断で選んだ「アクタージュ act-age」を少し踏み込んだあらすじとともに紹介する。
アクタージュは、女優を目指す女子高生と映画監督の1本の映画を巡る物語。集英社の週刊少年ジャンプで連載中。原作はマツキタツヤ、作画は宇佐崎しろ。現在コミックス6巻まで発売中。最新7巻が7月4日に発売する。少年ジャンプ+で3話までコインの消費などもなく無料で読める。
あらすじ
「女優を目指す女子高生・夜凪は有名芸能事務所スターズのオーディションで天才的な芝居をするも不合格。それは彼女の危険な演技法に理由があった。」(少年ジャンプ+より引用)
主人公の夜凪 景(1巻表紙のキャラクター)が身に着けていたのは、役柄の感情と呼応する自分の過去を追体験するメソッド演技。両親がいない景は、幼い弟と妹を育てながら、自分の悲しみを紛らわせるために映画に没頭して習得していた。しかし、芝居の技術として落とし込めていない彼女のそれは、自身の感情を上書きして本来の自分を見失ってしまうような危険なものだった。
そんな景の才能に目を付けたのが、スターズのオーディションに審査員として参加していた映画監督の黒山墨字。自身が撮りたい1本の映画のために、景を自分の事務所に引き込み、役者としての育成を始める。
役者としての常識をまだ知らず、メソッド技法もやや暴走気味な景は、撮影や演劇など様々な現場で、役者や演出家、監督などを振り回す。そんな中でも、やり取りや経験を通して、少しずつ成長していく。
ちょっとズレた女子高生が周囲をかき乱しながら一流の役者を目指す
少年ジャンプで女子高生が主人公の演劇もの。演劇部ものかと思いきや舞台は芸能界。それでも少年マンガらしく、主人公は特殊な才能を持った原石で、主人公とは真逆の才能で活躍しているライバルのような存在(2巻表紙のキャラクター/百城千世子)も登場する。
景は、高校に通いながらバイトをして幼い弟と妹を育てているしっかり者、と思いきやバイトを度々クビになるような面も持つ。そして、才能は持ってはいるものの、芝居の知識はからっきし。登場人物の感情を再現できても制御不能。さらに感情を設定されていない一般人役(エキストラ)をうまくこなせず、極め付けには、時代劇の現場で少女を切りつける侍役に飛び蹴りをかます。
そんな周りの役者に迷惑ばかりかける状態から始まり、すれ違ったり、わかりあったり、あきらめて受け入れてもらえたり、景自身が時々つまずきながらも成長していく様子は読んでいて飽きが来ない。
作画もきれいで読みやすく、登場するキャラクターも個性や表情が豊かに描かれている。筆者にとっては、作中の世界に引き込まれて読み進める手が止まらず、毎回次の話を楽しみにしている作品だ。ぜひ一度読んでみてほしい。