いつモノコト
見た目だけじゃない万年筆の魅力「#3776 センチュリー」
2019年5月21日 08:15
筆者が普段使いしている筆記具は、ボールペンやシャープペンではなく万年筆。プライベートでは手帳と一緒に持ち歩き、仕事でも使っている。筆者が愛用しているプラチナ万年筆の「#3776 センチュリー」を通してその魅力を語ろう。
#3776 センチュリーは、1月に7年ぶりのリニューアルがあった。筆者が購入したのは4年ほど前なので、現在販売されている1つ前のモデルになる。現行モデルの価格は13,000円。
万年筆の魅力は、まず見た目が挙げられるが、ずっと使える筆記具であること、多種多様なインクが使えることにもあるだろう。
筆者が万年筆に興味を持ったきっかけはインクだ。文房具が好きで、よく文具店や書店の文具コーナーを覗いていて、あるとき色とりどりなインクが並べられているのが目に入り、興味を持った。
最初に購入した万年筆は「#3776 センチュリー」ではなく低価格帯のものなのだが、使い始めてその書きやすさに驚き、スラスラと書ける書き味に魅了された。そして、万年筆とインクが特集されたムックなどを読んでいくうちに気になる項目を見つけた。「1万円を超える高価格帯の万年筆は使い込むことでペン先が馴染んで自分だけの1本になる」という内容だ。
正しくはペン先が金製の万年筆のことで、金の柔らかさゆえに、持ち主の書き方の癖に合わせてペン先が変化していき、書きやすくなっていくというわけだ。故に万年筆は他人に貸してはいけないという。低価格帯のものはステンレス製が多いが、その硬い書き味が好みの人もおり、良し悪しの基準とは限らない。
「自分だけの1本」に惹かれ、その見た目への憧れもあり、ペン先が金ペン(14K)の「#3776 センチュリー」を購入。購入時の試し書きでは、ステンレスよりも紙にひっかからないな、といったようにしか感じなかったが、4年程経った今、手首に力を入れずにスラスラと心地よく書けるようになった。万年筆に慣れてしまった影響で、ボールペンでうまく文字が書けなくなってしまったのが若干の悩みだったりする。
各メーカーが1万円台のモデルを出している中で、プラチナ万年筆の#3776 センチュリーを選んだ理由は、ペン先や軸のデザインが気に入ったこともあるが、そのキャップにある。プラチナ万年筆独自の「スリップシール機構」を搭載しており、完全気密のキャップでインクの乾燥を防ぐのだ。
万年筆のペン先はインクが乾燥してしまうと、固まったインクが詰まって書けなくなってしまうので、書いていないときはこまめにキャップを閉める必要がある。しかし、一般的な万年筆はキャップをした状態でも数週間、数カ月放置してしまうとペン先が乾燥してしまう。それをスリップシール機構が防いでくれるというわけだ。
以前使っていた万年筆をよく放置して書けない状態にしてしまっていた筆者は、#3776 センチュリーを購入したわけだが、好みのデザインを選んだこともあって、ほぼ毎日使用している。週末に軽く洗う癖もついて、インク詰まり知らずになった。
つまり、スリップシール機構のメリットを享受していないことになるのだが、この機構がインク選びにおいて、選択肢を広げてくれることになった。
現在のインクの主流は染料インク。水溶性なので、乾燥によるインク詰まりを起こしてしまった際には、水洗いで大抵解決して扱いやすい一方で、日焼けに弱く色あせしやすい弱点がある。
筆者が使用しているインクは、東京都台東区蔵前にあるinkstand by kakimoriのオーダーインク。オリジナルの色のインクが作れるサービスで、深い赤色を作って購入した。既存のものでも根気よく探せば好みの1色が見つかるはずだが、そのあまりの種類の多さに、自分で作った方が早いと考えたのだ。
そして、inkstandのインクは主流の染料インクではなく、顔料インク。染料インクに比べて発色が鮮やかで、乾くと耐水性があり、日焼けによる色あせもしにくいという特徴がある。しかし、その耐水性ゆえに、乾燥によるインク詰まりを起こしてしまうと水では落とせず、専用の洗浄液を使ったり、最悪の場合、分解洗浄を頼む必要があるというデメリットを持っている。
そんな乾燥に一層注意が必要な顔料インクだが、乾燥を防ぐスリップシール機構を備えた#3776 センチュリーなら安心してその魅力を味わえるわけだ。もちろんキャップを開けたまま放置してしまったら意味がないので、顔料インクは万年筆の扱いに慣れてからがお勧め。
使う紙の種類によっても書きやすさやインクの色合いが違って見えたりと、こだわり始めるとキリがない万年筆。最近は1,000円台でもしっかりとした作りの製品が購入できる。ボールペンにはない書き味をぜひ体験して欲しい。