キャッシュレス百景
第2回
おサイフケータイ&Apple Payが必需品 by 小山安博
2018年11月22日 08:00
今、日本では国を挙げてのキャッシュレス化に取り組んでいる。現金は、それ自体を作るとき、輸送、銀行やATMでの振込、引き出し、支払い、レジ締め……などなど色んなシーンでコストがかかる。もちろん、それほど単純な話ではないが、そうした現金におけるコストを削減しようというのが、キャッシュレスの目的の一つだ。
日本では、クレジットカードは広く普及しているし、JR東日本のSuicaをはじめとした交通系やイオンのWAON、セブン&アイ・ホールディングスのnanacoといった電子マネーを使う人はすでに多いはずだ。
それに対して、あまり普及していないのがスマートフォンを使ったモバイル決済。おサイフケータイが始まって10年以上経ち、チェーン店を中心に多くの店や交通機関で使えるのに、あまり使っている人は多くない。
なぜ、と言われるといろいろ理由はあるのだろうが、ここではそれよりもモバイル決済の便利さを訴えたい。
財布は出したくない。“楽”こそモバイル決済の利点
スマートフォンの用途で手放せない機能は人それぞれだろうが、私の場合はモバイル決済が挙げられる。Androidではおサイフケータイ、iPhoneではApple Payは、毎日のように使う機能だ。
現金支払いだと、支払時にレジに表示された金額を見て、財布を取り出して、お金を数えて、店員に渡して、店員が数えるのを待ち、お釣りを取り出すのを待ち、お釣りとレシートを受け取って、それを財布にしまって、再び財布をしまい込む、という作業が発生する。おサイフケータイでもApple Payでも、値段を見て、利用するサービスを告げて、スマートフォンをリーダーにかざし、レシートを受け取るだけだ。
基本的に、コンビニ、電車はモバイル決済を利用する。フリーランスライターの私の場合、「勤務地」がないので毎日同じ場所に通うことがなく、取材で頻繁に色々な場所に移動するので定期券はないのだが、いちいち切符を買うことはしない。財布などからSuicaカードを取り出すより、スマートフォンをかざす方がはるかに簡単だ。スマートフォンアプリを見ればいくらの交通費だったかも分かるし、SuicaはWebから明細をダウンロードできるので、会計サービスにデータを取り込めば経費計算も楽ちん。
コンビニでは、NTTドコモのdカードとローソンの組み合わせで3%割り引きになるので、ローソンではドコモのAndroidスマートフォンに登録したdカードでiD支払いをしている。おサイフケータイの場合、dポイントカードを出さずに、タッチ決済をするだけでいいので楽だ。こうした割引きなどがない店なら、Apple Payに登録したANAカードを使ってマイルを貯めている。
食事も、基本的には電子マネー対応の店に行くので、財布を取り出すことはほとんどない。牛丼屋のように安くて早くて電子マネー対応の店は便利。次点でクレジットカード対応の店だが、頻繁に行く店でほぼ唯一の例外が喫茶店チェーンのルノアールだ。原稿を書くためによく利用するのだが、ここはルノアールEdyカードを発行していて、これを使うと飲食代が10%オフになる。この時ばかりは、財布からEdyカードを取り出して支払っている。
おサイフケータイもApple Payも、どちらも複数カードの登録をできないわけではないが、決済時の一手間がかかる。2台(以上)のスマートフォンを持ち歩いていることだし、支払時に使い分けているというわけだ。
セキュリティ的な問題はあるが、日本国内ではAndroidでのおサイフケータイの方が手間がかからない。Apple Payの場合は基本的にFace IDかTouch IDでの認証が必要なので、単にかざすだけのおサイフケータイの方が便利。
Apple Payが手放せないのは「海外での普及」
それでもApple Payが手放せないのは海外で使えるからだ。現在、Apple Payは国内版のiPhoneでも、FeliCaとNFCが両方使えるようになっており、日本ではFeliCa、海外ではNFCでのタッチ決済が可能になっている。
日本のクレジットカードでNFCによるタッチ決済に対応したものはあまり多くないが、私がよく行くような国では、たいていの店舗でクレジットカードに対応し、そのほとんどでNFCのタッチ決済に対応している。
そうした店ではApple Payも同じように使える場合がほとんど。海外でも財布を取り出さずに、手元のスマートフォンで支払えるのはとても便利なのだ。イギリス・ロンドンなどではバスや地下鉄もそのままApple Payで乗れる。クレジットカードでのタッチ決済だと1回の会計で使える金額に上限があるが、Apple Payだと上限がないので、海外で一般的な「クレジットカードでタッチ決済」より使いやすい。
Androidの場合、クレジットカード会社がMasterCardやVISAのタッチ決済サービスへのサポートを打ち切り始めていて、海外での利用が不便になってきている。Google Payへの移行かと思いきや、これはこれでまだまだ機能が不十分なので、当面は海外利用のためにもApple Payを維持する必要があるようだ。
「割り勘」も徐々にキャッシュレス
どうしても現金が必要になるシーンもある。
その最たるものが「割り勘会計」だ。飲み会などで全員から徴収したり、1人がクレジットカードで払ってその人に現金で払ったりと、この時ばかりは現金を使うことが多い。
欧州だと、決済時にスプリットを指定すると、決済端末で総額と人数を指定すれば自動的に均等割の額が出て、それぞれの人が順番にクレジットカードやモバイル決済でその額を支払う、ということもできて、わざわざ現金を使う必要がない。
日本だとそうはいかないので現金を使うのだが、最近は決済サービスが増えて、これを利用する例も増えている。幹事がLINE PayやKyash、PayPal.meといったサービスであらかじめ徴収していくパターンもあるし、会計時に1人が決済して、ほかの人が上記サービスでその人に支払う、という例もある。
これなら現金も必要ないし、ますます現金を使うシーンが減って嬉しい限り。難点は、各サービスに送金したマネーを銀行口座に振り込むなどの現金化に手数料がかかるという点だ。デビットカードで銀行口座と直結している場合はともかく、あくまで「電子マネー」でとどまってしまう。
LINE PayやKyashなどは物理カードも発行しているので、プリペイドカードとして通常の支払いに使えるが、銀行口座に集約できないというデメリットはある。じぶん銀行であれば「ケータイ番号振込」機能で似たようなことはできて銀行口座に簡単に送金できるが、これはじぶん銀行ユーザー同士でないと使えないので、なかなか利用者がいないのが残念なところ。
日本は、iD搭載のクレジットカードはそこそこで回っているが、WAONやSuicaといった電子マネーカードのタッチ決済が一般的だろう。複数枚のカードを使い分けるよりは、スマートフォンのおサイフケータイを使った方が文字通りスマートで早い。Apple Payだと、登録や機種変更がさらに楽だし、こうした点をGoogle Payも学んでくれれば、日本のモバイル決済事情はさらに良くなるに違いない。
あまりQRコード決済は使っていないが、対応店舗が増えて現金を使わなくて済むならば歓迎したいところではある。