ミニレビュー
財布に入るカード型AirTag? 「Chipolo CARD Spot」を試す
2023年3月4日 09:30
持ち物に取り付けて、その所在をiPhoneから検索できるAppleの「AirTag」は、2021年の登場から2年、いまやすっかりメジャーな存在だ。iPhoneユーザーの中には、万一の場合に備えて、身の回りのありとあらゆる持ち物にAirTagを取り付けている人も少なくないだろう。
もっともAirTagは本体に8mmもの厚みがあることから、財布など薄型のツールに収納しづらい欠点がある。しかし最近になってサードパーティ各社から登場しつつあるApple「探す」アプリ対応の互換デバイスの中には、カードサイズで財布への収納に適した薄型タイプも存在する。
今回はそのひとつ、Chipolo(チポロ)が販売しているApple「探す」アプリ対応カード型ファインダー「Chipolo CARD Spot」を購入、試用してみたので紹介する。Amazonでの購入価格は5,634円。
AirTagと同じ「探す」アプリで一元管理が可能
この「Chipolo CARD Spot」の最大の特徴は、AirTagと同じく、AppleのFind Myこと「探す」アプリを使っての検索に対応することだ。つまりAirTagブランドでこそないものの、AirTagと一元管理および検索ができる互換デバイスということになる。
こうした「探す」アプリ対応の互換製品は2022年中頃から、Appleのライセンスを受けた複数のサードパーティメーカーから発売されている。同社はAirTagに似た円形のモデルもラインナップしているが、このChipolo CARD Spotはカード型で、厚みもクレジットカードよりわずかに厚い程度だ。これならば財布に入れても膨らむことなくスマートに持ち歩ける。
セットアップの方法はどうだろうか、AirTagの場合は「探す」アプリを開いて「AirTagを追加」をクリックし、ペアリングを行なう仕組みになっている(あるいは近くに置いておくと自動検出される)。それに対して本製品は、同じメニューの中にある「その他の持ち物を追加」を選択してペアリングを行なう。自動検出には非対応だ。
ここを除けば、AirTagと導入の手間はまったく変わらず、ペアリングが完了すると、マップの現在位置にアイコンが表示される。このマップはAirTagと同じ画面で、ほかのAirTagと一元管理が可能だ。
また「手元から離れたときに通知」で、自宅などのスポットを指定している場合、それらがきちんと受け継がれるので、それらエリア設定を行なっていた場合も、改めて設定し直す必要がない。極めてシームレスだ。
「サウンドを再生」「紛失モード」といったAirTagの機能は、本製品も変わらず利用できる。サウンドについてはAirTagとは異なる独自のメロディだが、単に耳慣れないだけで、わかりにくいことはない。余談だが本製品をはじめとする「探す」アプリ対応の互換デバイスは、サードパーティメーカーごとにメロディが異なっている。
UWBによる「探す」は使えない
さて、そんな本製品を使うにあたり、ひとつだけ注意しておかなくてはいけないのは、AirTagにある2つの検索機能のうち、片方が省かれていることだ。
もともとAirTagには、2種類の検索機能が用意されている。ひとつはマップ上で位置を表示する機能で、これはiPhoneとすれ違った時に、Bluetoothを使って位置情報を発信する仕組みだ。センチ単位の精度はないが、世界中のどこであっても、誰かのiPhoneとすれ違いさえすれば最小限の電力消費で場所を特定することが可能だ。
もうひとつは、約10m程度の近距離で、AirTagまでの距離および進む方向をiPhoneの画面に表示してくれる機能だ。こちらはBluetoothではなくUWB(Ultra Wide Band)を使う仕組みで、極めて高精度、かつ障害物に影響されず、AirTagの正確な位置を探し当てられる。こちらは手元のiPhoneと直接通信する格好になる。
つまり、前者のBluetoothでおおまかな場所をマップ上で特定したあと、後者のUWBを使ってより正確な位置を探すというのが、AirTagの仕組みになるわけだが、今回の「Chipolo CARD Spot」はこれらのうち対応するのは前者のみで、UWBを使った後者の機能は非搭載だ。
そのため、本製品を紛失した場合に、自宅に置き忘れているのか、それとも外出先のどこかに落としたのかといった大雑把な場所の把握はAirTagと比べても何ら遜色なく使えるが、部屋の中で行方不明になってiPhone片手に探して回ったり、空港の手荷物受取所で本製品を入れたスーツケースが近づいてくるのを待ち構えるといった用途には不向きだ。
特に本製品は、財布やカードケースに入れるその形状を特徴とする製品である。もしこれがバッグなど体積が大きな品に取り付けているのならば、近寄った段階で目視で確認できるので問題にはなりにくいが、財布やカードケースは体積が小さいため、テーブルやソファの後ろに落下していたり、布団や脱ぎ捨てた衣類にくるまっていて目視では見えないことも考えられる。
こうした場合において、UWBで正確な置き場所を指し示す機能がないのは、本家のAirTagに比べるとどうしても不利だ。「サウンドを再生」を使ってリモートで音を鳴らすことはできるので、それが使えれば十分という人もいるだろうが、本製品のメロディは105dBと純正AirTagよりもかなり大きいこともあり、音を鳴らしにくい場面では使いづらい。
ちなみにUWB非搭載というこの仕様は本製品だけでなく、筆者の知る限り、サードパーティ製のApple「探す」アプリ対応互換デバイスに共通する特徴のようだ。本製品を始めとする一連の製品が「AirTag互換機」といった表現を使わず、Appleの「探す」アプリで利用可能という回りくどい表現を使っているのは、これが理由だと考えられる。
AirTagとの機能差を許容できれば待望の製品
以上のように、AirTagと同じアプリで一元管理でき、同じマップ上で表示できるのがこれら「探す」対応デバイスの最大の利点で、その一方でUWB非対応で近距離の検索機能がないのが欠点ということになる。また多くの互換デバイスはAirTagよりも安価なところ、本製品は実売5千円台と、やや高額なのもマイナスだ。
もっともこうした近距離の検索ができなくとも、これまでAirTagの取り付けが難しかった財布やカードケースを一元管理できるというだけで、十分に使えると感じる人もいるだろう(筆者もそうだ)。先日アンカーからも類似の製品が発売されたが、今後カード型の製品が増えてくるのかもしれない。
また、サードパーティ製「探す」対応デバイスの中には位置情報の発信がAirTagと比べて明らかに遅い製品もあるが、Chipolo CARD Spotは、試してみた限りではそうした問題が見られないのもプラスだ。
またサードパーティ製「探す」対応デバイスは本家AirTagと比べて明らかに構造が簡素で耐久性に劣っていたり、防水機能が省かれている製品もあるが、本製品は頑丈でボディが反っていることもなく、IPX5の防水機能もしっかり備えている。UWB非対応であることさえ許容できるのであれば、iPhoneで持ち物の管理をしているユーザーにとって、まさしく待望の製品と言ってよいだろう。