ミニレビュー

斬新なビデオバー? 「AnkerWork B600 Video Bar」

「AnkerWork B600 Video Bar」を試す

テレビの前に簡単に設置して、リッチで迫力のあるサウンドが手軽に得られる「サウンドバー」は一般的になってきた。それと同じように、パソコン用の「ビデオバー」というものも、もしかするとこれからのスタンダードになるのかもしれない。Ankerがビジネス向け製品ブランドとして展開している「AnkerWork」から登場した「AnkerWork B600 Video Bar」(29,990円)。Webカメラに止まらない多彩な機能をもつこのデバイスを試してみた。

3-Wayで使える4 in 1デバイス

パッケージ内容。本体、USBケーブル、ACアダプターなど

「AnkerWork B600 Video Bar」は、一言で言えば、Webカメラとライトとマイクとスピーカーを一体化したパソコン向けデバイスだ。4 in 1というやつである。その分サイズは一般的な単体Webカメラより2回りほど大きく、幅広で、まさしく小型のサウンドバー的なサイズ感。たしかに「ビデオバー」と言いたくなる。重量もスペックシート上で約462gとそこそこ重い。

手に持つとずっしり

使用方法は、製品本体に装着済みのスタンド兼ホルダーで、そのまま立てて使うか、パソコン用の外部モニターの上に載せるか、スタンドに設けられているねじ穴を使い三脚に取り付けるか、の3つのスタイルから選べる。ノートパソコンのディスプレイに載せて使うこともできるが、重みによるモニターへの負担がちょっと気になるところ。機種によってはディスプレイごと倒れる可能性もありそう。

装着済みのスタンド兼ホルダーで立てて使える
または三脚に取り付けて使う
もちろんモニターの上に設置することもできる
試しにノートパソコンに載せてみたが、ディスプレイをこれ以上向こう側に角度をつけると重みで自然に倒れていく

対応OSはWindowsとmacOS。パソコンとの接続はUSBケーブルとなる(本体側端子はType-C)。ただし、給電はUSB経由(バスパワー)ではなく、付属ACアダプター(こちらも端子はType-C形状)を同時に接続して給電することになる。

そういう点からも持ち運びに向いているとは言えず、デスクトップパソコンと一緒に使う、もしくはオフィスの会議室に半固定で設置しておいて持ち込んだノートパソコンとつないで使う、というのが一般的なユースケースになりそうだ。

ACアダプターは海外対応。適切なアタッチメントを取り付けて使う
背面にあるUSB Type-Cポートからパソコンに接続。同時に右端にあるType-C形状のポートには付属ACアダプターをつなぐ

パソコンと接続すると、追加のドライバのインストールなどもいらず、すぐに使い始められる。後述の専用ユーティリティを使うことで機能性・利便性がさらに高まるが、それがなかったとしても本製品のおおよそひと通りの機能は利用可能だ。

WQHDのWebカメラ 5W+5Wスピーカーが高品質

本体前面は、通常時は「フタ」されている。これをパカッと上に開くことでWebカメラのレンズが現れるとともに、LEDライトも出現するというギミックになっている。使わない時は閉じておけば、誤ってカメラがオンになったままプライバシーをさらけ出してしまうこともない。

パカッと開くとカメラレンズとLEDライトが現れる

Webカメラ部分の性能は、最大WQHD(2,560×1,440ドット)解像度で、秒間30フレームまで。かなりの高解像度ではあるが、今のところこの高解像度に対応する一般ユーザー向けのWeb会議ツールはないので(高くてもフルHDまで)、個人用途で最大限に活かすなら動画配信ということになるだろう。たとえばライブ配信に用いるOBS StudioのようなツールだとWQHD解像度でカメラ映像を取り込むことができる。

OBS Studio上での設定。選択できる解像度は320×180から2,560×1,440まで。フレームレートは最大30fps

カメラレンズの右側に見えるラインは、LEDライトの明るさ調整用のタッチ操作エリアとなっている。指先で軽く線に沿って右方向になぞることで、カメラレンズ上にあるLEDライトが明るくなっていく。左端までなぞればオフになり、もしくは本体右側面をタッチすることでもオンオフ切り替えができる。ただ、このライトは正直なところ、最大輝度にしても役に立つと言えるほどの明るさにはならない。暗がりで、少しでも顔周辺を見えるようにしたい、というときの「おまじない」くらいに考えておきたい。

レンズ右側のラインは、指でなぞると明るさ調整できる
右側面にはライトのオンオフを切り替えるタッチセンサー
最大輝度でこんな感じ
LEDライトを「オフ」にした状態。室内照明は消灯しており、モニターの明るさのみ
LEDライトを最大光量で「オン」にした状態。わずかに明るくはなるが、大差ない

でもって、マイクとスピーカーも本体に内蔵されている。4つの高感度マイクでこちら側の声を拾って相手に届けるとともに、5W+5Wのステレオスピーカーで相手側の声を聞くことができる。

マイクは3~4m離れたところからしゃべっていても、小声でない限りは相手が聞き取れる音声レベルでしっかり拾ってくれる。6~8名定員の会議室程度であれば、別途マイクを用意せずに本製品単体でカバーできるのではないだろうか。このマイクについても、本体左側面をタッチすることで素早くミュートのオンオフを切り替え可能だ。

左側面にマイクのミュートオンオフのタッチセンサー

ステレオスピーカーの音質は、最初はちょっとびっくりするほど高音質だ。ある程度は人の声向けにチューニングしているところもあるように思うけれども、たとえばYouTubeなどの動画の音声を聞くくらいならこれでもいいか、と思えるレベルのクリアさ。別途外付けのパソコン用スピーカーを用意しなくても、これだけでまかなえる範囲はわりと広そうだ。

専用ユーティリティでさらにパワーアップ

「AnkerWork B600 Video Bar」の多くの機能をフル活用したいなら、専用ユーティリティの「AnkerWork Software」をインストールしておきたい。

公式サイトから専用ユーティリティをダウンロード。Windows、macOSに対応する

ユーティリティでできることは、Webカメラの解像度と画角の設定、明るさ・シャープネス・彩度・コントラストといった画質調整、LEDライトの明るさ・色温度設定など。画角については65/78/95度の3段階の固定視野角から切り替え設定でき、広視野角の設定だと狭い会議室やデスク周りでもメンバー全員や自分の顔(身体)がはみ出ることなく映し出せる。

「AnkerWork Software」
Webカメラの解像度と画角の設定。「2K」は2,560×1,440ドットを意味する
視野角65度
視野角78度
視野角95度
Webカメラの明るさ・シャープネス・彩度・コントラストの調整

さらに、画角の設定で「セルフフレーム」を選ぶことで、映像内の人物の顔の位置に応じて自動でフレーミングしてくれる。たとえば映像の中央でカメラに近いところにいると引きの映像になり、遠ざかるとその顔に焦点を当てるようにズームインして大きく見せる。

また、映像の端の方に人が移動すると、同じようにその顔の位置に合わせて映像がパンするようにもなっている。人の顔を認識して自動でフレーミングしているようだ。設置方法の都合上、真正面から自分の姿を捉えられないようなときでも、カメラ側で勝手に調整して、ある程度適切にセッティングしているかのような見栄えの映像にしてくれるのはありがたい。

「セルフフレーム」にすると、人物の顔に合わせて自動フレーミングする。これはカメラに近づいた状態
カメラから少し離れると追従してズームイン

LEDライトの明るさは先ほど説明したように本体側で直感的に調整できる。が、さらにこのユーティリティを使うことで色温度の寒色・暖色も4段階で調整可能になる。加えて、「常に(ライト)オン」と「自動光調整」という機能も利用できる。前者はカバーを開いたときにライトを点灯する設定、後者は人物の顔の明るさ・暗さに応じてLEDライトの明るさを自動調整する設定だ。

LEDライトの設定。光量や色温度などを設定可能

と言っても、これも先ほど説明した通り、最大輝度にしたとしても大幅な明るさアップを望めるほどの光量ではないのが残念なところ。カメラの低光量下での画質がそもそも高いだけに、この程度の光量アップであれば必要性があまり感じられない、というのもある。

で、最初に4 in 1と書いたけれど、実は厳密に言うと5 in 1だったりする。本体背面側にはパソコンと接続するUSB Type-Cポートの他に、もう1つUSBポート(Type-A)があって、ここにUSB機器を接続できるのだ。つまり、1ポートだけではあるもののUSBハブ機能も備えているわけ。手近なところにUSBポートができることになるので、USBメモリを使ってデータ交換するようなときにも便利だし、USB接続の照明をつないで光量不足気味な本体のLEDライトの代わりにするのもいいかもしれない。

背面左側にUSB Type-Aポート
ここにUSBデバイスを接続して使える

値段に見合った高性能と高機能

Webカメラは文句なく高画質だし、スピーカーもWeb会議用を超えた「プチサウンドバー」的なクオリティで満足度は高い。マイク品質も1人、または数人が参加する会議室で使う範囲なら十分な性能をもっている。唯一、ライトの光量不足だけはいかんともしがたいというか、いまいち用途がわからないが、先述したように(USB接続などで)照明を追加したり、普段から十分に明るい部屋・場所で使ったりすれば気にならない部分だろう。

価格は3万円弱とそれなりに値は張るものの、これだけの機能・性能をもっていることを考えれば、十分にその価値はある。特にオフィスの会議室にはぜひとも1台備え付けておきたいところ。大企業が導入しているようなリモート会議システムに近い環境を最小限のコストで実現したい、というときにはベストな選択肢の1つになりそうだ。

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。