ミニレビュー
「au PAY」がいよいよスタート! auならではのコード決済の魅力と課題
2019年4月16日 08:15
au(KDDI)のコード決済サービス「au PAY」が4月9日、いよいよスタートした。キャッシュレス百景でもau WALLET/PAYに期待していると書いたauユーザーとして、どんな使い勝手なのか、店舗で実際に試してみた。
「au WALLET」アプリのアップデートでコード決済追加、1回の決済上限は5万円
au PAYは、「PayPay」「LINE Pay」「Origami Pay」などと同様、スマホに表示したコード(バーコードないしQRコード)を使って、リアル店舗で決済するためのサービスだ。
コード決済では通常、利用金額を銀行口座からオンライン振込したり、あるいはクレジットカードを紐付けるなどして、お金をなんらかの形でコード決済サービスへ動くようにしておかねばならない。au PAYではここで「au ID」を使う。
au IDは、au携帯電話の契約者だけが取得できるアカウントだ。携帯電話料金の支払い額に応じて貯まる「au WALLET ポイント」も、このau IDがベースになっている。このため、2019年4月の時点では、au PAYを使えるのはau契約者に限られる。
au PAYを利用するには「au WALLET」アプリが必要になる。もともとauは、au IDに紐付いた形のプリペイド決済サービス「au WALLETカード」を展開してきた。au PAYは、そこへ上手く相乗りするかたちになっていて、アプリも完全に共用する格好だ。
au WALLETアプリは、すでにau PAY対応を済ませたバージョンが配信中。すでにau WALLET アプリをインストールしている場合、アップデートされているか確認しよう。なおアプリはiOS版のほか、au製Android端末向けのバージョンが「au Market」経由で公開されている。Google Playにはないので、ご注意を。
このアプリの準備さえできていれば、au PAYの利用は簡単だ。アプリ起動時にau PAYの紹介が出るので、その案内を読み、利用規約への同意を行なえば、ほぼ完了する(場合によってはau IDのログイン作業などが必要)。
なお、au PAYでは1回で決済できる金額の上限が5万円に設定されている。ちょっと大きめの買い物には不向きなので、覚えておいてほしい。
貯まっているポイントでチャージ
au PAYは、アプリに表示されている残高の範囲でしか決済できない。0円の場合、当然チャージ(入金)しなければならないが、ここで前述の「au WALLET ポイント」が使える。これこそがPayPayやLINE Payにはない、au PAYならではの強みになっている。
au WALLETポイントは毎月の携帯電話利用料1,000円に対して10ポイント(10円相当)貰えるほか、長期契約者特典「au STAR」を受けていればさらに上乗せがある。毎月7,000~8,000円の支払いがあるユーザーなら、最低でも毎月100~200ポイント程度の還元があるはずだ。もし、このポイントを1年近く使っていないのであれば、1,000ポイント、つまり1,000円分のチャージが今すぐにできるという訳。
ポイントでチャージするには、アプリの画面で「ポイント入金」をタップ。実際の残りポイントが表示されるので、100円単位で指定しよう。なお、ポイントによるチャージは毎月2万円が上限となっている。数年分のポイントを一気にau PAYで使うようなシーンではご注意を。
筆者の場合は、auを15年以上契約しているのでau STARによる還元も多く、ここ1年で6,000ポイント以上貯まっていた。また、au PAYとau WALLETカードは残高が一元管理されている。筆者のように、au WALLETカードをすでに使っているユーザーなら、その残高をそのままコード決済に回せてしまう。この多用途っぷりが、サービスとしての魅力と言える。
決済は簡単だけど、「店員さんへの説明」が大変
いよいよ実際に決済してみよう。au WALLETアプリを立ち上げ、「コード支払い」のタブを選択すると、コードが表示される。これを店でスキャンしてもらうというのが、実際のフローになる。
最初に訪れたのがコンビニのローソン。レジ前に立って「au PAYで払いたいんですけど」と言ってみたものの、店員さんはやや怪訝な表情。au PAY開始わずが2日後の4月11日だったので、さすがにサービスの存在を知らなかったようだ。
こちらも「まだ始まったばっかりの払い方らしいんですが」などと食い下がると、店員さんも察したのか、「とりあえずやってみます」と返してレジ操作し、スマホの画面に表示したバーコードをスキャン。すると問題なく処理された。受け取ったレシートにはしっかり「au PAY」の表示が出ていた。
続いて、飲食店の松屋へ。ここでは食券自販機にQRコードリーダーが搭載されている。食べたいものを選び、自販機のモニターに表示された「QRコード決済」をタッチ。そこでQRコードを読取り部に向けると、あっけないほど簡単に決済できてしまった。
ビックカメラでも数百円の買い物をau PAYでしてみた。どうやら店頭のレジだけではau Payの処理が完結しないようで、レジ横に置いてあるコード決済用スマホ(iPhone)のカメラで、QRコードを読んでもらわないといけない。その決済用スマホは、レジ数台に対して1台程度の設置らしく、繁忙時の処理は少々大変そうだ。
一方で、ちょっと困ったのが某・物販店チェーン。「au PAYで」とお願いすると、「いや、ちょっとそういうのは使えないと思うんですけど……。PayPayなら使えますが」というまさかの返事。筆者としても「は、はぁ。じゃあ現金で払います」と返すのがやっとだった。
後々調べても、間違いなくそのチェーンは4月9日段階でのau PAY対応を表明済みだったのだが、レジ周りに「au PAY使えます」とか「使えるコード決済はこちら」などの表示がまったくなく、店員にも周知できていなかったようだ。ちなみに、同系列の別店舗を後日訪れたところ、そちらは全く問題なくau PAYで決済できた。店員自身はau PAYを知らなかったようだが、レジそばにau PAYのロゴマークが表示されていたので、意思疎通もしやすかった。
もっと大変だったのが、とある居酒屋。レジ横にばっちりau PAYのシールが貼ってあり、これは大丈夫だろうと思っていたのだが、まさかの「決済不可(というか、途中で諦めた)」。レジとは別に用意された、QRコード決済用のハンディターミナルを使ってコードを読み取るのだが、とにかく上手くいかない。最初はまったく読み取れず、店員がなにか操作をして改めて読み取ろうとすると、今度はターミナル側で明確に「決済失敗」のエラーメッセージが表示される始末。
最終的に現金で払ったが、それこそ金曜夜の繁忙時、店員さんが忙しい中、4~5名分の飲み代数万円を払おうとしたときにこのエラーが出ていたら……。想像するだけで、震えが来る。
まずは「知名度!」
実際に何度か決済してみて気付いたのが、「客側のスマホで店のバーコードを読み取り、客が自ら金額を手打ちして決済する機能」(注:ユーザースキャン、店舗提示型などと表現される)がau PAYにはない。
例えばPayPayでは、レジカウンターなどに決済用バーコードを貼り出しておき、それを客が自ら読み取って決済し、完了画面を店員に見せるという手法がある。ただ、これにはバーコードを偽造された際、問題が大きくなるとのもある。au PAYでは、そもそもこの機能がないため、原理的にはリスクが少ない。しかし、「店側の省力化」を考える上では、ややデメリットになってくるかもしれない。
そしてau PAYの今後を考えると、まず重要なのは知名度だろう。客側はもちろん、店側にもau PAYというブランドが浸透していないと、筆者が経験したような事態が発生してしまう。まずは4月15日からはポイントチャージが10%増額になるキャンペーンが行われるが、その後も「○○%還元!」とか、「○○が貰える!」とか、思い切った施策に期待したい。
キャリアフリー化するならまだまだ機能不足、チャージはじぶん銀行以外も!
auは夏をめどに決済サービスのキャリアフリー化を宣言している。ドコモやソフトバンク、格安スマホの契約者であってもau PAYが利用できるようになるとみられ、これ自体は歓迎すべきだろう。
となってくると、次に重要になってくるのが、サービスの基本スペック。そもそもサービスの質が高くなければ、数多く展開されるコード決済の中から、わざわざau PAYを選んでくれない。
au PAYでは決済額200円ごとに1ポイント、つまり0.5%のポイント還元が基本。月額499円(税別)の「auスマートパスプレミアム」会員に対しては、この料率が3倍になったり、毎月3日・13日・23日の「三太郎の日」には20%還元を行われるが、au携帯電話を契約していないユーザーからみると、メリットは相対的に少なくなってしまう。
またau PAYへチャージする手法も、今後充実させていく必要があるだろう。いくらau WALLETポイントでチャージできるとはいえ、利用シーンを増やしていくにはユーザーが手持ちの金銭を任意にチャージする必要性も比例して高まる。
ただ現状では、銀行からのチャージは自社グループ内のじぶん銀行にしか対応していない。対応銀行を増やすのは必須だろうし、キャリア決済(携帯電話料金とのまとめ払い)、クレジットカード以外の手法についても、検討を重ねていってほしい。
筆者がau PAYで最も評価しているのは「チャージした金額を、コード決済でもau WALLETカード決済でも使える」という点だ。例えばPayPayの残高は、基本的に店頭決済のみでの利用。一度チャージした金額は現金化できず、かといってAmazonのような通販サイトで使えないため、結果として「入金が常に控えめになる」。
その点、au PAYは使い道が幅広いが、LINE Payと比べてみると、チャージ手段の多様さでは明らかに負けている。こうした機能の向上を続けつつ、それでいて地道に知名度を高めていく。この両面が、後発組のau PAYには不可欠だろう。