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ソフトバンク好調決算 料金維持は“限界” 金融サービスはPayPay集約

ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏

ソフトバンクは、2024年度第3四半期の決算を発表した。全セグメントで増収増益となり、上方修正後の通期予想を達成できる見込みとしている。各事業の話題では、金融ビジネスを再編してPayPayに集約する方針が明確に打ち出されたほか、AIデータセンターやOpenAIとの取り組みなど次世代のインフラ投資についても語られた。

2024年度第3四半期の累計の売上高は前年同期比7%増の4兆8,115億円、営業利益は12%増の8,219億円、純利益は7%増の4,366億円。全セグメントで増収・増益になるなど好調。通期業績予想に対する進捗率も、営業利益が87%、純利益が86%と順調に推移しており、特にファイナンス事業は進捗率130%で好調だった。

コンシューマ事業は3%増の増収で、第3四半期の累計のモバイル売上高は256億円の黒字に反転。スマートフォン累計契約数はワイモバイルを中心に増加し純増。社内で「と金プロジェクト」と呼ばれているという、入り口になっているワイモバイルから高額利用ユーザーがソフトバンクに移行する流れも定着しているとした。

料金“値上げ”に現実味「そろそろ限界」

一方、携帯電話事業の運営コストは、電気代から人件費まで、ここ数年間で値上がりが続いていると指摘する。「電気代だけでも100億円単位で右肩上がり。コスト吸収しているが、そろそろ限界が来る。値下げ一辺倒で、5Gの投資を抑えたりするのは悲しい。開発力も落ちてしまった。健全な形で、物価上昇に合わせたもの(料金の値上げ)はどこかで行なわないといけない。最初にスタートを切るのは相当に勇気がいるし、今は動くつもりはないが、中長期的には(健全な価格に)戻していかないといけない」(ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏)として、携帯電話料金を値上げする時期がいずれやってくるとした。

この料金値上げについては、直近に開催されたKDDIの決算会見でも高橋社長が暗に言及。「高付加価値型の経済循環にシフトしていく必要性」を訴えており、「料金値上げ」は遠からず携帯電話事業者の課題になるとみられる。

金融サービスはPayPayに集約

ファイナンス事業は好調で、第3四半期の累計の売上高は19%増の2,036億円。PayPayの黒字化も寄与し、営業利益は260億円と、前年同期の35億円の赤字から大幅に改善した。

金融ビジネスは、PayPayに集約させる再編を進めている最中。PayPayがPayPay銀行を子会社化する予定のほか、この日はPayPay証券の子会社化も発表。これによりPayPay傘下には、PayPayカード(100%子会社)、PayPay銀行(持ち株比率75%)、PayPay証券(75%)の3つが並ぶことになる。

KDDIはauじぶん銀行を子会社化しており、NTTドコモも好調なカード事業などを背景に銀行サービスへの参入を示唆するなど、金融サービスとのさらなる連携強化は急務になっている。

ソフトバンク系列の金融サービスはこれまで、複数のブランドが絡み資本構成が複雑だったが、業績が好調なタイミングで整理を行なう。再編はPayPay主導による銀行・証券サービスを強化するのが目的で、決済と金融をシームレスにつなげ、成長を加速させるのが狙い。

PayPayは黒字化を達成していることでIPOについても問われるというが、「考えてはいるが、明言はしない。競合うんぬんより、まだ登りかけた山の一合目や二合目。やりたかったことをやってから親離れをしてもらいたい」(宮川氏)としている。

OpenAIとの取り組み「飛躍のチャンス」

次世代社会インフラと位置づけるAIデータセンターなどへの投資は、基地局のネットワークを応用しエッジ領域で分散型データセンター網を構築する「AI-RAN」から、大規模施設となる大阪の堺AIデータセンター、OpenAIとのパートナーシップによる取り組みまで幅広く展開する。これらでは、ソフトバンクが自ら開発する生成AIのほか、“箱貸し”のような形でデータセンターの計算能力を他社に提供する事業も展開する。

ソフトバンクグループがOpenAIと発表した「クリスタル」(クリスタル・インテリジェンス)については、米OpenAIの「クリスタル」を日本の企業向けに独占的に販売する“販社”のような形になる。ジョイントベンチャーのSB OpenAI Japanはソフトバンクの連結子会社になるほか、自社で使うクリスタルの利用料は従量制のような形式で支払うという。

こうしたOpenAIとの取り組みについて、クリスタルは企業のシステムの自動化を図るなど自立型という側面が強く、従来の生成AIよりもひとつ先のレベルのサービスになるとしたほか、ソフトバンクが生成AI関連で海外に打って出るという構想もあり「飛躍のチャンス」(宮川氏)と捉えているという。

なお、ソフトバンクグループが支払う年間4,500億円とされた費用は、まずOpenAIとのJVであるSB OpenAI Japanに支払われ、SB OpenAI Japanでかかる開発費用などを引いた額がOpenAIに支払われるとしている。