ニュース

はなまるうどん、本社を香川にUターン移転 非セルフも構想

はなまるうどんを運営する株式会社はなまるは、1月1日にはなまるうどん発祥の地でもある香川県高松市に本社を移転した。「おいでまい!さぬきプロジェクト」を始動するなど、讃岐うどんの魅力を発信する施策に取り組む。

はなまるうどんの創業は2000年で、5月に創業店舗「はなまるうどん」木太店を香川県高松市に開店した。今年で創業25年となる。

はなまる 代表取締役社長 前田良博氏によれば、香川県では製麺屋が作った麺を軒先で食べさせるような、古き良き食堂のようなイメージの個人店が多かった。そういった中で、はなまるうどんは「誰でも、いつでも気軽にふらっと食べに行ける讃岐うどんの店を創ろう」という想いで、特に若い女性でも入りやすい店を目指して1号店をオープンした。なお前田氏は1号店の店長を務めた。

はなまる 代表取締役社長 前田良博氏

このコンセプトが成功し、1年以内に香川県内で4店舗をオープン。さらに「讃岐うどんというのは讃岐の中の文化の食べ物だから海を越えては通用しない」という意見が多くあったものの、2002年4月に瀬戸大橋を渡った先の岡山県児島に県外1号店をオープンした。

ここでは当初の計画の3倍ほどの来店があったことから「讃岐うどんは香川県だけの食べ物ではない。全国に通用するのではないか」という考えから東京へ進出。2002年9月に「はなまるうどん渋谷公園通り店」をオープンした。

当時はセルフスタイルは都内では珍しかった。また、東京にも個人営業の讃岐うどん店はあったものの700~800円、これに対してはなまるはかけうどんを100円で提供した。これらのスタイルや価格から多くのメディアで取り上げられ、連日行列ができる店舗に成長した。

それから20年以上が経ち、創業当初からのスタイルや味へのこだわりを継承しながら、現在は日本全国に418店舗を展開している。一方で故郷である香川県のうどんは店主の世代交代も進み、加水率や太さなど旧来の讃岐うどんの定義を覆すような新しく、かつ美味しいうどんが生まれているという。

「我々も25年前と同じことをやっていてはいかん。またここに教えていただき、地元香川と一緒にもう一度新しい価値を全国の皆様にお届けしたい」(前田氏)という想いから、原点回帰してもう一度香川を見直すという決意表明の意味も込めて、東京都中央区から創業の地の香川県高松市に本社を移転した。

おいでまい!さぬきプロジェクトの詳細は、はなまる マーケティング本部 CMO 高口裕之氏が説明。「おいでまい」は讃岐弁で「いらっしゃい」という意味を持ち、名称では「『讃岐うどんを食べたい』『讃岐うどんを食べに香川へ行きたい』と全国の皆様に思っていただきたい」という気持ちを表している。

はなまる マーケティング本部 CMO 高口裕之氏

プロジェクトにおけるアクションプランは、本社移転も含めた8項目。「讃岐生まれの原点に戻り、伝統と革新に挑戦」を掲げて推し進める。

その一環として香川県内14店舗のうち、1号店である木太店を含めた5店舗を全面改装。すべてを同じように改装するのではなく、それぞれに個性を持たせる。改装する各店舗は、そこでの評価を見ながら全国展開を検討するという位置づけとなる。

改装店舗では新しいスタイルやこれまで取り扱っていなかった商品の提供も構想。セルフとは真逆のフルサービス店舗、スイーツの販売、居酒屋スタイルの店舗などのアイデアを例に挙げ、全く同じ店を作るのではなく個性を持たせることで、香川県内で「はなまる巡り」が楽しめるようになると説明した。

そのほか香川県内の店舗で、香川県産の小麦「さぬきの夢」の使用を開始。県産品を使うことで香川県の魅力を全国に発信する拠点になることを目指す。香川県で育った様々な食材を使用したメニュー開発、県内で生まれた商品の店頭販売なども予定している。これらは、全国の店舗への拡張も検討する。

プロジェクトの1つとして2月には、創業地の最寄り駅であることでん長尾線 林道駅の副駅名を命名する予定。

また、惜しまれつつ閉店した讃岐うどんの「名店の味」を復活させるというプロジェクトを実施。5月頃の第1弾を目標に、香川の讃岐うどんエキスパートと協議をスタートさせた。

プロジェクトを通じてトライ&エラーを繰り返しながら新しい形を作り、発信するという取り組みを進行させる中で、東京でもこういった取り組みを形として見せるイベントも計画。讃岐うどんの個性、多様性を東京の人が肌で感じられる場を設け、香川への観光需要促進を目指す。

発表会では香川県のご当地キャラクター「ツルきゃら うどん脳」が登壇し、新メニューを提案した。

ツルきゃら うどん脳
提案した新メニュー

また、「はなまる宣伝隊長にしてほしいツル」との要望を出し、前田氏が壇上でうどん脳の宣伝隊長就任を決めた。はなまるうどん25年の歴史の中で、宣伝隊長がいたという前例はないという。

香川県東京事務所所長 森岡英司氏(左)、香川県議会議員 岡野朱里子氏(右)、およびうどん脳、前田氏、高口氏(中央3名)