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IOWN、東京-大阪間600kmで7.5msのリアルタイムデータ同期
2024年12月5日 18:01
日立製作所とNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、低遅延・低消費電力などを特徴とする光通信技術「IOWN APN」を活用し、600kmを超える長距離でのリアルタイムデータ同期の共同実証に成功した。これにより、遠隔地のデータセンター同士を連携させ、災害時のレジリエンスを向上する分散型データセンターの実現を目指す。
昨今の激甚化する災害に対して、データセンターにおけるレジリエンス強化ニーズが拡大しており、特に金融やインフラ事業など、ミッションクリティカルな事業においては特に需要が大きくなっている。
災害から迅速に復旧を行なうには、被害を受けたデータセンター以外からのデータリカバリーが必要になるが、システム構築や維持にかかるコストが課題なほか、近年では生成AIの普及によりデータセンターの需要が拡大する一方、電力使用量の増大も問題になっている。
こうした状況に対応するため期待されているのが「分散型データセンター」で、遠隔地にある複数のデータセンターを連携させて1つのデータセンターであるかのように利用できる。複数のデータセンター毎にデータを二重化して保持しているため、災害などで1つのデータセンターが使用できなくなっても、自動的に他のデータセンターを利用でき、事業が中断されにくい。
長距離の分散型データセンターを連携させることで、土地や再生可能エネルギーを確保しやすい地域の活用や、都市部でのデータセンターの一極集中も抑制できるが、長距離での連携にはネットワークの性能がボトルネックになる。
今回の共同実証は、既存ネットワークに比べて長距離でも低遅延な通信が可能になるIOWN APNにより、こうした課題を解消する狙いがある。
共同実証に使用したストレージは、ストレージ仮想化技術により、各拠点に設置された複数のストレージを、1台のストレージのように管理・運用できる日立ヴァンタラの「Hitachi Virtual Storage Platform One Block(VSP One Block)」。
既存ネットワークによりVSP One Blockを使用したストレージ仮想化を行なう場合、許容できるデータセンター間の距離は100km(東京-静岡程度)、応答時間は20msec以内が推奨値となっている。
今回の実証では、既存ネットワークの代わりに、IOWN APNを使用。東京と大阪(約600km)をIOWN APNで接続し、書き込み時の応答時間で7.5msec(往復)を実現した。推奨値の20msecを大きく下回る応答時間を実現しており、より遠隔地のデータセンター同士の連携も可能になる。
また、メインサイトがダウンした際に、サブサイト側に切替えに必要な時間は約10秒で、高い事業継続性も確認されている。
今後は、日立ヴァンタラのストレージとIOWN APNの組み合わせにより、ミッションクリティカルな業務を担う金融機関、社会インフラ事業者、クラウド事業者などに向け、長距離間でのデータの常時同期を実現する、次世代ITインフラシステムの提供を目指す。