ニュース
”3度目”は成功するか イトーヨーカドー、ネットスーパー再構築
2024年12月5日 15:17
イトーヨーカ堂はONIGOとの協業による、注文してから届くまで最短40分のデリバリーサービス「ONIGO上のイトーヨーカドーネットスーパー」を、2025年2月から93店舗で開始する。取り扱い店舗はイトーヨーカドー83店舗、ヨーク10店舗で、エリアは首都圏、中京、関西。
イトーヨーカ堂はこれまでも「イトーヨーカドーネットスーパー」を展開していたが、'25年2月12日をもって営業を終了(営業終了時期は地域により異なる)。これに代わる形で、新サービスを開始する。現在もONIGOサービスの提携先スーパーにイトーヨーカドーやヨークが含まれているが、新サービスは専用のWebサイトおよびスマホアプリにて展開する。
新サービスの注文からの配達時間は、通常配送で最短70分、即配オプション(別途手数料220円)で最短40分。1時間単位での配送枠の時間指定や、翌日、翌々日までの注文に対応する。
これまでのデリバリーサービスにおける、急な天候の変化などによる注文の急増で配送枠が埋まってしまい配達ができなくなるという課題への対策も実施。自動車での配送方法に加え、オンデマンドに連携した2輪での配送方法を併用することで、配送可能な件数を拡大し、注文需要の急増に対応する。
品揃えも拡充し、野菜、果物、精肉などの生鮮食品や、惣菜や寿司、乳製品、日用品や乳幼児・ペット用品など、約8,000~9,000商品を取り扱う。今後、介護用品や薬、アカチャンホンポ等のGMS専門店商品の取り扱いも検討する。
価格については、現在のデリバリーサービスでは店頭価格よりも高く設定している。新サービスでは、店頭価格と同じにすることは難しいものの、野菜や肉、豆腐、牛乳など、消費者にとって身近な2,000品目の価格を見直し、できる限り安く提供するとしている。新サービス開始に先駆け、現在のONIGOサービスで12月7日から価格改定を行なう。
決済方法は、クレジットカード、代引き、Apple Pay、Google Pay、PayPayなどに対応。従来よりも多様化し、利便性向上を図る。
配送料は、購入金額6,000円(税込/以下同)以上で330円、5,001円~6,000円未満で490円、5,000円未満の場合は少額手数料490円加算。配送時間は注文日から翌々日までの11時~20時(一部店舗は22時)の1時間枠で配達。
これまでの店舗型・センター型の課題を踏まえて再構築
イトーヨーカ堂は、これまでもネットスーパーを様々な形で展開してきた。まず2001年に葛西店で「店舗型ネットスーパー」を開始。店舗数拡大に伴い売り上げも順調に伸ばすことはできたが、増加する注文数に対して配送キャパが不十分、店とネット注文のニーズの差による専用商品の要望、店舗の負担の増加といった課題も出てきた。
そこで2023年にセンター型のネットスーパーを開始。36店舗分の配送能力をもつネットスーパー専用の物流拠点「新横浜センター」を設置し、センターから店舗を中継して届けるサービスを提供した。これにより、配送枠の確保、センター在庫による専用商品、店舗負荷の軽減につなげることができた。
店舗型における課題を解決できた一方で、惣菜や寿司などの取扱い、多様な決済への対応、UI/UXの改善といった要望が寄せられるなど、新たな課題が出てきた。こうした課題に対して、独自で改善に向けた投資を続けていくことは費用対効果の面から難しいため、センター型を閉めて考え直すという決断に至った。
そしてネットスーパーを継続するため新たに、これまでもパートナーとして協業してきたONIGOと連携。これまでの反省を活かして、新しいネットスーパー再構築を目指す。
イトーヨーカ堂はONIGOサービスを、2022年3月からヨークで、2023年10月からイトーヨーカドーで開始しており、事業性の確認をしてきた。さらに、ONIGOと11月27日付けで資本業務提携に基本合意している。
提携は、ONIGOが持つクイックコマースのシステムや事業開発力と、イトーヨーカドーがもつ商品調達力、これまで培ってきたデリバリーサービスのノウハウを組み合わせることで、サービスの品質をさらに向上させることを目的としている。新サービスでは、双方の強みを掛け合わせた、さらに一歩進んだサービスを目指す。
ONIGOは従来、料理のための生鮮食品主体で、デジタルの売り場作りを行なってきた。そのため、ネットスーパーやフードデリバリーサービスの中では、配達スピードは速いけれども少し割高というポジショニングだった。また平均単価は4,500~5,500円だった。イトーヨーカ堂との新サービスは、「スーパー価格ですぐ届く。品ぞろえも充実」という、誰もが日常使いできるサービスになるとし、平均単価は5,500~10,000円を見込んでいる。
ONIGOは新サービスの他との差別化について、ネットスーパーの優良顧客の囲い込み数を最大化する商品・価格戦略をベースとしつつ、配達エリアの最適化、オペレーションの最適化でコストを適切にコントロールして採算を確保するという戦略を掲げる。
商品戦略については生鮮食品、惣菜、即食商品の品揃えと商品力強化に加え、データ連携精度も重視。精肉、惣菜などのインストア製造商品を中心に、在庫数量の把握精度を改善する。また、欠品時の代替提案機能による商品在庫力強化を図る。さらに、外食のオンデマンド製造機能により、即食ニーズへの対応力を強化。作り立ての価値と、夕方にも品切れなく提供できるようにする。
また、ギグ配送員と配送管理システムの活用により、日中の需要波動や、天候不順による需要急増への対応力を高め「すぐ届く」買い物体験と経済性を両立させるなどの物流戦略も掲げている。
そのほか、介護施設における買物負担軽減に向けて、大手プラットフォームと連携し、効率的な展開を目指す。ONIGO単独でも法人向け機能の開発を行ない、法人の安定的な需要の取り込みも狙う。
ONIGOは今回の提携でカバーできるエリア外では、イトーヨーカ堂とは別の現地スーパーとの提携モデルでサービスを展開。独自のデリバリーモデルを完成させ、アジア主要地域への展開を目指す。