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NTT、KDDI、楽天モバイルら5社、2030年代「オール光ネットワーク」本格化

2030年代のインフラ像

NTT、KDDI、富士通、NEC、楽天モバイルの5社は、次世代インフラの共通基盤技術の確立を目指す総務省のプログラムに共同提案を行ない、採択されたと発表した。代表研究者はNTT。2030年代の通信インフラを想定したもので、オール光ネットワークの事業者間連携に必要な基盤技術の早期の確立を目指す。情報通信研究機構(NICT)に新たに設けられた基金から、今後5年間で200億円の支援を受け、2028年度までに技術開発を完了させる計画。

これまでの通信インフラは、大規模な基幹部分では光ファイバーを用いた通信が行なわれる一方、末端では光信号を電気信号に変換するため効率が低下し、次世代のサービスで使うには限界が見えてきている状況。一方、NTTがIOWNなどで提唱するオールフォトニクスネットワーク(APN)は、通信をすべて光伝送網に置き換えるもので、高速・大容量と低遅延・ゆらぎゼロを実現、すでに「APN IOWN 1.0」として商用化され提供が開始されている。

またNTTは、現在のインフラの限界を克服するものとしてIOWNの国際的なフォーラムを2020年に立ち上げ、仕様策定や技術開発を進めており、アジア・欧米を含む156の組織・団体が参画する大規模なものになっている。今回発表されているKDDI、富士通、NEC、楽天モバイルの4社もスポンサーメンバー(39者)の中に含まれている。

IOWNの国際的なフォーラム

IOWNの国際的な活動は、4月に開催された日米首脳会談における合意事項にも記載されるなど、次世代インフラの基盤として目されている状況。総務省でも、こうした次世代インフラの整備は、AI開発を含め競争力を強化するための基盤になるとして戦略を策定している。

そうした戦略のプログラムのひとつである「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業 社会実装・海外展開志向型戦略的プログラム(共通基盤技術確立型)」に提案を行なったのが冒頭の5社で、共通基盤技術の研究と開発を行なう。

本格化するオール光ネットワーク

採択された研究開発のプロジェクト名は「複数事業者間のオール光ネットワーク接続に関する制御技術および装置構成技術の研究開発プロジェクト」。具体的には、業界共通で現在の課題とされている以下の3つについて開発に取り組む。

1つ目の課題は、異なる通信事業者間を含む、さまざまな事業者間のオール光ネットワークをシームレスに繋ぐ仕組みがないことで、障害発生時に早期復旧ができないなどの問題もある。

2つめの課題は、多数のユーザーを収容する場合、低廉な装置や運用コストで、通信品質をエンドツーエンドで確保できるシステムが存在しないこと。

3つ目の課題は、さまざまな事業者がオール光ネットワークを実装する場合、現行の光伝送装置(ROADM)は大手通信事業者向け装置のため、小規模な拠点への機能配備や収容が困難になっていること。

現在の課題

5社は今回、オール光ネットワーク(APN)の全体的なアーキテクチャの策定を行ない、APNの事業者間連携に必要な基盤技術の確立を目指すことになる。

複数の事業者をまたがって光ネットワークを接続するための「光ネットワークフェデレーション技術」は、5社が協力して取り組む。さまざまなユーザーに応じた接続制御で品質を確保する「サブチャネル回線交換技術」はNTTが、低廉小型化されたROADM装置の開発と収容について開発する「分散型ROADM技術」は富士通とNECが取り組む。