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H3ロケットで打ち上げた「だいち4号」、初観測画像公開

2024年7月16日午後9時10分頃に撮影したフランス・パリ周辺の観測画像。2024年パリオリンピックの主要な会場が白丸で示めされている((1)メイン会場であるスタッド・ド・フランス、(2)ポルト・ド・ラ・シャペル・アリーナ、(3)コンコルド広場、(4)エッフェル塔スタジアム、(5)パルク・デ・プランス)

JAXAは、7月1日にH3ロケットにより打ち上げた先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)において、初めての観測画像を公開した。「だいち4号」は現在、初期機能確認運用を実施しており、今回の画像は同衛星に搭載されたLバンド合成開口レーダ(PALSAR-3)により、7月15日から17日に撮影されたもの。

「だいち4号」は、人工衛星搭載の合成開口レーダとして世界で初めての実証となるデジタルビームフォーミング技術を使い、前号機「だいち2号」の高い空間分解能を維持しつつ観測範囲を最大4倍に拡大したレーダ衛星。「だいち2号」とともに、災害発生時の状況把握や、森林分布の把握等の環境観測、海氷等の海洋観測などへの貢献が期待される。

「だいち2号」PALSAR-2による富士山付近の観測(分解能3m、観測幅50km)、観測日2022年11月23日(比較用)
「だいち4号」PALSAR-3による関東地方と富士山付近の観測(分解能3m、観測幅200km)、観測日2024年7月15日。だいち2号に比べて観測範囲が広くなっている

「だいち4号」は地球観測衛星として世界最高性能(2024年7月現在)の3.6Gbps(1.8Gbps×2系統)の高速データ伝送が可能で、これにより発生データ量が大きな高分解能(3m)の観測でも、HH偏波(水平偏波送信・水平偏波受信)およびHV偏波(水平偏波送信・垂直偏波受信)による2偏波観測が常時可能になった。

撮影した画像は、この2偏波のデータから合成した疑似的なカラー画像で、緑色が植生、明るい紫色や黄緑色が市街地、暗い紫や黒は裸地や水面などを表す。偏波情報により地表の状況の判別が容易になることで、災害状況の把握や森林伐採の監視などへの活用が期待される。

PALSAR-3による富士山周辺
PALSAR-3による東京都心の拡大画像

ALOS-4プロジェクトチームは今後、三菱電機をはじめ衛星運用に携わる企業、機関等とともに引き続き3カ月間の初期機能確認運用を行ない、「だいち4号」とPALSAR-3が所定の機能を有することを確認した後、観測データの初期校正検証運用に移行する予定。