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ドコモ、ネットワーク品質を「大幅改善」と報告 対策は9割完了
2024年2月2日 19:16
NTTドコモは、通信サービス品質の改善に関する説明会を開催し、2023年12月までの集中対策により「通信サービス品質が大きく改善した」と報告した。
NTTドコモのネットワークは、2023年に入ってから、都市部を中心に繋がりにくい、速度が遅いと指摘されるようになっていた。春や夏に対策をアナウンスしたほか、2023年10月には全国の2,000カ所以上で集中対策を行なうと発表し、2023年いっぱいをかけて取り組むことが明らかになっていた。
コロナ禍明けの予測に失敗
説明会に登壇したNTTドコモ ネットワーク本部長 常務執行役員の小林 宏氏は、2023年に入り顕著になった、都心部で繋がりにくい・遅いといったサービス品質が低下した原因について、「基地局のトラフィックに対する容量設計の不足」とした。全国や県単位となる、上位レイヤーの設備の問題ではないという。
渋谷などでは、駅周辺のビルの解体で基地局が減ったことが影響したことはすでに明らかにされているが、全体像としてトラフィックの容量設計が不足したのは、「リモートワークが続くであろうと予想し設計したのが失敗だった」としている。
目標の90%以上に対策を実施
2月2日に開催された説明会は、2023年に集中的に取り組んだ改善策の状況を報告するもの。それによれば、2023年12月までの集中対策は、対象とした約2,000カ所の90%以上に対して実施され、計画を上回る進捗だった。
品質水準の調査でも最繁時におけるスループット状況の改善を確認。東京都心のほかJRの大阪駅や名古屋駅などピンポイントの改善も進め、いずれも最繁時におけるスループットの改善を確認した。
一方で、基地局を設置しているビルによっては調整に時間がかかるなど、あらかじめ予想されていたように、設備対応が長期化するケースもあるという。この影響により、都心でもサービス品質が低下したままのエリアが残っていることはドコモでも把握しており、引き続き対応を進めていく。
鉄道の動線上での品質など「線」の対応も進め、スループットの計測では、通勤・退勤などの最繁時において約90%の時間は、動画を途切れることなく観られるなど、不便なく利用できる状況になっているとしている。
こうした対策により、2023年3月と12月を比較すると、SNS上での不満の声は大きく減少したという。
大規模イベントの対策も強化し、2023年12月のコミックマーケット103では5G基地局の増設、5G移動基地局車の追加配備、一部アンテナの挟ビームタイプへの変更、5G・4Gの臨時基地局の設置といった対策を行なった。前回からスループットが改善、SNS上の不満の声も大きく減少した。一方で、使いづらいエリアが残っていることも把握しており、引き続き対策を強化していく。
「d払い」アプリで通信品質もチェック
このほか、通信品質をユーザーが体感するケースとして、アプリを利用するケースに着目し、“体感品質”が劣化している場所を早期に検知・把握できる仕組みについても紹介された。
例として示されたのは、「d払い」アプリを起動した際の、バーコードが表示されるまでの時間を計測し、通信品質の改善につなげるというもの。バーコードを表示するまでにかかった時間を計測する仕組み自体は、以前からアプリの品質改善のために使われていたが、通信サービスの改善に応用する形。当該のエリアを担当する基地局のトラフィック状況と照らし合わせることで、電波の強弱の問題なのか、基地局のトラフィックが逼迫しているのかといった問題の切り分けや判別が可能になり、原因を特定して改善につなげていく。
「d払い」アプリを使った計測は1月中旬から開始しており、現在はデータを集めている段階というが、すでに有用な情報が集まっているという。また、ユーザーが「d払い」を他社回線で使っている場合、他社回線の状況も一部は分かるため、比較して参考にしていきたいとしている。
アプリのデータをネットワーク品質の改善に活用する取り組みは、今後、動画アプリの「Lemino」などを含めて順次拡大して行く方針。Webブラウザについても個人情報やGPS情報を使わない形で対応したいとしている。
ソフトバンクの広告「優良誤認を心配する」
このほか、サービス品質の低下が名実ともに明らかになったドコモに追い打ちをかける形で、ソフトバンクが「大阪府でいちばん快適につながる」というキャッチコピーを用いて、大阪の7カ所で「No.1」と謳う広告を展開している件について聞かれた。
小林氏は「遅延を測っているのか、どういう調査をしているのか分からない。どういうデータを流しているのかも分からない。どういった根拠なのか分からないのが正直なところ。大阪府でいちばんという表現も、大阪府全部で一番という表現になっていると(ユーザーには)捉えられるのではないか。消費者庁の判断だろうが、景品表示法の優良誤認にあたるのではと、心配してしまう」と、「最上級表示」に疑問を投げかけた。
ドコモはソフトバンクの広告を受け、アピールされている7カ所で調査を行なったという。自社調査の範囲ではあるものの、例えば海遊館ではスループットも遅延もドコモが上回っていたとしたほか、それ以外でもドコモが上回っていた場所があったといい、小林氏はソフトバンクの打ち出し方に不満を隠さない。「もしやるのなら、総務省の通信速度計測のガイドラインのように、内容を整備して、決まったルールで調査したほうがいいのではないかと思う」(小林氏)と提案している。