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ペダルを漕がない「電動サイクル」 免許不要で改正道交法対応
2023年6月26日 17:22
glafitとOpenStreetは、7月1日に施行される改正道路交通法によって誕生する新車両区分「特定小型原動機付自転車(特定原付)」に適合した車両「電動サイクル」を発表した。免許不要・着座姿勢・ペダルレス(スロットル操作)で走行するタイプで、OpenStreetのシェアモビリティとして2024年1月から提供開始予定。
原動機付き自転車(原付)は、7月1日に施行される改正道路交通法により、2つの区分に分けられる。免許必須の「原動機付自転車(一般原付)」と、免許不要で16歳以上であれば運転できる「特定小型原動機付自転車(特定原付)」の2つで、今回発表された「電動サイクル」は特定原付に区分される。
特定原付は、原付よりもさらに小型の自走車両という位置づけとなる。運転免許不要、16歳以上で利用できるほか、ヘルメットは努力義務、サイズは190×60cm(長さ×幅)以内といった基準がある。車道は制限時速20km、自転車通行可の歩道は制限時速6kmであれば走行が可能
現状、特定原付に該当する車両はいわゆる「電動キックボード」のみだが、glafitが電動サイクルを投入することにより、特定原付で初めて「着座姿勢」で走行できるタイプが登場する。
電動サイクルは免許返納後の高齢者の利用も想定。自転車のように座って走行するが、電動サイクルはフル電動で「ペダルを漕がないこと」を特徴としている。自転車のペダルに相当する部分は「ステップ」で、足を”置く”ためのもの。
右手側ハンドルのスロットル操作で走行を制御。フル電動なためスムーズな走り出しを実現。高齢者の自転車操作で問題となる、漕ぎ出しの踏み込みでバランスを崩す、脚力不足で速度低下、といった不安定さを解消した。
また、立って乗るキックボードとは異なり、着座姿勢なため安定して走行でき、疲れにくく適応距離も長くなるという。
改正道交法の基準を満たすペダルレス
見た目は自転車のようだが、ペダルを漕がないフル電動設計なのは、改正道路交通法で定められた特定原付の車体基準に則るため。
特定原付の車体基準には「原動機として、定格出力が0.6kW以下の電動機を用いること」、「時速20kmを超える速度を出すことができないこと」という項目がある。
ペダルで漕げる設計にすると人力走行が可能になり、時速20kmという速度制限を越えてしまう可能性があるため、道路交通法の特定原付の基準を満たさなくなるという。
glafit 代表取締役CEO 鳴海禎造氏は「特定原付の基準は、道路運送車両法と道路交通法のそれぞれで定義されています。ペダルがついた車両は道路運送車両法では保安基準が満たせてしまうことがあり、性能等確認済みのステッカーのある車両で、ナンバーの交付も受けることができるのです。しかし、道路交通法の基準は満たしていないため、その車両で公道を走行すると違反となり、交通取締りの対象となります」と説明。
特定原付の速度制限は、車道は20km、自転車通行可の歩道は制限時速6kmであれば走行可能。電動サイクルでは時速20km、時速6kmにそれぞれ切り替えられ、時速6kmモードでは自転車通行可の歩道を走行できる。
これも改正道路交通法に則っており、走行中に速度設定を変更することは不可。
特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について(警察庁)
電動サイクルの試作機も用意されており、実際に試乗してみた。運転免許を持っているが原付を運転したことがない筆者でも、問題なく電動サイクルを運転できた。
時速20kmモードはちょうど良い速度だったが、6kmはかなりゆっくりに感じた。歩道走行というよりは、時速20kmで車道走行する方が向いていそうだ。
OpenStreetでのシェアモビリティ事業の詳細は未定だが、交通ルールや16歳以上の利用に関する本人確認、事故対策などのガイドラインを策定中。走行中にバッテリー切れを起こさないよう、貸出前に目的地までバッテリー残量が足りるかをアプリでチェックできるような体制も整える予定としている。