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Fire TV内蔵テレビは「成功」 ヤマダ×アマゾン2年目の期待と課題
2023年6月15日 13:00
Amazonとヤマダホールディングスは、Fire TV搭載の第2世代「FUNAI Fire TVスマートテレビ」を7月1日から順次発売する。32型から55型までの4モデルを展開し、価格は43,890円~109,890円。全国のヤマダ電機とAmazon.co.jpのヤマダデンキで独占販売する。
Prime Videoなどストリーミングサービスに対応する「Amazon Fire TV」の機能をテレビに統合したFire TV搭載テレビ。日本にでは、2022年からAmazonの協力のもと、FUNAIのみが展開しており、今回第2世代モデルにアップデートされた。
第2世代のポイントは、音質と画質の強化、そしてリモコンを一新したことなど。機能面では地道な“マイナーチェンジ”にみえる第2世代のFUNAI Fire TVだが、独占販売するヤマダデンキはよれば「自信作」という。なぜなら、昨年ヤマダで最も売れたテレビであり、ユーザーニーズにしっかりハマったという手応えを感じているから。第2世代FUNAI Fire TVといまのテレビ市場について、ヤマダホールディングス 代表取締役兼副社長 執行役員COOの村澤圧司氏、船井電機 国内商品企画部 部長 瓜巣敬喜氏、Amazonデバイス Fire TV事業部 事業部長 西端明彦氏に聞いた。
第2世代になったFUNAI FIRE TVスマートテレビ
まずは基本仕様を見ていこう。「FUNAI Fire TVスマートテレビ」は、テレビ放送とFire TVの動画・音楽サービスをシームレスに楽しめる点が特徴。船井電機が開発・製造し、FUNAIブランドテレビとしてヤマダで独占販売する形となる。
新モデルでは、音質と画質を強化したほか、リモコンを一新。TVerとABEMAのダイレクトボタンを新たに追加したほか、チャンネルキーの大型化や入力切替ボタンの追加などで、“普通のテレビ”として使いやすくした。
4Kテレビの「F360シリーズ」は、55/50/43型の3モデル展開で、4K/3,840×2,160ドットの液晶パネルと新開発の画質エンジン「4Kクリアピクスリマスター」を搭載、チューナーはBS 4K×2、BS/CS×2、地上デジタル×2でUSB HDD録画に対応する。USB HDDは別売。スピーカー出力は10W×2ch。
32型の「FL-32HF160」は32型1,366×768ドット液晶パネルを搭載し、チューナは地上/BS/110度CSデジタル×2。USB HDD録画に対応する。スピーカー出力は5W×2ch。
32型HD「FL-32HF160」:43,890円
43型4K「FL-43UF360」:76,890円
50型4K「FL-50UF360」:87,890円
55型4K「FL-55UF360」:109,890円
テレビとFire TVをシームレスに利用できる点が特徴。ホーム画面では、Prime VideoやNetflixなどのコンテンツに並ぶ形で、地上/BSデジタル放送のチャンネルも表示され、リモコンのカーソルキーで選局できる。
一般的なテレビにFire TVをHDMIで接続した場合、チューナとHDMI入力の「入力切替」が必要となるが、Fire TVを内蔵したことで、メインメニュー上でテレビ放送のサムネイルと動画プレビューが表示され、チャンネルを選ぶだけで放送中の番組の中身がわかる。この使いやすさをFUNAI Fire TVの特徴としてアピールしている。
USB HDDを追加し、番組録画にも対応。番組表(EPG)からの録画予約が可能で、録画番組もFire TVのメニューからアクセスして再生できるなど、Fire TVの機能とテレビ放送の機能を統合している。また、Fire TVへのログインは6つまでのプロフィールを登録でき、家族それぞれに専用プロフィールなど設定可能。プロフィールごとに「見ていたチャンネル」「視聴中のコンテンツ」などを記憶し、次の利用時に呼び出せる。
第1世代からの比較では画質をアップデートしたほか、特に「音質」を強化した。新たにバスレフ型のスピーカーを搭載し、低音を強化。これはユーザーから改善を望む声が多かったためという。
音声アシスタントの「Alexa(アレクサ)」も統合し、音声だけでテレビのチャンネル変更も可能。「アレクサ、NHKを見せて」といった音声操作でチャンネルを切り替えられる。
テレビ放送やPrime Videoのほか、Netflix、YouTube、DAZN、TVer、Disney+、Hulu、ABEMAなどのサービスに対応。音楽・ゲーム・レシピなどのアプリも追加できる。また、Prime Videoなどの配信コンテンツだけでなく、録画番組もアレクサから音声検索できる。
リモコンは従来モデルより大型化し、チャンネルボタンも大型化。入力切り替えボタンを新設したほか、配信系のダイレクトボタンもPrime Video、Netflixのほか、TVer、ABEMAを追加した。追加したサービスは「ユーザーのニーズにあわせて判断した」という。HDMI入力は3系統。Bluetooth音声出力(ヘッドフォン対応)やIEEE 802.11ac無線LANなどを搭載する。
FUNAI Fire TVの成功。1年目でシェア5%獲得
ヤマダホールディングス 村澤圧司 代表取締役兼副社長によれば、第1世代のFUNAI Fire TVは、販売好調でユーザーからも非常に高い評価を得たという。
「若者のテレビ離れ、テレビ市場の縮小の中、『どうしたらテレビという商品を楽しんでいただけるか』。まずそこを考え、テレビ放送だけでなくネット動画も楽しめる商品にしました。昨年2月の会見では、25万台という目標を示しました。私は正直、『高すぎる数字』を出してしまったと思っていましたが、現在累計21万台でほぼ計画通りにきています。現在のテレビ市場は縮小傾向で年500万台を割り込んでいます(2022年のJEITA統計では年間486.6万台)。そのうちの20万台です。ネット接続モデルに限れば400万台未満ですから、その中の20万台とすると、FUNAI Fire TVの4モデルだけでシェアは5%になります。市場でも評価をいただけたと感じています」(村澤氏)
では、評価された部分とはどこだろうか?
村澤氏は、「サクサク感」と「価格」と説明する。
「とにかくサクサク動くというスピード感。そしてコスパですね。評価頂いているのは特にその2点です」
ネット動画対応はFUNAI Fire TVの大きな特徴だが、実際のユーザー環境においては「テレビ放送」の利用比率のほうが多い。ただし、ネット接続率・利用率は、「他のテレビと比べるとかなり高い」とのこと。テレビでは、一般的には上位モデルのほうがネット接続率が高く、FUNAI Fire TVのような手頃なスタンダードモデルは高くない傾向がある。しかし、FUNAI Fire TVは「数字は出せないが他社とも比べても相当に高い」という。
特に最も小型の32型のネット接続率は「(同サイズのテレビより)突出して高い」とのこと。ネット動画の利用は、現在のテレビにおいて欠かせない機能となっており、そこに「ほとんどFire TV」の操作性=サクサク感が評価を得ているとする。
店頭においても、「YouTubeは見られるのか? 」など、ネット動画対応を求める声は高まっており、店員への相談の「定番」になっている。店側としても、ネット動画に意欲の高い客に対し、FUNAI Fire TVは「おすすめしやすいテレビ」だという。
「音」「リモコン」 第1世代の反省
サクサク感とネット動画対応が評価されたFUNAI Fire TV。しかし、第1世代においては反省点もあったという。
一つは「音」について。購入者からからは「音はもう少し良くして欲しい」「小さく聞こえる」といった声が上がっていたことから、第2世代では、バスレフ型のスピーカーを搭載。特に低音を強化している。
もうひとつがリモコンだ。
前述のように、ネット動画とテレビ放送をシームレスに扱えるのがFUNAI Fire TVの特徴で、リモコンの丸いナビゲーションボタンを使って、左右のスクロールによりネット動画とチャンネルを意識せずにスクロールして切り替えられる。そのため、第1世代のリモコンは12キーのチャンネルボタンがかなり小さなものになっていた。
多くのユーザーは、Fire TV風のシームレスな操作を評価しており、「非常に評判がいい」(船井電機 瓜巣氏)ものの、従来のテレビ的な「チャンネルボタンでの操作」を求める声も少なくなかったという。そこで、今回はチャンネルボタンを大型化。同時に入力切替ボタンも新設した。
ある意味「普通のテレビ」として使いやすくしただけなのだが、テレビ放送が最もよく使われる機能であることも事実。より多くのユーザーの声に応えたアップデートとなる。
なお、リモコンに従来のPrimeVideとNetflixだけでなく、TVerとABEMAのダイレクトボタンも追加した。追加したサービスは「ユーザーのニーズにあわせて判断した」とのことだが、テレビ・ネット動画の双方でユーザーの声を取り入れて改善している。
販路は「圧倒的にヤマダ」 その理由と課題
ネット動画に強く、Amazonとヤマダが組んで開発したFUNAI Fire TV。ネット販売との相性も良さそうだが、現状の販路は「圧倒的にヤマダの店舗」だという。
ヤマダの独占モデルのため、「会社として店頭でもかなりプッシュしているのは事実」だが、「同時にお客様に『選ばれた』とも感じている」という。
「サクサク感」や「ネット動画対応」など、店頭で実際に試し、体験して初めてわかることが多い。お店で使ってみることで、製品の良さを伝えやすい。このお店でのわかりやさもFUNAI Fire TVのヒットの一因だという。
サイズ別では32型が半数強と最も多く、台数ベースではサイズ順で売れている。ただし、郊外の店舗のほうが大型が売れる傾向があるという。
ヒットモデルとなったFUNAI Fire TVだが、FUNAIのテレビラインナップでは、スタンダードクラス。FUNAIでは、有機ELやより大型の液晶など上位モデルなど展開しており、他のテレビメーカーもより大型・高付加価値なモデルを訴求している。FUNAI Fire TVを、より大型や上位モデルに展開する可能性はないのだろうか?
村澤氏は「船井もAmazonもまずは多くの人に使っていただきたいと考えている。したがって数が一番多く出るインチサイズ・価格帯を狙っています。第1世代がうまくいったこともあり、今年に関しては大きく変える予定はありません。ただ、将来的には有機ELとか他にもデバイスがありますので、検討はしていきます」とする。
一方で、こうも語る。
「大型や上位モデルも考えなければならないと思います。ただし、テレビ市場は現状大型があまり売れていない。そこに新しいものをどんどん投入するのは経済的ではない。今のユーザーニーズは“ここ”にあります。FUNAI Fire TVは、『お客様にとって本当に使い勝手がよくて、楽しいテレビ』が開発コンセプトです。いまのテレビは画質は十分にキレイで、それ以上に“磨きがいが”あるはず、というところからスタートしました。ヤマダはお客様の声をダイレクトに聞けるという強みがあります。その声を船井さんとAmazonさんに共有し、テレビづくりに活かしていけます。そこが3社協業の最大のメリットで、第1世代の21万台の経験を活かして、第2世代はより良いテレビが出来たと思います」
第1世代の成功と反省を踏まえて登場した第2世代FUNAI Fire TV。今年の販売目標について、村澤氏は具体的な数字の言及を避けたものの、昨年掲げた25万台/年を「下回ることはない」という。
「今年、市場規模が今年さらに減る可能性があります。しかし、それでも台数も確保して、シェアも上げていきたい。特にネット接続テレビとしてのシェアは伸ばしていきたい」
今年の課題として、村澤氏が認めるのは「ネット販売」だ。
「昨年はヤマダ店舗での販売が圧倒的に多かった。ネットもいくつかの仕掛けは試しましたが、まだ足りていなかった。今年はネット販売は、伸びしろだと思っています」
具体的な施策への言及は避けたが、テレビ“開発”だけでなく“販売”においてもAmazonとの連携を強化していくようだ。