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NTT、市販デジカメ画像からコンクリートの劣化検出

劣化計測技術の構造

NTTは、コンクリート構造物の撮影画像から構造物に発生した劣化を検出し、その大きさを自動的に計測できる技術を確立した。実際の設備での検証では、誤差10%未満の精度で劣化の大きさを計測できたという。

市販のデジタルカメラで構造物の画像を撮影することで劣化の大きさを自動計測できる。現行のメジャーや専用車両を用いた計測作業が不要で、点検稼働・コストを削減可能。高度経済成長期に集中的に開発された道路やトンネル、橋梁、下水道などは老朽化が進んでおり、その維持管理コストが社会的な課題となっているが、インフラ設備点検業務の高度化により、そうした課題解決に貢献していくのが狙い。

市販のデジタルカメラで撮影したコンクリート構造物の画像から、劣化の検出と計測が自動的にできる劣化計測技術。画像から劣化の実際のサイズ(実サイズ)を計測するには、劣化の場所(画素領域)を検出することと、画像中の大きさを実サイズへ換算するための尺度(画像スケール)が必要になる。画像スケールとは、実サイズ1cmに相当する画素数のこと。この数値を算出することで画像に写った劣化部分の大きさが分かるようになる。

劣化計測技術は、劣化検出技術とスケール推定技術の2つからなる。劣化検出技術では、コンクリート構造物に発生する各種劣化(ひび割れ・剥離・露筋・漏水)の画素領域を検出することで画像における劣化の大きさを把握。スケール推定技術では、コンクリートの表面情報から画像スケールを算出する。

画像スケールの検出は、コンクリート表面の骨材や空隙等の凹凸から画像中における大きさを解析することで推定するが、実際には屋外や地下での汚れが付着し、コンクリートの表面情報が画像から失われ、推定精度が低下してしまう。これを独自アルゴリズムにより解析することで、汚れが付着した画像からでも高精度な画像スケールの推定が可能になった。

汚れの程度は見た目からではわからないが、今回開発した技術では、撮影画像を矩形領域に分割後、特徴の異なる2つのAIを使用して矩形領域を解析することで、汚れが少ない矩形領域のみを抽出し、画像全体のスケールを推定できるようになった。

1つめのAIでは、汚れが少ない矩形領域が入力された場合、正解の画像スケールに非常に近い値を推定できるが、汚れが多い矩形領域では推定値が正解から大きく外れる。2つめのAIでは、汚れの程度にかかわらず正解の画像スケールに近い数値を推定する。これらを組み合わせることで、2つのAIの値が近い場合は、汚れが少なくスケール推定に適した領域、離れた場合は汚れが多くスケール推定に適さない領域として判断する。

通信用トンネルを対象とした3,000枚の画像から画像スケールを推定したところ、誤差は5.7%で、既存技術の精度より約4割向上したという。

実際に通信用トンネルで発生した30本の露筋(コンクリート構造物の劣化の一つ、コンクリート内部の鉄筋が腐食により表面に露出すること)を対象に性能検証を行なったところ、露筋の実寸長さの平均誤差は9.4%、最大の誤差は17.8%となった。既存技術で発生した最大誤差である52.7%の露筋では、誤差17.1%(約7割抑制)で計測できており、高い精度が確認された。これにより実運用の補修要否や優先度の判断に活用できるとしている。

今後は、道路やトンネル、橋梁等などにも活用の幅を広げ、社会インフラの維持管理におけるコスト増加や技術者不足等の課題解決に貢献していくという。