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大河ドラマ「どうする家康」がより楽しくなる特別展 三井記念美術館でスタート!
2023年4月18日 08:00
三井記念美術館では、4月15日から6月11日の期間で、NHK大河ドラマ特別展「どうする家康」が開催されている。徳川家康が大河ドラマで単独主役となるのは1983年の「徳川家康」以来40年ぶり。同展では、その家康が生まれてから亡くなり、東照大権現として祀られるまでを、遺愛品や関連する刀剣、合戦図屏風、絵画、書籍などで追う企画。
開催に先立つプレス内覧会では、同館の学芸部長・清水実氏がギャラリートークを行なった。同氏によれば、今回の特別展は三井記念美術館の後に、岡崎市美術博物館と静岡市美術館へと巡回される。だが展示品に、国宝を含む重要文化財の指定品が少なくないため、同じ展示品を3館で展示するのは、非常に難しいという。そこで、各博物館または美術館で異なる展示品も多く、それだけ各館で特色のある展示となっているとする。
「3館で共通の図録がありますが、その図録には約280点が掲載されています。そのうち約120点が当館で展示されますが、その特徴は、屏風が多く展示されることです」
屏風に関しては、同館所蔵の《大日本五道中図屏風》も展示。同屏風は、江戸から長崎までの街道を描いた鳥瞰図的な絵図。街道の様子が描かれているとともに、家康と関わりの深い岡崎城や浜松城、駿府城のほか関ヶ原の戦いの布陣まで描かれている。
また刀剣に関しては、刀剣の専門家が担当している静岡市美術館には「かなりの名刀が集まる」と語りつつ、三井記念美術館もまた、 家康の愛刀《太刀 無銘 光世作 切付銘 妙純傳持 ソハヤノツルキウツスナリ》、《脇指 無銘貞宗》、国宝の《短刀 無銘正宗(名物 日向正宗)》(以上は前期展示)や、《短刀 無銘貞宗(名物 徳善院貞宗)》、《脇指 無銘 伝行光》(以上2点は後期展示)など、充実のラインナップを誇っている。
また清水氏によれば、今回は新たな展示ケースを採用する初の特別展だという。
「新しい展示ケースでは、刀剣の刃文まで、よく見えます。ちょっと他のところにはないくらいだと自負しておりますので、その美しさを堪能していただきたいです」(学芸部長・清水氏)
《日向正宗》など国宝を含む名刀が展示
三井記念美術館の特別展では、最初の展示室「1」に、久能山東照宮の所蔵品が集められている。
前述の清水氏は「亡くなるまで身近において使っていた品々です。それが二代将軍の秀忠によって、久能山東照宮に奉納されました。久能山東照宮所蔵の遺愛品は、徳川関係資料として約250点が一括して重要文化財に指定されています」と語る。
徳川家康は大御所として、駿府(現在の静岡市)で晩年を過ごしている。そして元和2年(1616年)の数え75歳の時に、駿府城内で亡くなった。
東照宮は全国各地にあるが、久能山の東照宮は、徳川家康の遺言により埋葬された地という意味で、中でも特別な場所だ。
「家康は名品をたくさん所持していましたが、こちらに展示されている身の回りで使っていたものは、割と質素だったというのが特徴です」(学芸部長・清水氏)
展示室で、まず目にするのが《脇指 無銘貞宗》だ。相模国の鎌倉で活動した刀工、貞宗によって作られたと伝わる。
「今回、久能山東照宮から刀剣3振りをお借りしておりますが、ひと振りは7室で展示している、ソハヤノツルキウツスナリという銘が入った刀です。これは家康が亡くなる直前に、久能山東照宮の内陣(神社の本殿)に切っ先を西に向けて祀るよう指示したと伝わっています。
そのソハヤノツルキウツスナリと一緒に脇指が2つ祀られていたのですが、そのうちの1つが、この《脇指 無銘貞宗》です」(学芸部長・清水氏)
実際に展示ケースに近寄ると、鉾と三鈷剣と梵字の彫物だけでなく、のたれ刃の様子がくっきりと見られる。また、展示室「1」の所蔵品は、1点が1つのケースに収められ、360度から眺められる。そのため表だけでなく、陰になって見づらいが、脇指の裏まで見られるのがうれしい。
その次に見られるのが、重文の《火縄銃》。
「(大御所の)徳川家康は駿府城の城下に、野田善四郎清堯(きよたか)という鉄砲鍛冶を呼び寄せて、火縄銃を作らせました。家康が自ら使っていたもので、火薬入や玉入、火縄まで一緒に伝わっているんですよね。こうしたものまで伝わっているのは、やはり久能山ならではと言えます」(学芸部長・清水氏)
アクリルのケースで隔たれているとはいえ、あの徳川家康が自ら触れたという、木製の銃床やトリガーなどを見ると、歴史ファンとしては興奮せずにはいられない。
その後も展示室「1」には、《唐物茶壺》や《天目茶碗》、何本かの筆までがセットで残る《黒柿硯箱》、それに《洋時計》などが続く。
そして展示室「2」には、たった一振りの脇指が控えている。展示されているのは、三井記念美術館所蔵の《短刀 無銘正宗(名物 日向正宗)》。日向正宗(ひゅうがまさむね)は、鎌倉の刀工「正宗」によって作られたと伝わる、国宝に指定された逸品。なお正宗は、前述した《脇指 無銘貞宗》を制作した貞宗の父とも言われる。
ちなみに無銘(むめい)とは、刀身に制作者の名が記されていない(刻まれていない)ということ。ただし、刀剣の場合は無銘でありつつ、特定の刀工の作と伝わっている、もしくは鑑定済みである品が多い。
学芸部長・清水氏は、《短刀 無銘正宗(名物 日向正宗)》の由来を次のように解説。
「水野日向守(ひゅうがのかみ)勝成が関ケ原の合戦の時に、石田三成の妹婿の福原直高からぶんどったという……戦利品的なもので、水野日向守の官名から《日向正宗》と呼ばれています。正宗の短刀の中では一番良いものと、昔から定評のあるものです」
なお同刀は、刀剣育成シミュレーションゲーム「刀剣乱舞ONLINE」でキャラクター化されている。今回は、前述した《太刀 無銘 光世作 切付銘 妙純傳持 ソハヤノツルキウツスナリ》とともに、刀剣男士の等身大パネルが、展示されることになっている。
充実した合戦図屏風
三井記念美術館の特別展「どうする家康」は、学芸部長の清水氏が冒頭で語った通り、展示期間が前期と後期で別れるものの、合戦図が描かれた屏風などが充実している。
まず通期で展示されるのが、同館所蔵の《大日本五道中図屏風》。江戸から京都を経て大阪から長崎までが、俯瞰して描かれている壮大な屏風。前半の江戸から京都までは、展示室「4」に展示され、江戸城こそ描かれていないが、徳川家康とゆかりの深い浜松城や駿府城、久能山東照宮、岡崎城、桶狭間や大高城、そして関ヶ原など各所が見られる。特に関ヶ原では、合戦の布陣図まで記されているのが興味深い。
その他、前期には名古屋市博物館の《長篠合戦図屏風》や《小牧長久手合戦図屏風》、大阪歴史博物館の《関ヶ原合戦図屏風(津軽屏風)》、東京国立博物館の《大阪冬の陣屏風》が観られるほか、堺市博物館の《聚楽第行幸図屏風》が展示されている。
なお前期と入れ替わりで、後期では豊田市郷土資料館の《長篠・長久手合戦図屏風》、大阪城天守閣の《関ヶ原合戦図屏風》、出光美術館の《大阪夏の陣屏風》のほか、堺市博物館の《洛中洛外図屏風》が展示される。
特に堺市博物館の《洛中洛外図屏風》には、徳川方の象徴である二条城、豊臣方の象徴である大仏殿、それに同時期(江戸時代・17世紀)に描かれた洛中洛外図では珍しい、伏見城も確認できる。
最後の展示室「7」には、大河ドラマ「どうする家康」でおなじみの、今川義元から下賜された《金陀美具足(きんだみぐそく)》や、久能山東照宮の内陣に祀られた《太刀 無銘 光世 切付銘 妙純伝持 1口 ソハヤノツルキウツスナリ》とその拵(こしらえ)などを展示(いずれも前期)。
放送中の大河ドラマ「どうする家康」では、現在、姉川の合戦前の様子が描かれている。同ドラマは、これまでにない徳川家康の描かれ方が話題だが、これから織田信長や豊臣秀吉(現在は羽柴秀吉)との関係もどんどん変わっていくはず。
三井記念美術館の特別展を観ると、そんなヘタレの徳川家康がどんな合戦を経て、征夷大将軍へと上りつめ、さらに東照大権現……神君家康として祀られるまでになるのかを、予習または復習できる。同ドラマを、より楽しむために、必見の特別展だと言える。
企画展名:NHK大河ドラマ特別展「どうする家康」
会期:2023年4月15日(土)~6月11日(日)
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日※5月1日(月)は開館
会場:三井記念美術館
住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階
入館料:一般 1,500円、大学・高校生 1,000円、中学生以下無料