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民間の宇宙開発支援を本格化させる三井不動産 日本橋に交流拠点

現在月に向かっているispaceのランダー(1/5スケールの模型)。日本橋の管制室から制御されている

三井不動産は、宇宙関連の有志が集まって設立した一般社団法人「クロスユー」の活動を4月から本格的に開始する。三井不動産が保有する東京・日本橋のビルに交流施設を整備して、宇宙開発ベンチャーや宇宙技術を利用したい企業が繋がれるようにして活性化を図る。クロスユーの会員募集は2月13日から開始している。

三井不動産は宇宙分野を戦略カテゴリーとしており、JAXAとの連携協定で宇宙ビジネスの創出活動を行なっている。2019年から日本橋を拠点として、宇宙スタートアップの活動を支援し、人脈形成の場を提供したりイベントを開催したりしている。クロスユーはそうした活動を本格化させるもので、非営利で法人化することで会員制や活動・交流拠点を整備。加えて、一般の民間企業が地上の課題解決のために宇宙産業の技術を利用したいという、非宇宙企業の参入も促進できるプラットフォームと位置づけている。

クロスユーの会員企業に対しては、JAXAをはじめ大学などや企業、スタートアップ、関連団体からなる人材がサポートやアドバイスを提供する。

新拠点 X-NIHONBASHI BASE

三井不動産は日本橋を宇宙産業共創拠点と位置づけており、4月には交流施設「X-NIHONBASHI BASE by 三井不動産」(クロス ニホンバシ ベース)を日本橋アイティビルの3~4階にオープンする。近隣の福島ビルにあった拠点が街区再開発で営業終了になるため、その後継施設としても位置づけられる。コワーキングスペースやラウンジを備えており、40名程度の小規模なイベントスペースとしても活用できる。ここにはクロスユーのオフィスも併設される。

X-NIHONBASHI BASE

JAXAやispaceも入居 X-NIHONBASHI TOWER

三井不動産はすでに日本橋三井タワーの7階に「X-NIHONBASHI TOWER by 三井不動産」(クロス ニホンバシ タワー)を2020年にオープンしており、こちらは最大150名を収容可能なカンファレンススペースやコワーキングスペース、オンライン配信スタジオが用意されている。施設内にはJAXAの新規事業開発を支援する部署がオフィスを構えるほか、民間の宇宙企業であるispaceの管制室が設置されており、現在月に向かっているランダー(無人探査機)の制御が行なわれている。

X-NIHONBASHI TOWER、カンファレンススペース
会員が無償で利用できる撮影スタジオも
産官学の拠点やJAXAが入居
ispaceの管制室も入居。月にランダーを向かわせているミッション中の期間につき、ブラインドが下ろされていた
月に向かっているランダー。民間では世界初の月面着陸を計画
今後計画されている月面探査機

日本橋に宇宙企業が集う

三井不動産がなぜ宇宙なのか。日本橋に賑わいを取り戻すべく1990年代後半から活動を開始した「日本橋再生計画」では、地元に製薬企業が多かったことからライフサイエンス分野に着目し、不動産にとどまらない産業デベロッパーとして活動。その取り組み「LINK-J」に多くの会員が集まり、JAXAもライフサイエンスの観点で加盟したことから、宇宙産業との関わりが始まったという。

その後、三井不動産はJAXAと連携協定を締結し、日本橋のビルにJAXAの新規事業開発の部署が入居するなどして、日本橋に宇宙産業の産官学が集まる契機を作った。アジア最大と謳う宇宙ビジネスイベントも「日本橋スペースウィーク」として開催している。

三井不動産 取締役 専務執行役員(4月から代表取締役社長)、クロスユー専務理事の植田俊氏は、「宇宙は夢ではなく現実。五街道の起点になった日本橋から、六本目を宇宙に向けて作っていきたい。宇宙産業はこれまで国家プロジェクトだったので、(民間の)伸びしろはすごくある。若い人達の妄想・構想が実現していくことに期待している」と、民間の宇宙開発を日本橋から活性化させていきたいという意向を語っている。

三井不動産 取締役 専務執行役員、クロスユー専務理事の植田俊氏