ニュース
“ロボットフレンドリー”で惣菜盛り付け自動化。経産省らが推進
2022年3月30日 14:01
経済産業省、日本惣菜協会は共催で「“ロボットフレンドリー”な惣菜製造自動化」に関する記者発表会を開いた。経済産業省が推進する「令和3年度 革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」に採択された日本惣菜協会が選定した協力企業8社と、惣菜製造企業7社で開発したロボットシステムによる惣菜盛り付け等のデモが行なわれた。
開発されたロボットは2種類。Team cross FA(チームクロスエフエー)とコネクテッドロボティクスが中心となって開発した「惣菜盛付ロボットシステム」は、ポテトサラダやマカロニサラダの定量盛付けを行なうロボットで、マックスバリュ東海の長泉工場に3台が導入されている(まもなくラインに投入される予定の今回の展示機も含めると4台)。1台で1時間に250パックを作ることができる。
アールティが中心となって開発した人型協働ロボット「Foodly(フードリー)」は、唐揚げやミニトマトなどの盛り付けを行なう。イチビキのイチビキ第2工場、ヒライ熊本工場、藤本食品岐阜工場に、各2台ずつが導入された。それぞれの現場のラインで、人と並んで使われているという。
このほか、グルーヴノーツが中心となって開発したのが、量子コンピュータ(量子アニーリング方式)を用いることで人員のシフト計算を高速化するシステムと、AIを使って需要(注文量)を予測するモデルの開発。こちらはマックスバリュ東海長泉工場と、グルメデリカ所沢工場に導入された。このほかユーザー企業としてデリカスイト、ニッセーデリカ、ヒライが名を連ねている。
ロボットのコストを下げて導入しやすく
はじめに経済産業省 製造産業局 ロボット政策室長の大星光弘氏が「少子高齢化とコロナの影響で人手不足はよりいっそう大きな問題になり、人手がかかる分野はロボットへの期待が大きくなっている。経産省では開発側と運用側が一体となって議論を進めて『ロボットフレンドリーな環境』の実現に努力しているが、今回、開発たものを現場に入れることができた。食品分野においてロボットが導入されるきっかけになれば人手不足の解消と生産性向上に貢献できるのではないか」と挨拶した。
続いて「ロボットフレンドリーな環境構築」事業の概要について、同 室長補佐(統括)の福澤秀典氏が解説した。福澤氏はロボット導入がなかなか進まない理由として、現在は各社が導入環境ごとにシステムを開発している結果、他に使い回しが難しく、使おうとしてもオーバースペックで高価格になってしまっていることを指摘。特に、今後のロボット導入が期待される食品などの分野ではコストは大きな課題だ。いっぽう、ユーザー側が業務フローやシステム環境をロボットに合わせて変更することができれば、ロボットが導入しやすくなると全体コストを下げることができるし、メーカーもスケールメリットが出せるようになるのではないか。これが経産省が提唱する「ロボットフレンドリーな環境」という考え方だ。
そのために経済産業省では、人手不足が深刻化している「施設管理」「小売」「食品製造」「物流倉庫」の4分野について、ロボットのリーディングユーザーを核に、システムインテグレーター等が集い、ロボフレな環境構築に向けた検討を行なう場として2019年に「ロボット実装モデル構築推進タスクフォース」を立ち上げ、検討結果を取りまとめている。
食品製造では惣菜・お弁当など「中食」の盛り付け工程は自動化の難易度が高く、工程の大半に人手が使われている。一方、人手不足への対応、労働生産性向上、工場における三密(密閉・密集・密接)回避のためには、盛り付け工程を自動化し、無人化・省人化を目指すことが必要だ。
しかしながら、食品は柔軟・不定形であり、高速で見栄え良く盛り付けることは、ロボットにとっては極めて難易度が高い。高度な技術を活用するとシステム全体が高コストとなってしまい、現場実装が進まない。そこで導入しやすい安価なロボットシステムを開発するとともに、ロボットにとって、盛り付けしやすい方法・掴みやすい包装容器の在り方等を考慮した「ロボットフレンドリー」な環境を構築することを目指すに至った。
具体的には今回発表したロボットに搭載されたような廉価かつ脱着しやすいハンドや、シフト計画システムなどの開発を目指した。そのほか、廉価なアームロボットやトップシール機の開発も手掛けていく。2022年度予算額は9.5億円で、2024年度までに中小企業への導入を目指している。
最後に福澤氏は「ロボット導入を進めるためには、サービスは多少いびつでも、それを受け入れる寛容さが重要だ」と強調した。システム開発だけでなく、受け入れる人側のほうも含めたロボットフレンドリーな考え方が必要だという。
業界共通課題は皆で解決
この事業を推進する上で選出されたのが、600社強の惣菜関連企業の会員を持つ日本惣菜協会だ。プロジェクトの全体説明は日本惣菜協会 AI・ロボット推進イノベーション担当フェローの荻野 武氏が行なった。食品製造業は労働生産性が低い。そのなかでも惣菜製造業は人海戦術で作業が行なわれているため機械化が遅れており、労働生産性が低く、人手不足に悩まされている。
現在、食品製造業従事者の人数は120~130万人。その半分近くが惣菜製造業で、5万社近くの会社がある。惣菜製造業は大変な作業で重労働であり離職率が高い。人を集めるのもコストが高い、なおかつ3密環境となっている。
機械化にはこれまでも様々な企業がトライしているが難しい。技術的に機械で盛り付けるのは難しいため多くの会社が失敗してきた。また、一部を最適化しても効果はでない。全体最適も必要だ。運用も容易でないと、実際の現場では使われない。そもそも高機能を追求しても値段が高くなりすぎると現場には導入されない。
今回のプロジェクトでは実現性を担保するために必要な技術を持っている企業に集まってもらった。荻野氏は、渋沢栄一が言っていたように「技術を合本」しようと考えたのだと述べた。さらに番重(ばんじゅう、食品業界で保存運搬に用いられる浅いふたのない箱のこと)や容器などもロボットが扱いやすいものにしていく。さらにユーザーの理解も得る。最初から100点満点は無理だと考えて、それでも現場でなんとか使っていこうという協力関係を作る。
全体最適については、シフト計算を対象にした。大きな惣菜工場では数百人が働いている。誰をどこに何時から働いてもらえるか配置する計算は、普通にやると計算爆発してしまう。そこで量子コンピュータ(量子アニーリング方式)を活用する。こちらも非常に簡単な操作で使えるようにした。そして、まずは惣菜製造業のみんなが使えるようにしようということで、無駄なスペックはなくすことで安価にすることを目指した。
荻野氏はこのプロジェクトの食品TC(テクニカル・コミッティー)では理念を大事にしていると述べ、「One for all, All for one」「一社がみんなのために、みんなが一つの志のために」と考えて進めていると強調した。今回の事業で、ユーザー企業7社と、メーカー各社で開発を行ない、「現場導入までやったのは業界初」と語った。
そして「これはまだ100点満点ではない。現場の人の協力によって共同作業ができている段階。価格も中小企業が買うには高いかもしれない。小型化も必要。遠隔保守も必要。処理能力も人並みで、まだ熟練工にまでは及ばない。対応する食材・具材も増やしていきたい。セル型化の検討も行なう。盛り付け以外の他の工程の自動化も進めたい」と語った。
マックスバリュ東海では3月25日から現場で運用されており、今後、さらなる処理能力向上や他の工程の機械化も進める。アールティの「foodly」はイチビキでは3月から加工に使われており3,000食のレトルト惣菜を出荷した。ヒライ、藤本食品ではロボフレ対応メニューなどを開発している。ヒライでは「ロボフレ弁当」を4月以降に販売予定。今後、ピッキング精度向上や使い方の検討を行なう。
全体最適化についてはユーザー5社の意見を聞くことで、みんなが使えるようにしていくことを目指した。合同投資、資本を合本することで5社でやることで負担が1/5になると考えたという。具体的には情報を入れて計算させると、現場向けシフト表がエクセルで出力されるというもの。「組み合わせ問題に対しては量子コンピュータが非常に優位性がある」と述べた。
需要予測については、まだ精度が90%程度であり、もっといろんなデータが必要だと考えて、各社が必要なデータを利活用しやすいようにデータレイクも検討中。これも効果をもっと出していくために、AIの注文量予測と、量子コンピュータによるシフト計算を連携させることでフードロスの低減と人件費低減に繋げていく。
荻野氏は、マックスバリュ東海の神尾啓治社長による「ここで競争する必要はなく、普及拡大することでさらなる低価格化を図り、業界全体の生産性を上げていきたい」というコメントを紹介し、「他社に対しても利他の精神、ロボットにも利他の精神を持つことが重要」と述べた。そして「惣菜製造業はみんなが困っている。ブランドの差別化では思い切り戦う。だが、みんなが困っているところは業界共通課題で協調領域。一緒になって助け合うという意識で続けていきたい」と語った。
7人体制を3人に削減した惣菜盛り付けロボット
このあと、各企業が開発したシステムを紹介した。Team cross FAとコネクテッドロボティクスが中心となって開発した惣菜盛り付けロボットシステムは、スカラー型のロボットを使ったシステム。導入によって、ロボット3台(まもなく4台)によってシフト7人体制を3人まで減らすことができた。実機を作る前にシミュレーションで動作検証・レイアウト検証を行ない、短期間のシステム開発を行なったという。今後、より安価なロボットを使って全体コストを下げる上でも、同社のシミュレーションが活かせるという。
Team cross FAプロデュース統括の天野眞也氏は「食品製造業をもっと魅力的な産業にするために自動化技術で貢献していきたい」と述べ、さらに前後工程の自動化を今後進めたいと語った。単純労働からクリエイティブな作業にシフトしてもらうことで、従業員の重労働を軽減し、満足度を向上させる。最先端技術の導入によって優秀な人材確保も、よりしやすくなる。「技術をフックにより魅力的な企業にすることで、さらなる業界の発展に寄与したい」と述べた。
そして「将来なりたい職業にパティシエや調理人が上がることは多いが、食品製造業が上がることは少ない。だが食品製造業を魅力的な産業にする一助となれれば。そのためにさらなるロボフレの認知を広げていくことが重要だ」と語った。
粘着性の高いポテトサラダを扱える簡単なハンドと検品システムも開発
惣菜盛り付けロボットシステムのハンド部分を開発したコネクテッドロボティクス 代表取締役の沢登哲也氏は「我々は日本のなかでも数少ない食品産業に特化したロボット技術を開発する会社」と自己紹介した。
同社はこれまでにそばロボットやフライドポテト、ソフトクリームロボットなどを開発しているが、今回は惣菜を盛り付けるロボットハンドと検品システムの開発を行なった。ロボット自体をコントロールしてロボットにスキルを実装するところに強みを持っていると述べ、惣菜を定量盛付けできるようにしたとアピールした。1台で複数品種の盛り付けが可能で、ポテトサラダのほかマカロニサラダなども扱えるという。惣菜を入れた食品コンテナやハンドは取り外して洗うことができるので、製造工程を清潔に保つことができる。
画像センサーは使っておらず、接触でワーク表面を検知し、ならしながら把持する、安価なシステムとなっている。把持する分量は任意に設定可能で、デモの場合の設定は130g、計量の誤差は10%程度。量が少なくなることはないという。大サイズや小サイズへの対応も、タッチパネルで簡単に変更できる。
なお、実際のラインではロボットが取ったあとに蓋かけをし、再度計量したあとにラベルが貼られる。ロボット1台の処理能力は1時間あたり250パック。4台入れると1時間あたり1,000パックということになる。
「ラストワンハンド」となるロボット
アールティは大学向けロボット教材や製造業向けソリューションを開発する会社。今回は食品工場向け自動化ソリューションを開発した。
「Foodly」は人間と同じラインで動かせる協働ロボットで、同社が2018年にプロトタイプを発表したロボット。その後、2020年に標準構成モデルを発表、他企業とのコラボモデルも発表している。人が使っている既存設備を生かし、設備投資を最小限にして人代替を行なえるのを特徴としている。今回はベルトコンベアで作業する状況を想定。通常は人がズラッと並んで、おかずを一品ずつ入れていく作業が行なわれているが、それをロボットが代替する。
「Foodly」の作業速度は1時間あたり600~900食。いっぽう、1,200食以上作っているところもある。ロボットには安全基準もあって速度が制約されているなか、どうやって現場サイドであわせていくのかも考えてもらったという。また盛り付けの順番、ロボットから見やすい角度なども現場で工夫。前後の工程をどう合わせるか、食品をどのように切ったらロボットが掴みやすい食材になるのか、メニューをどう構成するかなども工夫したという。
量子コンピュータでシフト計算、機械学習で需要予測
グルーヴノーツ 代表取締役社長の最首英裕氏は「従来のコンピュータはプログラムを組んで演算装置で一つ一つ計算をしていくが、組み合わせ最適化には難しい。量子コンピュータは物理的な現象によって答えを導く。事象を置き換えられる式を与えると答えが観測できるので、頑張って計算するものではない」と同社の量子アニーリングを使ったサービスを紹介。同社のサービスは組み合わせが多くて複雑なものに使われており、製造業、特に自動車が多く、そのほか物流、交通、金融、組み立て工程の最適化、輸送の最適化、車両編成の最適化などに用いられているという。「エネルギー式を作るところは計算しないといけないが、与えると答えが出るので、その答えを観測する。こういう装置を使ってお惣菜工場の現場をどう改善できるのかに取り組んだ」と述べた。
工場の課題はシフトだけではなくいろいろな部分があるが、人の働き方、人をどう配置するともっとも効率よくなるのかに取り組んだ。人を配置することをやる前には作業量の見積もりが必要だ。そのためには需要予測が必要になる。需要予測には従来型のコンピュータ、機械学習を使った。
デモと詳細説明は同社コンサルタントの田中孝氏が行なった。まず、惣菜業界全体が標準で使える仕組みを作るため、5社の協力のもと、どういう課題があるかを集めて、シフト計算のための標準モデル、注文予測モデルを作った。
シフト計算については、事前準備のために従業員の情報、どういった仕事があるか、どういった品目を作るのかといったことをマスター情報として準備する。作成と実行についてはPC画面のボタンを押すだけで、計算自体はクラウドで行なう。
最終結果は業務で利用していたようなエクセルフォーマットで返ってくる。計算時間は量子コンピュータ自体の計算時間は10万分の1秒程度だが、前後の範囲、どの範囲を計算するかやイジングモデルを作るためには計算リソースを使うため、全部でおおよそ10分程度。
このシステムにより、ベテラン社員が1日2時間くらいかけていた作業を10分くらいで行なえるようになった。いっぽう、需要予測は精度90%を実現。さらに精度は改善させることができるという。
グルーヴノーツのクラウドシステム「MAGELLAN BLOCKS」には、量子アニーリングを使う組み合わせ最適化問題を解く機能が含まれている。具体的には工程の最適化、積載の最適化、ルートの最適化、人のシフトを作るといった機能が標準搭載されている。マスターの情報をセットしてボタンを押すと、イジングマシンから答えが返ってくるという流れだ。
実際には、従業員の契約、どういうことができるかを示すスキルマップ、どのラインで何人必要かという情報を渡すと、シフト表が出力される。田中氏は実際のデータを示しながら紹介した。「MAGELLAN BLOCKS」ではフロー実行ボタンを押すだけで、どの人が何時から何時まで仕事をするといった計算が行なわれる。既にマックスバリュ東海、グルメデリカでは実際に試行運用を開始している。
グルーヴノーツの最首氏は、「量子コンピュータを使っているが、使う分には、画面に条件を入れて処理を依頼すれば動くので非常に簡単に使える」と語った。そして今後の話として「組み合わせ最適化を解くので、こういう条件のときにどうかという答えは出る。だが、その条件がそもそも間違っていたらどうなるのか。前提としている条件を是として考えていくわけだが、あくまでもそれは現状の改善でしかない。本当はもっと何かができるかもしれない。『もしかするとこの条件を考慮するからうまくいかないんじゃないですか』ということがいっぱいある」と語った。
そこで、顧客に対してより良い提案ができるのではないかと考えて、コンピューター上に仮想の工場や物流システムを作り、そこにものを流してみた場合、理想的にはどういう状況になるのかを計算させたりしているという。
そうするとたとえば、現実には80人程度で行なっている作業が、理想的には作業は16人くらいでできるといった結果が出るという。最首氏は「理論値と現実のあいだのギャップを明確にすることがとても重要」と述べ、「もう一歩進めると、『本当は理論的にはどこまでできるんだ』ということを確かめることが重要になる。いま社会は変化している。今までは当然だと思っていたことを忘れて、理論的にどこまでいけるかを明確にすることから、もう一度足元を見直してみることが大切なのではないか」と語った。
単純作業はロボットで
ユーザーサイドからもコメントがあった。マックスバリュ東海 執行役員商品本部 デリカ商品統括部長 兼 ダイバーシティ推進室長の遠藤真由美氏は、「多品目少量生産の800坪の工場で先駆的役割を担えるか不安だった。だが理念に共感を持って参加した。惣菜の仕事に従事する人の多くはほぼ女性。皆が単純作業だけではなく判断作業や価値のある作業にチャレンジできる企業風土や労働環境を作りたい。単純作業はロボットに任せて、価値ある判断業務は従業員がやっていくように棲み分けていきたい」と述べた。
そして「事業自体が短期間であり、現段階においては、まだ実験導入の段階。ロボット3台がいま工場にあり、工場長以下、パートリーダーが試行錯誤してPDCAを回している段階」だと述べた。要件は指定アイテム、指定SKUをロボット4機で1時間あたり1,000パックを偏差なくやる。これについてはまだ実験段階で、その達成に向けてこれから頑張っていく段階であり、まっとうしていきたいと語った。ロボットは3月25日から導入され、いまは1日あたり6時間で 5,000から6,000パックを作っており、遠藤氏は現段階は「要件定義を達成するかどうか。まずはワンステップをクリアしたというところ」と語った。
マックスバリュ東海では今後、他の工程、すなわち蓋閉めや計量、ラベルチェック、水すまし(複数工程を巡回して部品や食材などを供給する作業)などのうち、水すまし以外は自動化できるのではないかと考えて、取り組んでいく。惣菜にしても今はポテサラ、マカロニサラダなど練り物系だけだが、線状、棒状、粒状など様々な食材を扱えるようにし、カテゴリを限らず、すべてのカテゴリに対応できるようなフレキシブルなものになっていければいいと考えている。そして、従業員の、仕事に対する満足度を上げていきたいという。ロボットについても「現在はまだまだだが、今後、使い倒していく」とのことだった。
規模が小さい工場でも使えるロボットに
最後に日本惣菜協会の会長で、ユーザー企業でもあるヒライ代表取締役社長の平井浩一郎氏が登壇。「惣菜はきつい、つらい。なかなか人気がない職種になっており、工場の社員募集もいま深刻な状態。ワラをもすがるような思いで今回、経産省の力も借りた。非常に楽しみにしている。我々の業界も変わるかなという期待でいっぱい」と期待を示した。
そして「惣菜製造の市場規模は10兆円を超えている。だが一社あたりの規模は小さい。だからなかなか設備投資もできない。小さいところは作る量が少なく、ほとんど手作業に近い状態。ロボットもまだまだ改良が必要だが、可能性は大いに秘めている。小さい工場でも人手不足対策の一助となる実験台になるなら大いに結構だということで、いま一緒になって楽しく開発を行なっている。近い将来、必ず変わってくると思う。今後もご注目いただきたい」と語った。ロボットを使う以外に人手不足問題を解消する手段はないと考えており、やり切っていきたいとのことだった。
100点になるまで待たない
今後は、プロジェクトではロボットのレベルを上げつつ、中小企業の惣菜メーカーが購入しやすい価格、すなわち投資コストを導入後2~3年で回収できる程度まで下げていきたいという。たとえばアールティの「Foodly」単品での一台あたりの価格は800万円程度で、導入するにあたっては、これにシステムインテグレーションのコストが加わることになる。これを下げていくことも課題だが、アールティ中川氏は、「顧客からの声としては600万円程度にできればという声がある」と述べ、それを目指して量産を進めていきたいと語った。
Team cross FAの天野氏は「注文があればいつでも対応する」と語った。コネクテッドロボティクスの沢登氏は「さらに多品種に対応し、スピードと重量のばらつきを抑えたい。対応しながら徐々に売っていく。やれるところからやる。100点になるまで売らないということではない。我々の基準で合格で、80点でも買ってもらえるなら販売していく」と述べた。