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セコム、不審者を威嚇する警備ロボ「cocobo」 倒れた人や不審物を自動感知
2021年6月11日 09:10
セコムは6月10日、商業施設やオフィスビルなど屋内・屋外でAI・5Gなどの最先端技術を活用して警備業務を行なう新型セキュリティロボット「cocobo」を発表した。総合的な常駐警備の一環として展開する予定で、6月から試験運用を開始し、2021年内の発売を予定する。
屋内外の巡回警備が行なえるロボット「cocobo」は700×1,200×1,250mm(幅×奥行き×高さ)。重さは約160kg(バッテリー搭載時)。走行速度は時速6km。走行可能距離は約12km(3時間)。充電時間は3時間。段差は50mmまで対応可能。傾斜や悪路であっても、人が通れる場所であれば、ほぼ通過可能だとしている。
周囲の監視を行ないながら巡回ルートを自律走行し、不審物を自動検知して防災センターに通報。アタッチメントを使うことで多用途に用いることができる7自由度アームを使ったゴミ箱内部や自販機下の点検や、扉の施錠確認を行なうことができる。また不審者を発見した場合には音声やライトでの警告や煙を使った威嚇を行なえる。全方位カメラ、パンチルトズームカメラ、熱画像センサー、2DLiDAR、3DLiDAR、近接センサー、マイク、スピーカーのほか、ガスセンサーなども装備しており、商業施設やオフィスビルなどの安全確保を担う常駐警備員の「視覚・聴覚・臭覚・触覚」と「判断力」を備え、一部の能力は警備のプロをも上回るとしている。
建物の監視カメラ映像、エレベーターや電気錠などの設備情報、施設や地域情報などクラウド連携することで、平時・有事の安全確保から有用・快適情報の提供まで、常駐警備員と連携して幅広い業務の効率化と品質向上を実現する。
コンセプトは「公共空間との調和」「威厳と親しみやすさ」。デザインはセコムの協働プロジェクトブランド「SECOM DESIGN FACTORY」のもと、GROOVE Xの家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」をはじめとする多くの工業製品のコンセプト企画や開発を行うznug design(ツナグ・デザイン)の根津孝太氏が手がけた。名前「cocobo」にはcognitive(認知)、cooperation robot(協働ロボット)の二つの意味がかけられている。
ロボットを使った警備は以前よりも容易に
セコム常務執行役員で企画開発担当の上田理氏はロボットの開発背景について解説した。コロナ禍ではあるが、有人環境における警備ニーズは高まっている。現場では新しく複雑な警備ニーズが生まれているという。一方近年、ロボットの存在は社会に浸透しはじめており、認知が拡がり開発もしやすくなっている。またAIや5Gなど先端テクノロジーによる可能性も拡がっている。
セコムでは各種センサーとAI技術、クラウドを活用して立哨警備・受付を行なう「バーチャル警備システム」を2019年に発表している。「バーチャル警備システム」は既にセコム本社ビル1Fで活用されており、現在、量産化最終フェーズに入っている。今年秋には発売される予定だ。自律移動し、クラウドや設備を制御しながら動くcocoboもその延長上にあるロボットだと述べた。
ロボットによる警備と人による警備の融合
技術紹介はセコム執行役員 技術開発本部長の進藤健輔氏が行なった。セコムは、2002年に指示者追尾型ロボットのプロトタイプを発表。2005年には屋外巡回監視ロボット「セコムロボットX」を発表した。2015年には民間防犯用の自律型自動飛行監視ロボット「セコムドローン」も発表している。2018年には「セコムロボットX2」プロトタイプと実証実験を行ない、「セコムロボットX2」は2019年からは成田空港で運用されている。進藤氏は、セコムではロボットと人との融合を考えてこれまで開発を進めてきたと述べた。
cocoboはローカルサーバーやクラウドと連携して、エレベーターなど設備システムを使ってフロア間移動や屋内外の移動ができる。一つの監視卓から複数台の同時運用も可能だ。これによって効率よい点検が可能になる。また画像AIを使って、孤立した荷物の検知、倒れている人の検知、刃物などを検知することができる。検知したら監視卓に異常を通知して、人が対応する。進藤氏は「様々なセンサーと高解像度のカメラによって大きく進歩した警備ロボットだ」と語った。
「威圧しないが威厳があるデザイン」を模索
デザインコンセプトはznug design代表の根津孝太氏が解説した。根津氏は「以前、ロボットが珍しかった時代にはわかりやすい記号的なデザインが必要とされていたが、いまはロボットは身近になりつつあり、自然な存在感と、警備を行なっていることはちゃんとわかるというデザインが必要だった」と語った。そして、ワークショップを重ね、要件を整理し、みんながスケッチを行ない、ブラッシュアップして決定していったと過程を紹介。「環境に調和し、威圧はしないが、警備はしているという安心感を与えられる、一つの答えに行きつけたのではないか」と語った。
全体のシルエットは低重心で安定感があるものとした。活用される空間に合わせて自由にカスタマイズができる部分を持たせ、かつ、機能を中央に合理的にレイアウトすると同時に「芯」を感じさせた。なお、ロゴはやさしく包み込む様子をモチーフにしたとのこと。根津氏は「セコムの新しい星として愛される存在になってほしい」と語った。