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ヤフーとLINEが経営統合。“3つのスーパーアプリ”で'23年2兆円

Zホールディングス(ZHD)とLINEは、3月1日付けで経営を統合完了した。ZHDの中核企業のヤフーとLINEを中心に、「検索・ポータル」「広告」「メッセンジャー」を根幹領域と定めるとともに、「コマース」「ローカル・バーティカル」「Fintech」「社会」の4つを集中領域と定め事業を拡大。2023年度に売上高2兆円、営業利益2,250億円を目指す。

根幹領域と集中領域

友だちとの買い物体験「ソーシャルコマース」強化

新ZHDは、国内総利用者数3億超、自治体との連携案件3,000超、サービス数200超、国と地域は約230、従業員数23,000の巨大ITグループとなる。根幹領域の強みを活かしながら、集中領域へと事業範囲を広げていく。

コマース領域では、LINEを活用したソーシャルコマースを強化する。LINEで通知される友だちの誕生日をきっかけにLINEを通じてギフトを送る「LINEギフト」を展開。将来的にはYahoo! ショッピングと連携して多くの贈り物をできるようにする。また、LINEの特徴を活かし、友だちと共同で商品を買う「共同購入」やインフルエンサーらが商品を紹介する「ライブコマース」も展開する。

オンラインと実店舗を連携した「X(クロス)ショッピング」にも取り組む。オンラインで購入した商品を店舗で受け取ったり、店舗の商品をオンラインで予約するなど、オン/オフラインが融合したショッピング体験を目指す。さらに、ダイナミックプライシングによる「My Price構想」も検討してく。

ECソリューション「Smart Store Project」も2021年上半期から提供。中長期的には実店舗、自社EC、Yahoo!ショッピングなどのモール型ECなどを1つで管理・運営できる仕組みを構築する。2020年代前半に、国内Eコーマス取扱高ナンバーワンを目指す。

Smart Store Project

ローカル・バーティカルでは、Yahoo!ロコや、一休.comレストラン、LINE PLACEなどを連携し予約・送客を強化する。また、「出前館」とも連携し、将来的にはZHDグループが手掛けるサービスの配送網として出前館を活用していく計画。

広告においては、Yahoo! JAPAN、LINE、PayPayを連携させ、事業者向けにマーケティングソリューションを提供。Yahoo! JAPANやLINE上で広告配信し、特定の商品を購入した人に、改めてクーポンを届けるなど効率的なマーケティング施策を企業に提供。ユーザーも“ノイズが少ないお得情報”を得られるという。

コード決済はPayPayに集約。LINEウォレットからPayPay

Fintechは、ユーザーのアクションに応じてローンや投資商品、保険などの提案する「シナリオ金融」を拡充する。

PayPayとLINE Payの加盟店連携も開始し、4月から、300万カ所のPayPay加盟店のうち、ユーザースキャン(MPM)方式の店舗においてLINE Pay支払いが可能になる。

LINEウォレットからのPayPay支払いにも対応予定。さらに、2022年4月を目処にLINE Payの国内QR/バーコード決済をPayPayに統合すべく、協議を開始した。

なお、統合に向けて協議を開始したのは「QR・バーコード決済部分のみ」。その他のクレジットカード、NFC、送金、請求書払い等はLINE Payとして継続し、特に海外はLINE Payが大きなシェアを持つためLINE Payを強化していく。「LINE PayがPayPayに吸収されるわけではなく、アジア主要国での発展を目指していく。LINE Payがなくなるわけではない」(ZHD広報)。

金融はマルチパートナーで展開

なお、金融サービスにおいては、ヤフー系のジャパンネット銀行(4月からPayPay銀行)、LINE系の「LINE Bank(みずほ銀行と共同で2022年スタート予定)」など、重複する領域も有るが「マルチパートナーで展開する」(川邊健太郎Co-CEO)という。

両者で共通しているのは、「金融屋のネットサービスではなく、ネット屋の金融サービス。ネット屋の金融で先行している会社はあまりないと思っており、金融事業者と組んでPayPayの上とLINEウォレットの上で金融事業を提供していける。ユーザーを見ながらサービスを進めるが、“総リーチ”が重要。PayPay銀行だけにすると、LINEのユーザーが使わないかもしれない。LINE上の体験を重視したほうがいいかもしれない。その2つを進めれば日本の大半の人が使っているサービスになるかもしれない」と説明。ユーザーが求める体験に応じて、棲み分け、補完していくとした。

マイナポータル連携でヤフーやLINEで児童手当申請

社会では行政DX、防災、ヘルスケアなどで連携する。

行政DXでは、Yahoo! JAPANのサービスやLINE上で行政手続きの情報を拡充。さらに内閣府の「マイナポータル」と連携し、行政手続きのオンライン申請サービスを開始。児童手当や介護などの手続きから順次拡充を目指す。

防災では、平時における生活エリアの危険度チェックや災害警戒時のパーソナルタイムライン、避難案内、復旧・復興時の支援マッチングなどの情報提供を行なう。ヘルスケアは「LINEドクター」を起点に、オンライン診療や、服薬指導、薬の配送などの遠隔医療サービスを展開する。2021年中にオンラインの服薬指導を開始する。

AIを中心に各領域で5年間で5,000億円の投資を実施し、AIエンジニアを増員。ソフトバンクやNAVERのネットワークやノウハウを生かして、海外展開を目指す。ヤフーのブランドは、米Yahooの親会社であるベライゾンとの契約上、利用できないため、海外展開ではLINEのブランドを使っていく方針。

3つのスーパーアプリ

経営統合にあわせて、代表取締役Co-CEO(共同最高経営責任者)を2名体制とする。ZHD CEOの川邊健太郎氏は代表取締役社長Co-CEOに、LINE代表取締役CEOの出澤剛氏も代表取締役Co-CEOにそれぞれ就任する。

川邊健太郎Co-CEO(左)と出澤剛Co-CEO(右)

両者で重複する領域もあるが、今後、慎ジュンホGCPO(Group Chief Product Officer)を中心とした「プロダクト委員会」で議論し、統廃合について決定していく。銀行など金融分野についてはマルチパートナーで展開。また、ヤフーニュースとLINEニュースの統合についても、「ユーザー属性が違う」(川邉Co-CEO)ため統合しない方針。

採用を皮切りに、ヤフーとLINEの人事制度もある程度共通化していく。今後新たに手掛けるサービスについては、「2つのブランドから同じようなサービスが始まることはない(川邉Co-CEO)とした。

新生ZHDの2023年度の売上目標2兆円に対し、前年度実績では6,000億円以上の開きがあるが、伸ばすジャンルとしては、広告・販促やコマース、決済/Fintechなどを重視。「販促はブルーオーシャン。ここは大きく伸ばしていく。また、コマースもLINEの強みを生かして、先行2社(Amazon、楽天)に近づいていく。ロイヤリティプログラムも発達させていく」(川邉Co-CEO)とした。

また、LINE、Yahoo! JAPAN、PayPayなどを「スーパーアプリ」として強化していく。LINEでは「LIFE on LINE」としてスーパーアプリ的な構想を明かしていたが、新しいZHDでもその考えを継承し、「メインの戦略」(出澤Co-CEO)とする。

川邉Co-CEOは、「スーパーアプリを定義すると、生活に身近な異なるサービスが1つのアプリで使える。新ZHDには、LINE、PayPay、Yahoo JAPANアプリという3つのスーパーアプリ候補があり、それぞれ発展可能性がある。LINEは人と人のコミュニケーション起点で、アカウントが強い。お店との関係も含めた生活支援ができる。かつては、Yahoo! JAPANアプリしかなかったので、いろいろ詰め込んで使い勝手を残っていたが、スーパーアプリに3つもチャレンジできる会社は世界中見ても、ZHDだけ。それぞれのアプリを無理のない形で強化していきたい。新ZHDをユーザーに取って意味ある統合にしていく。新サービスに期待してほしい」と語った。