ニュース
音声メディア「Voicy」、再生回数に基づく収益化プログラム開始へ
2020年12月4日 12:15
音声メディア「Voicy」を運営する株式会社Voicyは3日、事業戦略オンライン発表会を開催。新たな取り組みとして、再生回数に応じて配信者へ収益を還元するプログラムを2021年に開始すると発表した。プログラムの詳細は未定だが、Voicy 代表取締役CEOの緒方憲太郎氏によれば、10分につき1円程度の還元を目指すという。
「意味のある放送」に収益を還元。10分1円の還元を目指す
Voicyは、著名人・芸能人やさまざまな業界で活躍する専門家がパーソナリティとして音声コンテンツ番組を配信するサービス。パーソナリティは審査制で、審査通過率1%という狭き門の中、現在は500以上のパーソナリティによる番組を配信。企業もVoicyでの音声配信に参入しており、50以上の企業チャンネルがオリジナル番組を配信している。
これまでも一部のパーソナリティ向けに、月額課金のサブスクリプションやバックナンバー課金といった収益システムを提供。また、パーソナリティが自分の声で企業のメッセージを番組内で紹介する企業スポンサーという仕組みも導入しており、タケダやGreeen、エン・ジャパンなど多数の企業がスポンサーとして参加している。
2021年内に提供を予定する収益化プログラムは、現在提供しているサブスクリプション課金とのハイブリッドで提供する予定。単なる再生回数やリスナー数だけではなく、最後まで聴取されたかや何度も聞いている人がいるかなどの情報を分析、「音声でより意味のある放送をしたかどうか」というアルゴリズムに基づいて決まるという。
具体的な還元金額は未定だが、緒方氏は「YouTubeの収益と同じかそれより高くなるくらいを目指す。10分流れたら1円くらいが入るといいと思っている」とコメント。「現在Voicyのトップが1日5,000時間再生されており、10分1円でもけっこうな金額になる。その金額がさらに上がっていくようになればいい」と付け加えた。
音声メディアの発展と普及の促進に向けて、自社が商標登録した「ボイスメディア」のオープン化も発表。「ボイスメディアは株式会社Voicyの登録商標です」という一文を記載した上で、「ボイスメディア」の信用を毀損する態様、および商標権者の名誉・声望を害する態様では使用しないことを条件として、「ボイスメディア」という単語を自由に利用できるとした。
音声メディアが急成長。鍵は「音声再生デバイスの普及」
発表会では、代表取締役CEOの緒方氏が音声市場の現状と同社の事業について説明を行なった。
緒方氏は、アメリカでは2020年にアメリカ総人口の58%にあたる1億9,200万人が音声コンテンツを毎月聴くとの予測データを紹介。Voicyでも毎週音声コンテンツを聴く聴取者数が2019年から2020年にかけて4倍に伸びており「日本でも2020年になって音声の波が来た」という。
音声コンテンツ市場の成長要因として緒方氏は、スマートスピーカーやワイヤレスイヤフォンといったデバイスの普及にあると指摘。Voicyでもスマートスピーカー向け配信を行なっているが、再生回数が2020年初頭に比べて2倍に伸びているとの状況を踏まえ、「デバイスが伸びる産業はその後コンテンツや市場が伸びる」と、音声コンテンツ市場への期待を示した。
また、音声コンテンツは可処分時間が多いという特徴についても説明。「テキストや動画に比べて、音声は寝ているとき以外がほぼ可処分時間になる」とし「子育てしている家庭や就寝前、スポーツジムや運動中など、頭はそこまで使わないけれど情報をインプットしたいというニーズがあるということが、Voicyを提供してきてわかった」と語った。
「配信者が最も活躍できる場所」を目指す
12月1日には大規模リニューアルを実施。リスナー増加と高まる音声需要に向けたもので、グローバルナビをリスナーに合わせて3つに分類した。
緒方氏によれば、今まではお気に入りのコンテンツを習慣的に聴くというリスナーが多かったが、最近では音声コンテンツをたくさん聴きたいという要望が高まっているという。こうしたユーザーの変化に合わせて、ホーム画面に急上昇やおすすめ放送が一覧できる機能を搭載、新たなコンテンツに出会える導線を用意した。
さらに、従来からのニーズであるお気に入りのコンテンツを聴きたいというリスナーに向けたフォロータイムライン機能、気になるコンテンツはあるがすぐに聴けない、後で聴きたいというリスナー向けの「あとで聴く」機能で、リスナーのニーズを網羅したという。
Voicyの大規模リニューアルにより、パーソナリティの発信をよりやりやすく、リスナーと出会える最高の場所としてのプラットフォームを構築。このプラットフォームをベースに、従来ではラジオに多く見られた企業スポンサー、メルマガやコミュニティの月額課金に加えて、YouTubeなどの動画配信で提供されている再生数比例のプログラムを導入し、配信者が最も活躍できる場所としてVoicyを展開していく構えだ。
ビジネスモデルについては、サブスクリプションからは売上の15%と決済手数料、月額スポンサーからは比率非公開ながら企業との交渉も含めた手数料収入を得ているという。
導入予定の収益化プログラムについては「良質なパーソナリティがVoicyに入ってくることが重要だが、それ以上にVoicyに関わったパーソナリティからヒーローが出てくることを期待している。YouTubeでいうヒカキンみたいな人が出てくるのがVoicyだと思っている」と期待を寄せた。事業の黒字化については、今後2年でスマートスピーカーやイヤフォンで音声メディアを楽しむ文化も進むことを踏まえ、「黒字化は2年後と考えている」とした。