ニュース
「モスらしい接客」を無人レジが作り出す。関内店で27日まで試せるぞ
2019年2月15日 21:14
モスバーガー関内店で、2月15日から27日までの期間、AIセルフレジの実証実験が実施されている。このレジを取材する機会を得たので、さっそくレポートしよう。なおAIセルフレジの営業は、19日までは13時から15時、20日以降は11時から15時の時間帯に限定されている。
AIレジは、店内の有人レジ前に1台配置。タッチパネルによる操作か、音声による操作か、また店内か持ち帰りかをタッチパネルで選ぶ。この操作は音声操作には対応していない。
これを選んだ後にメニューが表示されるのだが、レジに設置されたカメラがとらえた映像から、性別や年代等を読み取り、その情報によって表示する順番が異なる。また、メニューの下部に表示される広告も同様に、人によって異なる内容が表示される。
また、表示された中から音声で選べるだけではなく、どんなものを食べたいかを声で伝えると、おすすめのメニューを提示してくれる機能もある。例えば「野菜系」と声をかければ、モス野菜バーガーなど関連したメニューが表示される。
その後の一連の流れとしては、「モス野菜バーガー」→「セットで」→「オニポテセット」→「ブレンド」の順でオーダーしていけば、モス野菜バーガーセットの注文が完了する。また画面の右側には、追加オーダーのおすすめを表示。現場ではオニポテセットを頼んだにも関わらずオニオンフライやポテトSが表示された。こういった部分の精度は今後の課題とする。
ちなみにわざと曖昧なイメージで「モスフィースバーガー」と声を掛けてみたところ、「モスチーズバーガー」が表示された。限度はあるだろうが、必ずしも滑舌良くハッキリと発声しなくても認識してくれるようだ。また動画にもあるとおり、「ブレンド」のみでブレンドコーヒーと認識される。
なお単品の組み合わせで結果的にセットと同じ内容になっても、自動でセット価格にはならない点も今後の課題。現状では、ハンバーガーを注文した時点でセットを勧める導線を表示させることでカバーするとしている。
ハンバーガーメニュー以外を表示したいときには、画面上部のタブをタップする必要があるが、画面に表示されていなくても、例えば「ブレンドコーヒー」と言えば注文が成立する。
決済手段は現金、クレジットカード、交通系ICカードなどの電子マネーに対応。QRコード/バーコード決済には対応していない。
注文し、精算した後は別途番号札を受け取り、席で待っていれば店員が持ってきてくれる。セルフレジから番号札を出すところまで行なうなど、注文後の流れについては今後検討していく。
人手不足対応だけではない、AIセルフレジ3つの狙い
今回の取材では、モスバーガーフードサービス 経営サポート部 IT戦略グループリーダーの森永龍文氏の話を聞くことができた。
AIセルフレジ実証実験の主な狙いは3つ。1つ目はAIを使った接客のモデル化、2つ目はモデル化したものをどこまで実現できるかの検証、3つ目はセルフレジの需要の有無の検証。
モデル化とはどういうことかというと、企業としてスタッフに求めている「モスらしい接客」という概念的なイメージを数値化すること。例えばベストな声のトーンなどをAIで分析している。
具体的には、ベテランと新人の接客を映像で撮影し、笑顔の使い方や声のトーンなどにどんな差異があるのかをAIで分析。これにより、注文から見送りまで、マニュアル的な接客ではなく、客が何を望んでいるかを判断して手を差し伸べる、一人一人に寄り添った接客(これが「モスらしい接客」)を情報化していく。なおモスバーガーの接客には、マニュアルが他よりも少ないことが特徴なのだという。
そしてこれらの中から、技術的にできそうなものをAIセルフレジで再現。これが2つ目の狙いとなる。有人レジは、券売機にはない丁寧であたたかい接客ができる。これをAIセルフレジでも感じられる「あたたかいAI」を目標とする。
もちろん、人手不足をカバーするためのセルフレジという側面はあるものの、接客のモデル化、これをモスフードサービスでは「おもてなしのモデル化」とし、今回の実証実験を「おもてなし」の提供を目指す取り組みとしている。
また、AIセルフレジにはカメラがセットされている。これは、来店客の性別などを判断するために用いられるほか、表情の変化などをとらえて、客がどこで戸惑ったかといった情報を蓄積。これらの情報を様々な方向で利用していくという。
これまでは、客の戸惑いなどの情報は、スタッフの気付き、情報共有が必要で、共有される情報は限られていた。AIセルフレジではより多くの、かつ正確な情報が共有されるメリットがあるとする。
モスバーガーでは2018年11月から、無人レジで会計をするセミセルフレジの導入も進めており、現在は計画も含めて約20店舗となっている。こちらもオペレーション上の効果は出ており、メリットが確認されている。
今後は、すべての店舗にAIセルフレジ、あるいはセミセルフレジを導入していくというものではなく、例えば都市型と郊外型で異なるという。都市部でスピードが求められる場合はセルフレジの導入は効率的だが、郊外ではスタッフと客が知り合いであったり、スタッフとの交流も目的の1つになることがあり、有人レジを続けていく必要がある。
立地や客層のほか、スタッフが少ない一定時間だけセルフレジを使用するなど、店舗ではなく時間帯による使い分けも選択肢の1つとして考えているという。
今後は、ノイズが多い状況や、2人組の時にどう切り分けて注文できるようにするかなど、いろいろな使われ方への対応や、現在は日本語のみの対応言語を多言語化するなどの対応を検討していく。