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Jリーグ観戦をキャッシュレス化。パナソニックスタジアムで電子チケットなど大規模実験
2018年11月26日 11:53
パナソニックとぴあは11月23日、大日本印刷、三井住友カード、ガンバ大阪と共同で、電子チケットや国際ブランドの非接触ICプリペイド決済サービスなどを活用した「スタジアムサービスプラットフォーム実証実験」を、ガンバ大阪のホームスタジアム「パナソニックスタジアム吹田」で実施した。
スタジアムサービスプラットフォーム実証実験は、パナソニックとぴあが開始した、スタジアムやアリーナにおける来場者の体験価値向上を目指した取り組みだ。チケッティングの電子化を核として様々なサービスとの連携によって、施設での魅力ある体験の創造や提案、ビジネスパートナーとの協力による施設周辺、地域経済への貢献などを踏まえた、総合的なスタジアム・アリーナサービスの開発を目指すものと位置付けられている。そして、パナソニックスタジアム吹田を核としたエリア一帯のICTを駆使した街づくりを課題としている中で実施したものだという。
パナソニック執行役員 東京オリンピック・パラリンピック推進本部 本部長の井戸正弘氏は、「チケットを買っていただいて、入ってしまえばそれで終わりという日本のスタジアムビジネスを、もっとお客様へのサービスを向上させてスタジアムを運営するという形にしていきたい」と述べ、スタジアム周辺の駅やショッピングモールなどとも連携しつつ、新しいITツールを活用しながらスポーツイベントの魅力を高めることで、スタジアムの収益を高め、その利益をスポーツに還元するという流れを作っていきたいという。
3種類の電子チケットで開催
今回の実証実験では、11月23日に行なわれた、明治安田生命J1リーグ第33節「ガンバ大阪 vs V・ファーレン長崎」の試合において、発行済みのICカード型年間チケットや、スマートフォンの画面に表示して利用するQRコードチケット以外のチケット15,000枚をリストバンド型の電子チケットとして発行。これにより、本試合は全3種類の電子チケットを利用しての開催となった。
今回利用されたリストバンド型電子チケットは、販売時点から提供されていたわけではない。スタジアム外にリストバンド型電子チケットの交換所が用意され、通常どおり販売された紙チケットをリストバンド型電子チケットに交換し、腕に装着したうえで入場するという形が取られた。今回は初の試みということでそういう形になったそうだが、本格導入までに購入方法なども模索していきたいとのことだ。
先ほど紹介したように、試合で利用された電子チケットは全3種類。スタジアムへの入場は、これら電子チケットを入場口に設置されている認証端末で認証することで入場が許可される、という流れとなった。このうち、今回配布されたリストバンド型電子チケットについては、NFC Type Aに対応した近距離無線通信機能を内蔵しており、内部に格納されているチケット情報を非接触で読み取ることで認証が行なわれる。
認証端末には、小型かつケーブルレスで利用できるため運用が容易ということで、11月20日に発表されたパナソニックのモバイル端末「タフブック FZ-N1」最新モデルを利用。タフブックのディスプレイ面にある非接触ICカード読み取り面にリストバンドをタッチすることで格納されている電子チケット情報が読み取られ、入場が承認される。もちろん、ICカード型年間チケットの読み取りや、背面のカメラを利用することで、スマートフォンの画面に表示したQRコードチケットの読み取りにも対応しているため、いずれのチケットもこの端末のみで認証が可能となっていた。
実際の、リストバンド型電子チケットを利用した入場では、リストバンドを認証端末にタッチするのに苦労する姿も見られたが、全体的には大きな混乱なくスムーズに入場できていた。また、うまく認証端末にタッチできれば、認証速度はICカードやQRコードを利用する場合と遜色のないスピードで行なえていた。
Mastercard Contactless対応のタッチ決済も可能
今回利用されたリストバンド型電子チケットは、三井住友カードが発行するプリペイドカード「Jリーグプリペイドカード」と呼ばれるものだ。親カードとなるJリーグプリペイドカードと、リストバンド型電子チケットとして利用する親カードに紐付けられた小型のコンパニオンカード、コンパニオンカードを取り付けるリストバンドで構成されている。今回の実証実験では、観客が交換所で受け取ったコンパニオンカードをカード台紙から切り離してリストバンドに取り付け、腕に装着して利用する形となっていた。
入場管理のシステムとしては、Jリーグ全試合対象観戦記録システム「ワンタッチパス」を採用。リストバンド型電子チケットが非接触ICカード型ワンタッチパスとして動作する。なお、今回の実証実験で利用されるリストバンド型電子チケットは近距離無線通信機能としてNFC Type-Aを採用しているが、NFC Type A対応の非接触ICカード型ワンタッチパスはこれが初だという。合わせて、親カードのJリーグプリペイドカードにはFeliCaベースのワンタッチパス機能が搭載されており、今回の実証実験ではどちらのカードを利用しても入場できるようになっていた。
さらに、Jリーグプリペイドカードは、その名の通りプリペイドカードとして決済にも利用できる。Jリーグプリペイドカードの親カードにはFeliCaベースの電子マネー「iD」とMastercardの磁気ストライプ方式プリペイドカード機能が搭載されており、あらかじめチャージした金額を利用してiDによるタッチ決済、または磁気ストライプ方式のプリペイドカードとして決済に利用できる。加えて、コンパニオンカードとなるリストバンド型電子チケットにはMastercard Contactlessブランドの非接触決済機能を搭載し、こちらを利用したタッチ決済も可能となっている。しかも、チャージした金額は全ての決済手段で共通に利用できる仕組みを採用。決済手段を意識せずに同じチャージ残高が利用できる点も大きな特徴となっている。
金額のチャージは、専用ウェブサイトからのオンラインチャージに加えて、親カードを利用することでセブン銀行のATMでもチャージが可能。今回の実証実験では、スタジアム入り口付近に移動型のセブン銀行ATMが臨時で設置され、そちらでチャージが行なえた。
スタジアムの売店やグッズショップでは、今回の実証実験に合わせて全店舗でMastercard Contactlessによる決済の環境が整えられ、リストバンド型電子チケットをタッチすることで食べ物やグッズなどの購入が行なえた。当日は、チャージ金額によって500円または1,000円分のチャージがプレゼントされるというキャンペーンが実施されたこともあり、実際に金額をチャージし、リストバンド型電子チケットで支払いを行なう観戦客の姿も多く見られた。
この他にも、リストバンド型電子チケットをタッチすることで自分の座席に近い入場口が表示されるデジタルサイネージを用意したり、ガンバ大阪のグッズが当たるキャッシュレス大型ガチャが用意されるなど、電子チケットやキャッシュレスの楽しさ体験できるアクティビティも用意された。
今回の実証実験で利用された電子チケットの仕組みは、2020年の実用化を目指しているという。チケット販売を担当するぴあとも連携しつつ、2020年までにJリーグ全57チームへの導入を実現するとともに、サッカー以外のスポーツ、エンターテインメントビジネスなどに導入していきたいとのことだ。